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56.お手紙着いた!(8)

「なるほどな。確かに〝朗読〟は席を立って読み上げる事が多いから、教科書の角度如何(いかん)では、挟んだラブレターが落ちるおそれを孕んでいるわけか」  やたら説得力がある理由だな。ひょっとして、里香さん本人か、彼女の母親で、これまた美人な女性の怜香(れいか)さんによる実体験を踏まえた教訓だったりするのだろうか。  ま、どっちでもいいか。とにかく相手の机に恋文を忍ばせるなら、「教科書だけはやめとけ」と。 「でも、手紙だと他の子たちの目に付きやすくないか? 今は電子メールの他にも、ミオとやり取りしているようなメッセ、もとい、会話ができるアプリがあるじゃん」 「もー、お兄ちゃんってば。メールとかアプリを使えるのは、ボクとお兄ちゃんが恋人同士だからでしょ?」 「え。というと?」 「というとー。まだ付き合ってない子のスマホに送る方法を知ってたら、受け取った方は怖くて怖くて、告白どころじゃなくなっちゃうと思わない?」 「ああ、そっか! ごめんごめん。ついうっかり、彼氏彼女の関係で、ミオに告白する他の手段を考えちまった」 「謝らなくてもいいけど……最初に好きになって告白したのはボクの方だもん。だから、お兄ちゃんにラブレターを貰えるなら、ボクはどこでも嬉しいよ!」  はぁ、たまらんなぁ。この世に生を受けてもうすぐ二十八年。ここに来てようやく、俺は理想の彼女に巡り会えたんだな。  確かにミオは、性医学的にハッキリとさせるなら男の子ではある。ただ、ミオのような、〝限りなく女性に近いショタっ娘ちゃん〟にとって、性別や性差などはハードルにもならない。  ミオが男の子として俺の彼女、ひいては〝お嫁さん〟にまでなりたいと願っている以上、たとえビーズクッションをシャツに詰め込んででも、俺の要望に応えてくれるだろう。 「ありがとな、ミオ。嬉しいからナデナデしてあげようね」 「にゃー。今日はいっぱいナデナデしてもらえて幸せにゃんだよ」  やはり子猫系なだけあって、撫でられている間、ミオならではの子猫っぽさが出てきた。 「ナデナデ。って事はさ、レニユニ君の郵便箱に保管されたラブレターは、手渡しで貰った分もカウン……数に足してあるのかもな」 「なるほどー。それなら、郵便で送るものばっかりじゃなくなるんだね」

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