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56.お手紙着いた!(10)

 であるなら、あのご両親が、かわいい我が子を俺たちの家まで遊びに行かせる事に、何ら躊躇(ちゅうちょ)しないだろう。  確かに俺はショタコンの最終形態だ。だが、今日までミオと二人っきりの生活を送ってきて、何らかの過ちを犯した事は、ただの一度もない。  そりゃあ、おねむなミオをお姫様抱っこでベッドに寝かせたり、頭をナデナデしたりはするけど、それはお世話とスキンシップだからね。おでこへのキスだって、アメリカの家庭じゃよくやる愛情表現のひとつだろう。  どっちかと言うと、大胆なのはミオの方なんだよなぁ。今朝は俺のシャツに隠れたショーツ一枚という格好で、その薄布と生足でもって、俺の太ももにまたがって抱きついてきたし。  さすがにレニユニ君は、そこまで大胆にはならないと思うが、もしも湯上がりで、薄着になったショタっ娘三人を見たら、理性が飛んでも不思議ではない。 「遊びに来るのは大歓迎だけど、下関(しものせき)からウチまでは結構あるからな。移動時間とか疲れを考えたら、さすがに一泊二日で帰すわけにはいかないよな」 「そだね。でも、学校に行かないで遊びに行くのもダメだしー。お兄ちゃんもお仕事があるから、たくさんお休みできる日とかじゃきゃだね」 「ふむ。とすると大型連休か。先は長いけど、まとまった休日を取るなら冬休みだろうな」 「お兄ちゃんは、会社からたくさん冬休みをもらえるの?」  その問いに、俺は小首を傾げて思い出し始めた。年末が差し迫ると、ウチの会社は毎年、「仕事納め」を開く。長机にオードブルを並べ、予め買い置きしていた瓶ビールで乾杯するのだ。  俺は酒に弱いため、最後なんだから飲み干せ! なんてアルハラに遭う事が多い。そのつど、酒屋の息子である佐藤がなだめすかして、平和的に退散させてくれたものだ。  その仕事納めから、年をまたいだ仕事始めまでは冬休みになる。その日数を概算すると――? 「毎年の傾向を考えると、俺の冬休みはだいたい十日くらいだね。その間に遊びに来てもらうなら、年越しのイベントが狙い目ではあるわな」 「年越し? じゃあ、おソバをいっぱい用意しなきゃだねー」  ミオもあくまで仮定の話だと考えているがゆえか、特に対抗心を燃やす様子はない。如月家にも事情があるだろうし、年末年始を利用して、我が子を旅に出そうと思うのか? という疑問への答えはおそらくノーだ。  だったら、むしろ二人っきりで年を越した方が、普段よりいいムードになって、ミオとあんなことやこんなことを……ダメだダメだ! あまりにも煩悩にまみれ倒している。  除夜の鐘を聞いて心を鎮め、未来のお嫁さんと共に、ささやかで慎ましい新年を祝うとしよう。

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