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第3章 一年次・9月(3)
月曜日に茂と会った時、高志はあらためて週末のお礼とお詫びを言った。
「え? 全然いいよ。俺寝ててごめんな。出る時間聞いとけばよかったと思って」
茂は笑って答える。
土曜日の朝、7時前に高志は再び目覚めた。明るくなった居間で起き上がり、ふと座卓の上を見ると、もし自分が起きてこなかったらポストに入れておくようにと書かれたメモと、茂の部屋の鍵らしきものが置いてあった。
昨日寝てしまった後に遥香からラインが来ていたのでそれに返信し、顔を洗い、勝手にインスタントコーヒーを入れてしばらく小さな音でテレビを観ていたが、一向に茂は起きてこないまま8時になった。休日の朝に起こすのも申し訳ないし、勝手に襖を開けるのも気が引けたので、結局高志はメモの空白部分にお礼を書き込み、指示のとおり施錠後に鍵をポストに入れて茂の部屋を後にした。それから近くの牛丼チェーン店で朝食を取り、体育館へと向かった。
「みんな藤代のこと褒めてたよ」
「え? 何で」
褒められるようなことは何もしていない。あの日、三人ともそれなりに好意的に接してくれたのに、高志は結局あまり上手く話せないままだった。茂が都度フォローしてくれていたが、もしかしたら不愉快な思いをさせたのではないかと思う。挙句、途中で寝てしまった。
「かっこいいってさ。口数少なくて、姿勢が良くて背筋まっすぐで、夜はちゃんと寝て朝は早起きして、そんで休みの日も朝から運動部だろ。俺達みたいにゲームで夜更かししてるやつらとは根本が違うなって言ってたんだよね」
茂は面白そうに話す。それから高志の表情を見て、少し間を置いてから、
「藤代ってさ、もしかしてリア充とか言われるのあんまり好きじゃない?」
と聞いてきた。ふいを突かれる。
「別に……そんなことないけど」
茂がじっとこちらを見てくるので、高志はなるべく正確に伝わるような言葉を探した。
「リア充って言われる時に持たれてそうなイメージが実際の自分とずれている気がして、それで少し居心地が悪く思うことはある。でも嫌だとかむかつくとかじゃない」
「そっか」
「この前も、あまり上手く話せなかったし、せっかく誘ってもらったのに先に寝てしまったし」
「そんなのは誰も気にしてないよ。ていうか今言ったように褒めてたからさ」
「まあでも、悪かったって伝えといて」
「分かった。ちゃんと伝えとくから、また今度やる時は来いよな」
「え? ああ、うん」
高志が頷くと、茂はまた笑顔になった。
「ていうかお前さ、二回目であいつらといい勝負するとか、やばいだろ!」
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