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第二十話 溺れる 中

 幸福だと感じる。けれど、それだけでは足りないと互いに口を開いた。情熱的に舌を吸ってくるそれはいつもより甘く感じられた。強く弱く舌を吸われて頭がくらくらするほど酩酊感をもたらす。敏感な口腔内の粘膜を舐め上げられ、ひくん、と腰が揺れる。 「溺れてるって証明してみせて」  晴にそう耳元で囁かれた。蓮は晴のはだけた鎖骨に顔を擦り寄せて、ちゅ、と小さく花を咲かせた。それから首筋に頬を擦り寄せ、口づけの痕を何度も残す。触れるたび、自分の身体が熱くなるような気がして、吐息が漏れる。 「すきにして、いい…とっくの昔からおまえのもの、だから」  顔を合わせるのが恥ずかしく、俯向きながら蓮は甘えた声で抱きついた。すると腰から手が伸びてきて、服を脱がせようとしてきた。その手に身を委ねているとあっという間に裸にされてしまい、素肌に触れられ、撫で回される。 「そこのソファーに座って、立ってられないでしょ」  指摘された通り、もう脚が縺れていてふらついていた。優しい和やかな笑みを見せる晴がいつもより気を遣っているようでなんだか歯痒い。 (毎回乱暴に抱かれたせいか、急に優しくされるのもだめになる)  大人しくソファーに座った蓮の股を急に広げたと思ったらその間に身体が入り込み、キスをされた。ちゅ、ちゅ、と頬から鎖骨にかけて口づけの雨を降らす。「あ、あ…っ」と甘い声で誘いながらソファーの沈みに埋もれていく。  ぢゅう、と乳首を吸われ、びくんっ、と身体が震える。もう片方は指先で弄られ、声が我慢できなくなった。  汗のせいで皮膚の表面は冷たくなっているのに、その皮を剥けば、どろっとした暑い粘液が溢れてきそうだ。 「あっ、あぁ……っ」  脳を焼き尽くす勢いで快感がやってくる。羞恥なんてものは晴に食べられ、少しの刺激でも震えて歓喜にわなないた。  両の乳首を愛撫され、蓮の股の中心は晴に擦り付けて濡れている。ひくん、と腰を揺らしているのがバレているのに、止めようとはしなかった。  いがめるように舐る舌が乳首の先端をこりこりと押し潰す。そのあと転がすように舐め上げ、吸いつく。蓮は喉を反りながら喘ぎ続けた。快楽の分だけ重たく粘って、身体の中に甘い蜜をたらしていく。  乳首を構っていた手が下へと伸びていくのを目で捉えると、とっさにそれを阻止した。 「なに? 俺の手が嫌になったの」  顔を横に振るう。蓮はその手を取って、乳首へと位置を戻す。そして、自分で胸を揉むように動かし始める。  あまりの羞恥に死にたくなった。それでも蓮は自分なりに甘えてみた。今までそんなことはしたことがない。これが正しいかもわからないけれど、もっと触ってほしいことに変わりはなかった。 「もしかして、乳首まだ触ってほしいの? ここだけで達したい、とか」  静かに蓮は目を閉じながら下に顎を引いた。今頃全身真っ赤に染まっているのが想像できる。きゅっと脚が閉じて、間に入っている晴を逃さないようにした。 「甘えてるのに、俺を甘やかしてるみたい。これって俺の方がご褒美もらってるよね」  愉しそうに笑うと舌を出しながら胸に吸いついた。蓮は乳首から流れ出す愉悦の波に逆らわず享受する。  眉根(まゆね)をせつなく寄せて、露骨な喘ぎ声を晴に浴びせる。 「あっ、あ…っ、ああ……っ」  自分の身体に巡っている官能が大きくなっていく。吸いついている晴がかわいくて見えて、ぎゅうっと抱き寄せてしまう。  やっぱり晴はかわいい。俺を求めて一生懸命になる姿は昔と変わってない。いや、変わった。ずいぶん視界的に危険で官能的になってしまって、俺が保てそうになくなった。かわいいのに、意地悪で大人になった晴。そんな弟にさらに欲情してしまう。 「俺のせいで乳首なくなっちゃうかもね」  冗談のようで言った言葉は本当のように思えて仕方がなかった。それを感じさせられるほど乳首への執拗さが酷かった。  嬲られ続けた乳首はぷっくらと赤黒く腫れてしまったのに、今度は指で挟まれ揺すられている。反対に指で弄られていた方はねっとりと粘着質な熱い舌で舐られていた。  甘噛みすれば、指先の方ですりすりと優しく擦られ、ねっとりと回すように舐められれば指の方は天に向かって摘まれる。強弱をつけた飴と鞭のような責められ方に身体を仰け反らせた。おかげで胸をさらに前に出すような体勢になり、行為は終わることなく続いた。 