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第5章 一年次・10月(1)

 『一人暮らしすることになったよ』と遥香からラインが来たのは、10月中旬のある夜だった。  遥香は電車で一時間半ほどかかる大学に通っている。通えない距離ではないが、たまに「遠い」とか「早起きが辛い」といった話を聞いていたので、前から考えていたのだろう。『いつから?』と返事を送ると、『来月から』『また日曜日に話すね』と絵文字付きで返ってきた。  了解の返事をしながら、高志は夏休みに遥香が泊まりに来た時のことを思い出した。今度は自分が泊まりに行くことは可能だろうか。  日曜日に確認してみると、週末は実家に帰ってくることが一人暮らしする際の条件だったらしく、毎週日曜日にはこちらにいるとのことだった。  遥香の家庭はどちらかといえば厳しい方らしく、高志は遥香の両親に会ったこともなければ家に入ったこともない。おそらく自分と付き合っていることも話していないだろう。目論見の外れた高志は少しがっかりしたが、こちらで待ち合わせしてから一緒に部屋に行こうと遥香に誘われたので、すぐに頷いた。  ある時、高志はふと思い付いて、自分はイケメンかと遥香に聞いてみた。自分ではそう思わないし、茂以外から言われたこともなかったからだが、遥香は笑い出して、誰かに言われたのかと問うてきた。更にそれは女かと聞かれたので、男に言われた、と言うと、遥香は何故か満足そうに頷き、高志は女の子にモテるよりも男から慕われそうなタイプだ、と言った。  11月はちょうど学園祭シーズンで、高志の大学では第一週に、遥香の大学ではその次の週に開催されることになっていたが、柔道部としてのイベント参加等はなく、高志も特に予定はなかった。そしてそれは遥香も同じらしく、授業のないその期間を利用して引っ越しをする予定だと言った。学園祭の順番が逆だったらその間に一回くらい泊まりに行けたなと高志は思ったが、口には出さなかった。

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