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55.事後処理(6)

「んー、惜しいかも。リボンの色は当たったけど、ショーツは真っ白じゃないよ」 「マジで? でも、リボンの色が当たったのなら、正解は自ずと絞られてくるな」  そう言っている間に、ミオは正解発表に備えて姿勢を反転させ、こちらを向き、俺の胸板に抱きついてきた。  学級一と名高い〝おみあし〟は俺の太ももを挟むような形で、膝立てで開脚している。ソファーが柔らかいからこそできる芸当なのだが、俺の太ももに全体重を預けてしまったら重いはず! という気遣いで、立てた膝にウェイトを分散させ、負担を減らしてくれているのだ。  もっとも、ミオの体重は三十キロちょいしかないので、そこまでしなくても平気ではある。  さりながら、ミオがこの姿勢であれば、ごく近い距離でショーツのお披露目ができる。そう考えると、ミオが選んだこの甘え方は極めて理にかなった……って、いかんいかん。また本題から逸れるところだった。 「お兄ちゃん、赤いリボンだけで分かるんだ?」 「え? ま、まぁね。ほら、いつも洗濯物を干す時に見るじゃん? だから覚えちゃったっていうか。ははは」 「ふーん。じゃ、三つのうちのどれかだね」  なぬ? もう三択問題に絞られたのか。思わぬ大ヒントが転げ落ちてきたな。  かような発言を聞くと、ミオがごく自然にヒントを流したような印象を受けるかもだが、いつもの天然が顔を見せただけ、というセンが濃厚だろう。俺は、そんなお茶目なところが、可愛らしく思えて好きなんだけど。 「リボンが赤なら、布地が緑色ってセンはないような気がするんだよな。暗色のショーツは見た事ないし……」  俺の胸板に横顔を預けたミオは、彼氏の推察を聞きながら、うんうんと頷いている。俺の口から正解を聞くまでは、こんな感じで、考える時間を無限に与えてくれるつもりなのかも知れない。  だとしたら、ミオが穿いているショーツの色当ては、世界で一番、解答者に優しいクイズだよな。ご褒美もあるし。  もっとも、その甘美なクイズの解答者になれる権利は、世界広しと言えども、ミオの恋人である俺一人だけにしか与えられない。これが特権の特権たる理由なのだ。 「うーむ。二択だな。淡いピンクの(しま)パンなら、赤いリボンもいいアクセ……じゃない。縞模様の中でもより強い印象を残しそうだし」 「なるほどー。お兄ちゃん、色のお話に詳しいんだね!」 「いやいや、あくまで俺個人としての意見だよ。って事で、クイズの答えはピンクの縞パン。当たってるかな?」  朝っぱらからこうして、ショタっ娘ちゃんが穿くショーツの色当てをしている一方、佐藤は俺の仕事と並行して、自らが取ってきた、大口契約の書類もまとめているんだろうな。  すまない佐藤、これは権藤課長より賜りし休暇なんだ。今度、お前の好物である菓子パン、『極上黒糖コロネ』を山ほど買って来てやるから、今日一日はイチャイチャさせてくれ。

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