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61.中期滞在(14)

「ねぇ、お兄ちゃん。今日はどのショーツがいい?」 「えっ? ショーツ?」  風呂から上がり、入念に全身を乾かしたあと、出し抜けにミオが尋ねてきた。 「そ。お兄ちゃんが見たいのを穿こうかなーと思って!」  なるほど。ミオが未だ腰にバスタオルを巻いたままなのは、俺が見たいショーツと穿いた姿を選ばせてあげたかったからなのか。何だか後ろめたい気もするが、せっかくの申し出だし、あまり長引いたらミオが湯冷めしちゃうから、直感に任せて選んでみよう。 「じゃあ、そっち。紫の方を見せてくれる?」 「うん、いいよー。ちょっと待っててね!」  ミオは俺の返事を聞くなり、再度浴室に駆け戻ってしまった。たぶん、その場で穿く事に恥じらいを覚えたのだろう。  その一方で、穿いた後の姿をお披露目する事には何ら抵抗がないらしい。あの子の恥じらう基準はどうやって決定しているんだ? バスタオルで隠したまま穿くのなら、どの道見えないと思うんだけどな。  いや、むしろその考え方こそが野暮なのか? そもそも、こんなシチュエーションに巡り合わせる機会自体が希少すぎるものだし、何が正解で何が野暮なのか、てんで見当がつかない。 「お兄ちゃーん、穿いてみたよ!」  との声と同時に浴室から出てきたミオは、自分の腰に巻いていたバスタオルを、勢いよく剥ぎ取った。  ああ、まごうことなきハイカットの紫ショーツだ。しかも、ウェスト部分のゴムとリボン、足ぐりは黒色ときた。何という(なま)めかしいデザインなんだ……色気が強すぎて頭がクラクラしてきた。  いいのか? これは。まだ十歳のショタっ娘ちゃんが穿くショーツだというのに、こうまで刺激の強いものを売ったりしてさぁ。 「どーお? 似合ってる?」 「うん、すごく。念の為に確認するけど、それって子供用だよな?」 「そーだよ。ボクが施設にいた時、園長先生に買ってもらった『お任せ三色カラーセット』の中の一つなんだよ」 「なるほど。ミオの下着は一通り見たつもりだったけど、他にも未着用のがあったんだね」  いつも思うんだが、なぜ、この子が女子用のショーツを穿いても違和感がないんだろう? 「そういう加工」がなされたコスプレ用のグッズなら話も分かるが、ミオが着用する下着は、至ってナチュラルなものである。だからこそ、尚更不思議で仕方がないのだ。 「そ、そろそろ服を着よっか。風邪を引いちゃったら大変だからね」 「えー? もっと見なくていいの?」 「いやぁ、充分見せてもらったよ。かわいいショーツだね。ちゃんとクロッチがあるのも確認できたし」 「んん? 〝くろっち〟ってなぁに?」  しまった! またもヤブヘビになっちまった。  ……やむを得ない。とにかく、下着姿のままではいろいろと良くないから、先に服を着せた上で、また新しく湧き出た知識欲を満たしてあげよう。

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