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第二十話 溺れる 下

「そろそろ構ってあげないと寂しくて自分で弄っちゃいそうだもんね」  ぬぷり、と指を差し入れられ、内壁が引き攣られるような快感に襲われた。指が関節を曲げながら奥へとまさぐられる。  蓮はもう我慢できないほど乱れた。 「んぅあっ、あっ、あぁ…っ」 「中に指を入れただけなのに、感じすぎじゃない?」 「あっ、あぁ、だ、って、おまえの、はる、の、っゆび、だから」 「俺だからこんなに乱れてるって言いたいの? 確かに兄さんの中あっついし、指だけで襞が吸いついてきて抜けないほど締めつけてくる。いじらしいなぁ」  ちゅくちゅくと肉洞を抽送(ちゅうそう)しながら前立腺をこりゅこりゅと擦り上げる。身体の芯から快楽と興奮が湧き上がり、途絶えることなく全身を蝕んでいく。  三本の指が同時にずぽずぽと出入りを繰り返し、粘膜を絡め、掻き乱す。中から脳へと伝わる神経はもう足りないの一点張りで、指を増やしても収縮を止めなかった。  ぬぽっと指が抜かれ、それだけでもその感覚に愉悦が走る。甘い吐息を吐いていると蓮に押し倒され、双丘の奥に硬いものが当たる。ぬるぬるとしているそれは今にでも這入りそうだった。 「挿れてほしい? もう我慢できないって言って」 「ぁ、う、もう、がまんできな、い…っ」 「どこに欲しいのかな…その小さいお口? 教えて、兄さん」 「あ、あ…っ」 「ほーら、いつもみたいに甘えて強請ればいいんだよ。もう大丈夫だから」  離れたりしない、と囁かれ、収斂する後孔にくぽっと先だけが口づけをしている。とちゅとちゅと口づけをしてはぬりぬりと押しつけてくる。それを欲しそうにちゅうちゅう吸いついている孔を見て、ごくりと喉を上下に動かす。 「見える? ものすごくほしそう。赤ん坊が一生懸命乳吸ってるみたいだね。でも兄さんはいい歳だから、はしたないか」  「あ、ぅ…っ」 「そんな蓮兄も愛らしくてそそられる」 「ひっ、ぅ、あ……」 「蓮、はやく」  咲き乱れたように喜悦した。名を呼ばれることがこんなにも嬉しいことなんて、と蓮は自分の指で後孔を拡張した。 「晴…俺のこと、しぬまで愛して」  雛鳥のように口を閉じてキスをせがんでは「もっともっと」と欲張りながら告白した。晴は返事の代わりに口づけを交わすとぴっとり後ろに当てた。欲しがっているところが晒されている。剥き出しになっている欲望がさらに蓮の声を美しくさせた。ずぶずぶと音を立てて挿入される男根に蓮の肉洞は狂喜した。 「あ…っ、ああ——…っ」  蓮は身体をあやしくのたうたせた。挿入の快感が全身に広がっていく。けれど蓮は耐えられず背中を仰け反らしながら、喉までを反らした。けれどそれすら許さないといった晴の腕が伸びてきて、背中に回される。密着した身体は身を捩らせることができない。甘くて苦しい快楽地獄が始まった。 「あっ、あ、あぁっ」  汗だくになって律動する晴の額から汗が落ち、蓮は「ひっ、あ」とその落ちた刺激でさえ感じてしまい嬌声を上げた。そのタイミングでずうん、と重い突き上げが襲ってきた。 「く、は、あ、あぁ…っ」  身体から突き抜けるほどの快楽。拡張された肉洞を蹂躙(じゅうりん)する晴の男根は、絡みつく媚肉を振り切るほど、力強く、遠慮なしに奥を目指していた。 「んん~~~~……っ、ん、くぅ、ん、んっ、ぁ…っ」  じゅわりと腹の奥が蕩けていく。奥まで容赦なしに抽送する晴のものは蓮の感じる粘膜をこれでもかと擦り上げ、あますことなく抉り、とてつもない快楽を与えた。 「は……っ、あ、あ…っ、あぁ!」 「襞が食いついてきて、いつもより興奮してない?」 「あっ、あぁっ、ああっ」 「すっごい吸引力。中まで離したくないってことかな。健気だね蓮は…たまんねぇ」  掠れた色香な声に思わず体内の晴のものを締めつけた。