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55.事後処理(10)

「ありがとな、ミオ」  ミオの腰に手を回して抱き寄せ、特徴的な毛色の頭をナデナデすると、甘えんぼうモードのスイッチが即座に入った。こういう時に聞かせてくれる〝猫なで声〟が、またキュートで色っぽい。 「お兄ちゃんにいっぱいナデナデしてもらえて、幸せ……」 「めんこいなぁ。ミオは頭を撫でてもらうのが一番好きかい?」 「うん! 大好きだよ。四年前から、ずっとずーっと!」 「そ、そんなに?」  ちょっと驚いた俺の問いに対し、ミオは大きく頷く。決して疑うわけではないのだけれど、初対面の俺に頭を撫でられた「あの時」から、ずっと恋心を抱いてくれていたとは。  人の金を湯水のごとく使い、なお平然としていたあの女の機嫌を伺いながら、繋ぎ目を維持している場合じゃなかったんだな。  これは佐藤から聞いた話なんだが、彼氏に頭を撫でられた彼女はキュンキュンして、より一層、彼氏を愛しく感じるんだそうだ。それが事実なら、今のミオも同じ状態なのかも知れない。  ミオは男の子だという自認こそあるものの、「お兄ちゃんのお嫁さんになるー!」と言って(はばか)らない以上、やはり乙女チックな一面もあるんだろう。今更な話だが。 「四年前からかぁ。だいぶ待たせちゃったね」 「んーん、いいの。今こうして、お兄ちゃんと一緒にいられるんだもん。ボク、すっごく幸せだよ」  はぁ、たまらん。逆にこっちがキュンキュンさせられてしまった。俺みたいな冴えない男に、こんな嬉しい愛の言葉をかけてくれる女性になんて、一度も出逢わなかったもんな。  それだけ、俺自身の自分磨きが足りていなかったって事なんだろうけど、今年に限っては、ミオを始めとしたショタっ娘ちゃんたちから好意を寄せられている。  これこそが、誰しもが人生に三度訪れるという「モテ期」というやつなのではないだろうか。  ……ところで。  最高の彼女が隣で甘えているさなか、こんな事を考えるのも何なんだが、ちょっと前に出した、双子のショタっ娘ちゃんたちへの手紙の返事がなかなか来ないな。  住所と名前と電話番号を添えて送った手紙だから、何らかの形で連絡が来るものだと思っていただけに、ちょっとばかり不安ではある。 「ねぇお兄ちゃん」 「ん? 何だい?」 「ボクたちのお手紙、レニィくんとユニィくんに届いてるのかなぁ」  どうやらミオも、俺の腕に抱きついて甘えながら、その脳裏には同じ事が思い浮かんでいたらしい。  そりゃあ、今は電話もあるし、アプリを使った通信手段も数多く選べるだけに、届いたその日に連絡は取れるはずなんだ。理屈では。  でない現状を鑑みるに、手紙の郵送中に紛失などの事故があったか、あるいはドキドキしまくって、連絡をためらっているとか?  あのリゾートホテルで出逢った日。双子のお兄ちゃんであるレニィくんの、俺を見る眼差しが恋する乙女そのものだったからなぁ。  それを考慮に入れると、うちのかわいい子猫ちゃんを基準に、積極性の比較をしちゃいかんってのは確かにある。

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