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56.お手紙着いた!(6)
「――ふむふむ。こうして文通を続けながら、スケジュールが合えばまた会いたい、と」
「みたいだよ。レニィ君、お兄ちゃんのことが大好きだもんねー」
「か、からかうんじゃないよ。ミオだって、彼氏を他の子に取られちゃ嫌だろ?」
「うん。やだ!」
ハッキリと言い切ったミオは、再び手紙をほっぽらかし、俺の腕に抱きついてくる。甘えるためと言うよりは、物理的に俺を渡すまいとして守っている、そんなメッセージ性を持った抱きつき方だ。
「でも、レニユニ君たちって今は本州の最西端に住んでるんだろ? そこから、ギリギリ関東のウチまで遊びに来るのは、大変じゃないのかなぁ」
「ねぇー、思い出してよお兄ちゃん。レニユニ君たちは、ギリギリ関東のリゾートホテルに遊びに来てたでしょ? そこに楽しいことが待ってるなら、遠いのなんて気にならないんだよ」
「な、なるほどな。確かにその通りだね」
ミオのおかげで、ようやく真理にたどり着けたような気がする。さすがに頭が固すぎたな。
仮に俺が、海外旅行先をハワイに決めたとして、移動距離を理由にして断念するだろうか? ハワイの色や観光名所に魅力を感じたからこそ「遊びに行こう!」と思い立った男が、「六千キロ以上離れてるし、近所のハワイアンカフェで満喫すっか!」などと翻意 するのか?
その問いに対する答えはいずれもノーだ。ハワイアンカフェをけなすつもりは毛頭ないが、日本国内のカフェがハワイ州でないのも動かしようがない。
つまり、双子のショタっ娘ちゃんにとって俺たちはハワイそのものあるため、ワイキキビーチやロコモコに双肩をなす存在なのである。
……論の立て方が酷すぎて、自分が何を言っているのか分からなくなってきた。
とにかく。好きな人に会うのが楽しいことならば、移動する距離や手段などは何ら苦痛ではない。ミオが代弁したのはそういう意思の表れだ。やはりショタっ娘にはショタっ娘の気持ちが分かるんだろうな。
「ねね、お兄ちゃん。今年中に、ボクたちがレニユニ君と会える日ってありそう?」
「うーん、今年中ねぇ? さすがに今年中はなさそうな気がするけど」
「お休みの日が合わないってこと?」
「それが一番の理由だな。あんなにラブレターを貰う子たちが全くの無名だとは思えないから、まとまった休みが取れる時期を狙ってるんじゃないか?」
「むむ? それって何だかヘンじゃない?」
「え。もしかして俺、何かマズイ事言っちゃった?」
「んーん、違うの。レニユニ君って、お家にたくさんのラブレターが届くんでしょ」
「うん。手紙にはそう書いてあったな」
「それって、たくさんの人が、あの子たちの住んでるところを知ってるからだよね? それがヘンだなーって思ったの」
「――確かに!」
どうして俺は、もっと早く、その事に気が付かなかったんだ。あの双子ちゃんが有名人だと仮定するなら、ラブレターのような手合いの郵便物の受取先は、本来、二人をマネージメントする事務所が請け負うはずなのに。
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