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59.商談二日目前夜(7)

「あのさ、ミオ。俺、どっちを向いて頭を乗せたらいいのかな?」 「んー? どっちでもいいんじゃない?」  ミオは目線を上げ、両手で頭を包み込み、左右に転がすジェスチャーを繰り返している。 「ミオの方を向いても大丈夫?」 「いいよー。ボクも膝枕は初めてだから、よく分かんないし。うつ伏せだけは変だけど」  そう言って明るく笑うミオの反応を見ていると、うつ伏せでなければ膝枕は成立するのかも知れない。  そういや過去、しきりにテレビ番組で紹介されていた耳かき専門店では、その作業の性質上、客は側頭部を預けるのが原則だった。  ただ、店によって業務形態が違うんだよなぁ。される側は縦になるのか横になるのか。要するに、ミオに向かって真っ直ぐ立ち、寝そべって頭だけ乗せれば、ショーツのチラ見えを意識せずに済む。  ――いや、イカン!  今日、この時くらいは自分の本能に正直にならなきゃ、癒しが癒しにならないじゃないか。ショーツのチラリズムなんて、不可抗力のアクシデントだ! 「じゃ、失礼しまーす」 「なぁにー? それ。変なのー」  ミオはクスクスと笑いながら、俺が乗せた頭を優しく包み込み、据わりの良い姿勢へと調整し始めた。この子とて初めてだというのに、彼氏がリラックスし易くなるよう、気を回してくれているのである。  何という包容力だ。しかも己の本能に従って、ミオの方を向いて頭を預けた結果、ショートパンツの隙間から、やや水色がかった布地が目に飛び込んできたではないか。 「絶景だ……」 「ほぇ? なぁに? ゼッケーって」 「あ? しまった! じゃなくて面目ねぇ」 「どしたの? 癒してあげたくて、ボクが膝枕してるだけなのに。お兄ちゃんが謝ることじゃないでしょ」 「いやその。こっち向いてると、ミオのショーツがチラッと見えちゃうもんで、ついついこっち側を選んでしまったというか」 「ふーん? よく分かんないけど、そうなんだ」  本能が導くままに、女の子座りから覗くミオのショーツを見てしまった。しかも計画的だから始末が悪い。軽蔑(けいべつ)罵詈雑言(ばりぞうごん)は覚悟しているが、あの誘惑にだけは抗うことができなかった。なぜなら俺は天性のショタコンだから。 「でも、お兄ちゃん。子供用の〝るーむうぇあ〟は、これより小さいのがないらしいよ」 「な、なるほどな。それじゃあ隙間ができるのも仕方ないか」 「うんうん」  ……全く警戒感というものがないな、この子は。  それだけ、俺という草食系男子から、邪念や煩悩といったものが全く発せられてないんだろう。結局、ショーツを見た俺の方が赤面して、目を逸らしちゃってんだから世話がない。 「いつも甘えてばっかりだから、今日はボクが、いーっぱい甘えさせてあげるね!」  ああ、天にも昇るような心地良さだ。こんなふうに、彼女から頭をナデナデされることなんて皆無だったからなぁ。  ショタっ娘ちゃんの母性、(あなど)りがたし。

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