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55.事後処理(5)
「お兄ちゃんにクイズー!」
「お、おぉ? クイズ?」
「そ。じゃあ問題ね。ボクは今日、何色のショーツを穿いてるでしょうか?」
「え。色を当てるの? 形状とかじゃなくて?」
「色だよー。ボクが持ってるショーツってほとんど同じでしょ? Tバックとか、紐 で結ぶショーツは持ってないもん」
確かにミオの言う通りだ。まだ十歳というショタっ娘ちゃんが紐パンやら、Tバックのショーツを穿いてちゃマズイよな。想像するだけでのぼせ上がって、顔が真っ赤になるほど熱を持ちそうだ。
現在、俺の太ももの上に抱っこされたミオは、まだ何色か分からないショーツと、同級生の子らが「学級一の美脚」と評する生足のままで座っている。
そりゃあうちのミオは、限りなく女の子に近いショタっ娘ちゃんだから、普通の男子とは比べ物にならないさ。でも学級一って言うからには、女子生徒のそれをも凌 ぐという事になるんじゃないのか?
いや、いかん。今はミオが出題したクイズに答える時間なんだ。妄想を膨らませすぎて、道を踏み外したらシャレにならない。
「うーん。オーソドックスに選ぶなら白なんだろうけど、ミオの髪の毛に合わせた可能性も考えられるし。なかなか難しいクイズだな」
まだ実物は拝んでいないから、あくまで予想として白が有力だと考えた。保持しているショーツの色ごとに枚数が異なるなら、一番多く持っている白を穿く確率が高いのではないか?
「んん? オードソックス?」
「いやいや。それじゃ靴下 を当てるクイズになっちゃうじゃん。オーソドックスってのは、簡単に言うと『定番』とか、『正統派』みたいな意味で使う英語さ」
「そうなんだ。じゃあ、ボクのショーツもおーそっくすってこと?」
「……まぁそうだな」
先程のように、ミオが横文字を間違って聞き返すのは仕方ない。ローマ字の読み書きはできるものの、人生で初めて耳にした英単語やカタカナを間違って覚えるのは、ごく自然なことだ。
現代の日本人は、日常会話の中で他国の言語や和製英語も交えて喋っているんだから、器用な生き物だよなぁ。
「で、その定番に従って当てにいくなら、今日のショーツは純白で、赤いリボン付きかな? って考えたんだ」
「むー? ジュンパク? 真っ白ってこと?」
「そう、その純白。ところで、正解はどうやって教えるの?」
「お兄ちゃんに見せて教えるー!」
ああ、何たる幸運……ではない。ミオは自分のクイズに正解しようがしまいが、「百聞は一見にしかず」という事で、シャツをまくって答えを見せてくれるつもりらしい。
それを踏まえて考えると、「ミオのショーツ当てクイズ」に挑む俺には、デメリットってものが全く無い。むしろ、俺だけに披露される正解発表は「幸運」ではなく、ミオの彼氏だけが享受 できる「特権」なのである。
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