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第14章 二年次・12月(5)

 そうやって横で笑う茂は、もちろん高志が今日ここに来た理由を分かっていないに違いなかった。自分がどれだけ高志の心の支えとなっていたのか。軽蔑なんて酷い誤解をさせるくらいなら、それをきちんと伝えなければと高志は思った。 「お前は分かってないと思うけど」 「だからごめんって」 「違う、そのことじゃない」 「え?」 「今日、一人になるのが嫌でお前に電話したんだ」 「ああ……うん」 「それに、本当はずっとしんどくて、細谷に聞いてほしかった。何でか話せなかっただけで」 「うん。そっか」 「だから俺がお前を軽蔑したりする訳ない」 「うん、分かった」 「いや、分かってない」 「えー。もう分かったよ」  茂が苦笑する。照れなのか言葉足らずなのか、どうしても上手く伝えられない。 「じゃなくて。お前じゃなくて、俺がちゃんと言えてない」 「何を?」 「だから……」  高志は、自分が伝えたいことを頭の中に思い浮かべた。あの時感じた安堵を。 「電話でお前の声が聞こえた時に俺がどれだけ安心したかとか。さっきお前の横に座ってただけで、俺がどれだけ楽になったか、とか」 「――」 「そういうこと分かってないと思うから、分かっとけよ」  途中から段々と恥ずかしくなって、高志はぶっきらぼうにそう言うと、顔を背けてチューハイを飲んだ。 「そんでもう変な誤解すんな」  茂の顔が見られないので、顔を背けたまま茂の返答を待つ。ほどなく茂が笑う気配がした。 「藤代、お前なあ」  今更だが顔が熱い。高志は更に顔を背けて、赤くなっているであろう顔を隠した。 「だったらさ、お前も分かってないだろ。距離置かれてると思ってたお前からいきなり電話来て、あの時、俺もすごく嬉しかったよ」 「……」 「お前も分かっとけよなー」  茂が軽く高志の腕を叩く。 「……いや」 「ん?」 「もういい」 「いいって?」 「もう終了」 「あー……だよな」  お互いに気恥ずかしさが伝わって、しばらく黙ったままビールとチューハイを飲んだ。つけたままのぷよぷよのBGMだけが流れている。  並んだ座ったまま何も話さずに、冷静になれるまで、ただ時を過ごした。

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