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56.お手紙着いた!(1)

 俺とミオ宛に届いた簡易書留の封を開けると、かわいい動物のイラストが描かれた便箋(びんせん)が一枚出てきた。ひと回り小さく、わずかな厚みを持つ封筒も一通ある。こちらは、たぶん写真入れだろう。 「あ! お兄ちゃん。このお手紙、もしかして……」 「うん、間違いないな。あの双子の男の子たちが送ってくれた手紙だよ」 「良かったぁ。ずっと気になってたけど、ちゃんと届いてたんだねー」  手紙の送り主は、ミオと二人で遊びに行ったリゾートホテルの宿泊二日目に出会った双子のショタっ娘、如月レニィ君と弟のユニィ君だった。  別れの際、レニィ君が自分たちの連絡先を渡してくれたので、せっかくの機会だからと思い、ミオと一緒に手紙を書いて送ったのだ。  で、その手紙に返信するべく、あの子たちは俺たちが書き記した連絡先を頼りに、簡易書留として差し出してくれたのだろう。  書留郵便の利点は、いつ届いたのかの追跡が可能であること。宅配ボックスを除くとしても、基本的には受領証に押印、あるいはサインの筆記がなされた上で手渡すのが大原則の郵便物であるため、行方不明になるリスクは普通郵便より格段に低い。  宅配ボックスの無い住居において、家人が不在の折には、不在票の案内に従い、再配達の日時を指定できる。その不在票は、かつて専門用語で「マルツ」等と呼ばれていたのだが、今も同じなのかは分からない。  手厚いサービスと補償が受けられるがゆえに、普通郵便の料金に上乗せして送るから割高ではあるのだが、あの子たちなりに慎重を期して導き出した決断だったのだ。たぶん。 「わー、レニユニ君たちって、こんな字を書くんだね。ちょっと角ばったみたいな文字で、お返事がいっぱい書いてあるよ」 「便箋の上半分がレニィ君、下半分がユニィ君からのお便りか。なるほど。双子だから筆跡も似るのかねぇ」  ミオが開いた便箋を覗き込み、双子のショタっ娘ちゃんが書いた文字を見比べて続けていると、ほんの些細な違いはあるような気がする。というレベルだから、署名なしで見分ける自信はないなぁ。 「何て書いてあるんだい?」 「えっとね。お兄ちゃんとボクが出したお手紙をね、受け取れたのが一週間くらい前だって」 「何だって? 遅配にしては時間かかりすぎじゃないか?」 「んーと。これ、何て読むのかなぁ。〝家〟って漢字と、マサ? ……イエマサフ?」  イエマサフと聞いて、徳川家の将軍か何か? と思ったが、どうやらミオは、イエマサに当てられた漢字を訓読みしているようだ。 「それは家政婦(かせいふ)って読むんだよ。家事のお手伝いをして、お給料を貰うおばさんだね。まぁおばさんじゃなくても家政婦なんだけど」 「あ、思い出したよー! レニユニ君たちのお家はすっごく大きいから、いつもカセイフさんがいるって」  リゾートホテルで会った時は、考古学者であるご両親が、仕事で世界中を飛び回っていてほとんど家にいないから、家政婦を雇うしかないって事情も含まれていた。  ただ、そのご両親は心を入れ替え、愛する我が子たちに寄り添うと誓ったので、以前よりも家にいる日数は増えたはずだ。にもかかわらず、ここで家政婦の名前が出て来るのは、果たしてどういった理由なのだろうか?

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