「あぁ、ん…っ、ん、んん、あっ、あ……っ、も、やめ…っ、めくれちゃ、う…っ」 「大丈夫、まだついてるよ」 「や、あ、もう、むり、あっ、あ、いく、いっちゃう…っ」 「乳首弄られただけでイっちゃうの? ならもう少しだけ手伝ってあげる」  吹きかけるような言葉にすら感じてしまう敏感な皮膚越しに、晴の熱い口腔とぬめる舌が襲ってきた。吸う合間に先端で転がされる巧みな悦楽に腰がさらに揺れ動いてしまう。  わざと音を立てて吸われると頭までおかしくなり、漏れ出す声が大きくなる。 「あ、あ、あ…っ、ああ、あっ、だ、め…ッ」  吸引が強くなり、優しく撫で回していた指先もくぼみに爪先を突っ込み、ぐりぐりと押しつぶしてきた。  舌が離れたと思ったら、口に再び含まれ、かぶりと乳暈ごと噛みついた。指先は尖った乳頭を指先で、ぴんっ、と跳ね上げた。その強烈な刺激に感じすぎてしまった身体は絶頂に達する。強制的ともいえる快楽にぴくぴくと甘イキを繰り返していた。 「さすが蓮兄。こんな刺激だけでイっちゃうなんて、俺だけに与えられるものがそんなに嬉しいの?」 「…ん、ん」  こく、こく、と曖昧な意識の中、何度も頷いた。  晴だけ。お前じゃなきゃこんな感じてなんかない、と熱を帯びた目線で訴える。 「なら、隠しても隠しきれないほど痕つけてもいい?」  初めて甘えたような、強請るような弟の声に起き上がった蓮。それがどんな意味をするかなんてわかりきっているのに、自分が晴のものになるという独占欲に浸りたいがゆえに「おれも、したい」と首筋に噛みついた。  胸には噛み跡や赤い痕がたくさんついたが、腕にも特に内側の方に印をつけていく晴。お腹はくずぐったさで笑いそうになったが、たまらない様子で顔を埋めているのを見て髪を撫でた。唇が下半身へと降りていき、太腿の内側にじくじくと鬱血痕を残す。  反り勃っている性器を無視して、脚にへと唇を肌に擦り込まらせる。まるで肌の繊維に馴染ませるように、じっくりと熱を与えていく。負けずと痕を残したいのに、触られている腕に押さえつけられて、これ以上感じたくないのに淫らに息を漏らす。 「愛撫だけで、またイキそうになってる」  晴は脚を上げて、口づけしながらしとど濡れた性器を卑しく見つめていた。  蓮はその目線だけで、ゾクゾクッと愉悦を背中に走らせた。ぷく、と鈴口から蜜が漏れ出すのを見て、目を閉じながら身が竦む。 「——あ!」  だが、ふいに下肢に焼けつくような快感が襲ってきた。蓮はびくんっと背中を反らし、ソファーの革地に爪を引っ掛ける。  晴が脚の内側から唇を滑らし、そのまま股に顔を埋め、蓮のものを咥え込んでいた。熟れた果肉を味わうように晴の舌が蓮の亀頭の表面を這い回る。滴る蜜を舌でこそげ取ると、大量の蜜が溢れ出る。  熱く濡れた感触が肉茎を包み込み、ぬるぬると扱かれた。キスも上手い舌は舐めるのも絶妙だった。巧みな舌が裏筋をちろちろとくすぐりながら、ねっとりと絡みついてくる。 「はっ、ア、んっ、あ、あぁ……っ」  じゅるじゅるという淫音を立てながら股間のものが吸われる度に、たまらず腰が浮いてしまう。 「は、ぅ…っ、あぅ、あ……っ、ふ、あ、あっ、あぁ……っ」  双丘を揉みしだいていた手が伸びてきて、乳首を虐めた。蓮はたちまち追い詰められた。蓮は余計と淫らな声が止まらなくなり、身を捩らせた。 「ああっ、あ、や、らっ、あ、は、う…っ、んん、ぁ、あっ、ふ、ぅ、あ…っ」  爪先でカリカリと弄られ、下肢では上下に激しく吸われ続けている。腰がかくかくと揺れ動き、舐る舌をもっと感じたいと突き出す。その動きを見て、震え勃っている乳首を指の腹でぐりぐりと潰した。それと同時にねっとりと筋を這っていた舌が先端をぐりぐりと捻じ込んだあと、かりと甘噛みをした。 「はぁっ、んあ、あ、あ——っ」  喉から(ほとばし)るような声を出し、蓮は極めた。晴の口の中で思いっきり噴き上げた白蜜は全部飲み干されていく。はあはあと胸で喘ぎながら全身の力が吸い取られていくような感覚に蕩ける。もう出ないのに、ちゅうちゅうと吸い続けられ、敏感になっている身体のせいでまた達しそうになる。 「またイキそうになってるけど、今度は中でね」  射精したとき、下腹の奥がずん、と疼いた。中が煮え立ち、そこを貫いてくれる男のものを欲しがっている。まだ何もしていないというのに、内壁がヒクヒクと蠢いている。それだけで勝手に快楽を生み出し、全身を震わせた。

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