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59.商談二日目前夜(8)

「ミオ、大丈夫? 重くない?」 「うん。平気だよー」  俺の頭を愛おしそうに撫でるミオの太ももは、まだ幼いがゆえか、筋繊維が柔らかい。ためしに指の腹で押してみたが、ぷにぷにとした感触が指に残る。まるで猫ちゃんの肉球みたいだ。  この柔軟さは運動不足というより、ナチュラルに発育した結果によるものだろう。児童養護施設にいた時は、しばしば徒歩で山へと遠足に出かけていたと聞くし、たぶん、歩く方に特化して発育したんだと思う。 「膝枕なんて、いつ覚えたんだい?」 「えっとね、テレビで見たんだよ。女の子が男の人を膝枕して、耳掃除をしてくれるお店があるんだって」 「あぁ、納得。耳かきしてもしなくても、男が一番リラックスできる姿勢は膝枕なんだろうな」 「お兄ちゃんもそう思う?」 「うん。彼氏が彼女に甘えられるケースって、こうして膝枕してもらえる時くらいだし」  まぁ、もっと踏み込んだスキンシップは他にもありはするんだろうが、やらしいことの領域に踏み込んでしまうので。 「ボクみたいな男の子の膝枕でも、甘えられそう?」 「もちろんだよ。こうしているだけで気持ちよくて、心が落ち着いて、今にもウトウトしそうなんだ。たぶんミオの太ももが、女の子のそれよりも魅力的なんだろうね」 「ホント? えへへ、嬉しいな……」  褒められて、すっかり照れてしまった様子のミオは、紅潮した頬と笑みを隠しきれないようだ。たぶんこの子の心は、自分が俺の彼女として役に立てた事で、これ以上ないほどの充実感に満たされているのだろう。 「ね、お兄ちゃん。他にして欲しいことがあったら、何でも言ってね!」 「何でも?」 「うん、何でもだよ。ボク、お兄ちゃんにだけなら、どんなことされても嫌じゃないもん」 「エッチなことでも?」  と、冗談めかして聞いてみても、ミオの笑顔に全くの動揺がなかった。 「エッチなことでもボクは構わないけど、お兄ちゃん、全然しないじゃん」 「そ……そりゃそうだよ。十七も年が離れた子にそんな事したら、お巡りさんに怒られちゃうからさ」 「でも、ここならお巡りさんいないよ?」  え? どういう意味だ、その発言は。今なら何をやってもいいという、ショタっ娘ちゃんならではのOKサインなのか?  しかしなぁ。近年の法改正にて、いわゆる「やらしい事」をしてもよい年齢が、十三歳から十六歳にまで引き上げられているし、年齢差に開きがありすぎてもお縄にかかるご時世なもんで。  だから現状では、どんなに踏み込んでも、ミオと口づけをするくらいがギリギリ許容範囲だろう。 「まぁ、せっかくだけど。そのお楽しみは、ミオがもう少し大きくなるまで取っておこうね」 「うん、分かったー。……ん? エッチなことってお楽しみなの?」 「そりゃ、もちろん」  あんまり踏み込んだ説明をすると生々しくなるから、俺は表現を極力ぼやかした。  たぶんミオにとっては何がどうなるのか、理解しづらい説明だったと思う。が、今はそうでなくては、下心ありと見なされて、里親失格の烙印を押されちゃうからね。

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