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56.お手紙着いた!(9)
たぶん、という断りだけは入れておいた。
日本全国のショタコンたちから注目を浴びているのは事実なんだろうが、自慢がしたくてお便りを書いたとは思えないんだよな。文面を見る限りは。
「ねねね、お兄ちゃん。お手紙が届いたよってメールだけ送ってもいーい?」
「うーん。まぁ、授業中には通知音を消してるだろうし、そのくらいならいいか」
「やった! じゃ、写真も付けて送ろぉー」
どうやらミオは、一言メッセージに俺たちの自撮り写真を添えて、近影を送りたいようだ。普段から、俺に〝好き好きメッセージ〟を送ってくれるミオならば、送り先さえ分かれば、造作もないんだろう。
「ね。もっとくっついて撮ろ?」
「こ、このくらい?」
「うん! 仲良しなとこ見てほしいのー」
確かにそれは大事だな。俺たちの恋愛関係こそはごまかしているが、仲が良い事を隠す理由はない。
ミオは手紙が届いた旨のメッセージをポチポチと打ち込み、二人の頬がくっつくほど密着した写真を添えて送った。
ミオが最も苦労するのがメールアドレスの入力で、英単語を含んだアドレスを打ち込むことに慣れていない。入力に四苦八苦するのは予想できていたので、俺が助け舟を出し、つつがなく送ることができた。
「送ったよー、お兄ちゃん」
「ごくろうさん。たぶん、学校にいる間はマナーモードに設定してるだろうから、返事が来るのは家に帰って、一息ついてからじゃないかな」
「うんうん。あの子たちとまた一緒に遊べるといいねー」
「そう……だな」
やきもち焼きの子猫ちゃんから、そんな話を切り出されるのが不思議だ。てっきり、レニィ君を恋敵のような目で見ているものだと思っていたが。
「とは言っても条件付きだろ? 信用できる大人のもとで、衣食住の面倒さえ見てもらえれば、双子ちゃんだけで遊びに行くお許しはもらえそうだけどさ」
「お兄ちゃんなら大丈夫じゃない? カラオケが終わった後も、レニユニ君をホテルのお部屋まで送ってあげてたもんね」
そう。あの日の双子ちゃんは、まだ改心する前のご両親に放ったらかしにされ、さみしさでリゾートホテルを満喫するどころではなかった。そこでミオが機転を利かせ、俺が保護者となって引率を務めるから、せめて夜だけでも四人でカラオケを楽しもう! という計画をまとめたのである。
普通ならば、「どこの馬の骨とも知らん大人に我が子を預けてたまるか!」という理由で突っぱねるだろうが、俺を慕っていたレニィ君の猛プッシュによって親御さんの信用を勝ち取り、カラオケ遊びはめでたく実現の運びとなった。
それがきっかけで改心したご両親からも、俺は親戚よりも信頼できる大人だという、身に余るほどの評価を得ているらしい。レニィ君の手紙にはそう書いてあったからホントの話なんだとは思うが、世界に名だたる考古学者夫妻から、そうまで褒められるのはまるで予想外だ。
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