小刻みに動かされ、締めつけを振り切られると、爪先まで痺れるような甘い波がやってきた。 「ひ、う……っ」 「また一番奥で出してあげる。奥でも離さないでくれる?」 「ふ、う、ん、ん…っ、はな、さない」  そう告げると口づけられる。拒否権なんて最初からない。そんな感じの口づけだった。  支配される悦びで歓喜する身体。男に奥の奥まで明け渡し、淫らな淫獣に成り下がる。 (それでも)  ほしいと思ったとたん、奥が下りてきたような錯覚に眩暈がする。晴の先端がぐっぐっと奥の奥に入り込んできて、ぶわっと下腹が灼け尽きる。 「がっ、ア!」  暴力に近い快楽が身を襲う。快楽が内側から爆破したように、押し寄せてくる波に全身が浸っていく。 「ひ———…、い、あ、あっ、う、あ~~~~……っ!」  飛び散るような声が部屋中に響く。最奥でねっとりと責められ、ずっと極めているような感覚に身体がわななく。 「っ~~~~! う、あ、あっ、あぁ!」  内奥が吸い上げるほど晴のものを食いつき、じゅぷ、じゅぷ、と音が漏れる。強烈な快楽に理性は吹き飛び、意識が恍惚の中に溺れていった。 「奥、なんで好きか、当ててあげようか?」 「あぁ、あっ、すき、すきぃ…っ、んんぁ…っ、あっ、あっ」 「自分でも知らない場所を誰でもない俺に虐めてほしかったんでしょ」  深いところを乱暴にされるのが好きだ。快楽で我慢できない場所を晴に蹂躙されたかった。嫌だと泣き喚いてもやめずに可愛がってほしい。俺に必死になって腰を打ちつけてほしい。 「兄さんMだから、もっとしてほしいことあればやるよ」  ずくっ、と中で一回り大きくなった晴の男根が大きく突き上げた。ごりゅごりゅと肉を抉るような貫きに淫らに喘ぐ。 「あ、あぁ、あああぁあっ!」  蓮のものから白蜜が弾け、晴の腹にも飛び散る。脳髄が焼け溶けてしまう快感に襲われた。その衝撃に耐える暇も与えず、限界まで割り開いた蓮の脚の間に、容赦なく腰を打ちつけてくる。一突きごとに達してしまいそうになった。 「あぁ、あっ、あ~~~~!」  はしたない声を上げ、身も世もなく悶える。身体が爆発しそうだ。口からは唾液を滴らせ、瞼から雫が流れ落ちる。凄まじく淫蕩に(ふけ)った表情を晴に晒している。それがもの凄く興奮しているということに、晴も気付いていた。 「蓮、もう出すよ。俺の受け止めて。また栓してあげるから逃げないで…っ」 「あっ、だし、てっ、あ、あっ」  終わりを迎えた晴の飛沫が、最奥で叩きつけられる。孕んでしまうほどの量が流れ込んでいく。蓮は耐えきれず、一際深い絶頂に達した。 「ああぁうっ、あぁっ、あ! んぁああぁ……っ!」  極みが一度では終わらず、二度三度と止まらずやってきて、信じられない快楽に声なき声が叫ぶ。 「ッ……、っ~~~~~!!」  意識が消えそうになる。すると終わったはずの晴のものがゆっくりと動き始めた。言った通り、栓をするようにぐっぐっと押し込もうと突き上げている。  我も忘れそうに喘ぎ、永久に閉じ込められてしまったような快楽地獄に征服感を感じた。 「蓮、俺なしで生きていかないよう縛りつけても逃がさない」 「あっ、あ…」 「俺もずっと恋してた。もうどこにもいかないで。そばにいるから、ずっと」  綺麗な宝石が転がされるような言葉だった。あの歌で導かれたかのように晴が幸せだと呟く。愛してると何度も言われ、泣きじゃくった。涙を拭き取られ、また律動が始まる。  朝まで抱き続けられるだろうと微睡みながら強く晴を抱きしめ返した。      強く握られた手は、朝目覚めても繋がっていた。もうそばにいない未来を想像することはない。  爽やかな朝の日が二人を末永く包み込んだ。                おわり  

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