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62.お魚さん尽くし(18)
なればこそ、ミオが抱く愛ゆえの怒りに、誤りがあるとは絶対に言えないのである。
何より今の俺は養育里親なんだし、揉め事でケガなどしようものなら、即座にその資格を失いかねない。
そのような現状を踏まえるとこうなる。絶対にケガする事なく、正当防衛の範疇 で、私人逮捕による鷹野の取り押さえが望ましい。というか、これが最低条件。
……最低条件のハードル高くない?
しかし、寄り合いの店主さんたちも疲れてきているし、このまま放ってはおけない。どこまで鷹野に通じるかは賭けになるが、ここはあの作戦で挑んでみるか。
「あ! お兄ちゃん。ホントにあのワルイ人とケンカしようとしてるでしょ? ダメなんだからね!」
腹を括 った次の瞬間、何かを悟ったミオが、より強くシャツの裾を引っ張ってきた。さすがにこの子はカンが良い。ショタっ娘ちゃん特有の、第六感が働いたという事なのだろうか。
「うげっ。ちょ、ちょい待った。いい作戦を思いついたんだよ」
「いい作戦? それって、ケンカしない作戦?」
「そうそう。でも、これは俺とミオ、和音さんの力が必要な作戦だから、一人でも欠けたら実行できないんだ。つまり――」
「ええ? そない言うても、ウチ、ご飯作る以外の事は苦手やさかいに。あいつのド頭 、オタマでド突くとか?」
微妙に韻 を踏んでいるのが気になるけれど、俺が求めているのは暴力という意味での「力」ではない。あくまでも、か弱い女子とショタっ娘ちゃんを危険な目に遭わせぬ事が大前提だ。
「オタマはこの際、料理に使ってもらうとして。簡単に言うと、相手の力を利用した取り押さえ方、かな。ミオ、和音さん。お手伝いしてくれるかい?」
「……うん! お兄ちゃんのためなら、ボク、何でもやるー!」
自分が求められている事に喜びを感じたのか、ミオは裾から手を離し、抱きついて頬ずりし始めた。はぁもう、カワイイなあ。ここまで信じてくれるからには、何が何でも成功させなければ。
「ほ、ほな、ウチもやります。こない遠くまでご飯を食べに来てくれはった、柚月さんとミオちぃのためにも、何か恩返しさせてもらわな!」
「はは。そこまで背負わなくていいけど、気持ちは嬉しいよ。ありがとう」
「ねぇねぇお兄ちゃん。お手伝いって、ボクたちはどんなことをすればいいの?」
「難しい言い回しになるけど、この作戦で相手の力を利用して、相手を無力化するんだ。そのためには……」
*
作戦の内容と、各々の役割を説明し終えた俺は、二人の反応を窺 う。この場で異論や反対意見が出れば、作戦に不備があるとみなして練り直しだ。
「ほぇ? ボクのお手伝いって、それだけでいいのー?」
「ウチも、ただ持ってるだけでエエんです?」
「もちろん。それが強力な決め手になるからね。後は、あの悪酔い男が誘いに乗ってくれれば成功さ」
「でも、お兄ちゃんは大丈夫? ケガしない?」
「うん。ミオのためにも、絶対にケガしないって約束するよ」
「わかった。頑張ってね、お兄ちゃん!」
「柚木さん! 終わったら、また皆でオイシイご飯食べましょ!」
という、二人の熱い声援を背中に受けた俺は、久しぶりに心が昂 ってくるのを感じた。おそらく、アドレナリンが分泌され始めているんだろう。
いかに鷹野が酔っ払いでも、柔道の有段者に真っ向から挑むのは分が悪い。だからといって、このまま見過ごしてはおけないのだ。
警察が駆けつけるまで、ほんの少しだけ、時間を稼ぐ事ができればそれでいい。何でも暴力で押し通そうとする不逞 の輩には、俺たち三人の力で一泡吹かせてやる。
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