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55.事後処理(4)

「しこたま怒られてたよ。ポートボールを楽しむ時間を潰してまで、先生でもない人に体育を任せちゃったんだから。それ相応の責任は取らないとね」 「せきにん?」 「そう。早い話がクビって事だな。先生に就く免許は残すけど、ウチの学校で働くのは許しません! って処分になったんだよ」  まだ十歳のミオでも、「クビ」という言葉が、どういう意味を持つのかは理解しているらしい。あまりの衝撃に、絶句したのが何よりの証拠だ。 「ミオ。昨日の今日だし、リビングでゆっくりしてきなよ。まだ疲れが残ってるなら、寝直してきてもいいからね」 「うん。ありがと」  動揺が隠しきれないミオの様子を見るに、洗い物を続けながら話を続けても、たぶん頭に入ってこないだろう。現時点で必要なのが心と体のケアである以上、とにかく休ませるのが最善だと思い、お手伝いを早めに切り上げさせたのである。  自分にとって悪いニュースを聞いたからか、ソファーへ向かうミオの足取りが重い。  学級閉鎖になった理由は、クラスメートの大半が治療中であるからなのだが、担任教諭の解雇も当然関係している。解雇翌日から、準備期間なしで教鞭(きょうべん)をとれる先生はまずいない。なぜなら、一夜漬けで引き継ぎができる仕事じゃないからだ。それは、会社員である俺たちも同じ事。 「学校のニュースやってる?」 「んーん、まだだよ。今は『波止釣り天国』を見てたの」 「へぇ、この時間にねぇ。今ぐらいなら、子供も大人も家にいないんじゃないか?」 「そだね。夏休みの間にしか見れなかったから、今日みたいな日に見てもいいのかな? とは思ったけど……」 「いいんじゃないか? 学校がお休みになったのはミオのせいじゃないんだから。ほら、おいで。二人で一緒に見よ」 「うん!」  ミオはいつものように、深く腰掛けた俺の上に座り、優しく抱っこされるやいなや、胸板や両腕に顔をこすりつけて甘え始める。  幸福感が満ち溢れた子猫ちゃんは、こんな感じで、しばしばテレビを見ていた事すら忘れる。それだけ、俺という彼氏に抱っこされるのが好きなんだと思うのだが、お相手が他の男ならどうなるんだろう……あれ? 「ミオ。何かちょっと、生地の薄いショートパンツ穿いてる?」 「え? 穿いてないよ。今はショーツだけなの」  何だって!? つまりミオは、俺の太ももの上で、の状態にて座っているというのか。  昨日は俺のシャツを寝間着にしていたし、その丈で膝上くらいまで隠れていたから、同じ寝間着として、何らかのショートパンツを穿いていると思っていたのに。 「あ、暑かったのかい? 昨日の夜は……」 「んー? それもあるけど、お兄ちゃんのシャツって大っきいから、穿かなくてもいいかなーって思ったんだー」  大胆な子だなぁ。そこまで気を許してくれているのは嬉しいが、こっちは理性で抑えるのが大変だよ。

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