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第17話
逞しいそれの、先端にキスをする。ぬるりとした先走りで唇が滑り、そのまま両手で竿を支えて先端で唇をぬめぬめと滑らせた。
「んっっ……、ちょっと、いきなり、ずるっ……」
「ん? 気持ちいい?」
「い……けど、っ……、はっ……」
宮下の声が直接脳に響くみたいだ。気持ちいい。少し焦らしたかったのに、もっと気持ち良くさせたくて早く咥えたくて、我慢できずに舌触りの良い先端を口に含む。
先端の舌触りを楽しみながら、竿を扱いて快感を誘う。深くディープキスで繋がっているような充足感。キスで敏感になった舌先を宮下の性器に擦り付けて快感を貪った。
「はっ……っん……」
知らず、必死な口元から吐息が漏れる。
「加藤さん、すごっ……」
褒美のように髪を撫でられて、甘える猫のように身体を擦り付けたくなった。髪の毛って性感帯だっけ? と思う程大きな手が気持ちいい。
口の中の性器がピクリと動いて蜜を流す度に、自分の中から何かが流れ出そうになる。
ぐらぐらの気持ち。愛しくて、嬉しくて、このまま全部を食べてしまいたい。
俺の口の中でイって欲しくて奥深くまで咥え込んだ。久々の感触と感覚に夢中になる。
──気持ちいい……。
フェラするのってこんなに気持ち良かったっけ? こんなに全身で感じるんだっけ?
「……ぁっ」
宮下の吐息が聞こえると耳すら気持ち良くて、もっと声を聞きたくて、舐め取る舌に気合が入る。
じゅぶ……と、わざと淫猥な音をさせて頭をスライドさせ先端を啜る。流れ出る涎と宮下の先走りでぐしょぐしょになった手でぬちゃぬちゃと根本から玉を愛撫した。
「か、とうさ……ん、そん、なにされたら、まずいですっ、て」
息を詰め、抑止されて、ますます止まらなくなる。宮下が気持ち良いのがいい。
──もっと、声、聞きたい……。
宮下の声が頭の中に響いて、初めて煙草を吸った時みたいに頭がクラクラした。トランスしたみたいな気持ち良さを、もっと、もっと、と求めてひたすらに宮下を追い上げる。
「かとう、さんっ、出ちゃう、出、ちゃうから、もう……!」
頭に添えられた手に力が入り、反射的に『もっと、掴んで欲しい』と思った。もっと、ギリギリまで追い詰めて欲しい。頭も身体もいっぱいに、宮下だけにして欲しい。
その、倒錯的な欲求ともどかしい快感が身体の中で暴れるみたいで、どうにもならない。どうにかして欲しい……。
「ぅっ……んっ……」
ぎゅっと玉が張り詰め、宮下からギリギリの声がもれる。宮下の身体がビクリと跳ねて、髪をぎゅっと掴まれ頭を抑えつけられる。それだけなのにゾクゾクとした快感が身体の中を駆けた。
口の中の性器が大きさを増したのに合わせて、思い切りのどの奥まで誘い込んで締め上げ、それから吸い上げる。
「っっ……!」
俺の動きに合わせて宮下の性器が跳ね、口中に温かな体液を叩きつけた。
温かくて苦いそれに恍惚となりながら、断続的に吐き出されるそれを全て口内で受け止める。
「っぁ……、はぁーー……」
満足そうなため息を聞きながら、唇で宮下の性器を扱き上げて全てを絞り出す。そのまま飲みたかったのに少しむせた。
「あっ! すみませんっ……」
髪を掴んでいた手を慌てて宮下が離す。そのまま咳いた背中に手を沿わせたて優しく背中を撫でた。
「大丈夫ですか? 口の中……、すみません、出して下さい」
ここでいいので、と大きな手を差し出される。
もちろん、そこに吐き出すことなく、ゴクリと全てを見せつけるみたいにして飲み干した。
愛撫とむせて垂れた精液でべしょべしょの口まわりを手で拭う。
「……飲んじゃいました?」
「ごちそーさま」
夢中になりすぎた自分がにわかに恥ずかしくなって、ちょっとおちゃらけて言う。
「え……、ほんとに……?」
驚いたような声に、さっと血が引いた。
──あ、しまった……引かせてしまったか?
そうだよな、いい年したおっさんの上司にフェラチオされたあげく、精液飲まれたら……、引くよな。『やっちまったな』としょげたけれどもう後の祭り。
「気持ち悪くない? 大丈夫ですか?」
「いや、ごめん……」
「そんな……、しなくてもいいのに、すみません。口、ゆすぎます?」
「ん……大丈夫。俺がしたかったから……」
心配されるのが申し訳なくて言うと、宮下の手が止まる。
「……したかった、んですか?」
「あー……、まぁ、そうだな……」
一応好きなやつだしさ……、と小さく続けて呟く。
「あの……、すみません……」
あ、更に気持ち悪かったか? 宮下に謝られて、なんかもうどうしたらいいのかよくわからなくなる。
その上、実はフェラチオしてただけでめちゃめちゃ感じてたとか、知られたくないけど、気付いてたよな。やっぱり気持ち悪かっただろうか?
「何でそういうこと、言うんですか……。嬉しいけど……、嬉しいんですけど……っ、すみません……。せっかく加藤さんがしてくれたんですけど……、また、勃っちゃいました……」
「へっ?」
「ほんと、すみません……っ。でも、そんなこと言われたら、止まれないじゃないですかっ」
わっと顔を隠して大袈裟に言われ、反射的に今まで咥えていた宮下くんを見ると、確かに……萎えることなくまたゆるっと勃ちあがりかけている。
──よ……かったぁ。引かれたんじゃないのか。
ホッと胸を撫で下ろす。
「……また、そういうこと、言って……」
あれ? 今の、俺、声に出てた?
「俺、加藤さんのこと、ほんとに、ほんとに好きなんですよ。どれだけ好きだったと思ってるんですか? ……もう、知らないですからね……」
手を掛けられた、と思った時にはくるりと視界が反転していた。上に伸し掛かられ抱き締められる。突然の形勢逆転に驚く間もなくくちづけられた。
当然というように、口内に侵入しようとする舌を慌てて唇でガードする。無理矢理唇を離して、そのままくちづけようとする宮下と攻防する。
「んっ……、何でだめなんですか?」
「だって……、嫌じゃないのかよ」
今、口でしてたどころか飲んだんだけど……。
「したの、加藤さんでしょ? したかったって言ったじゃん」
「……でも、宮下は、自分のだろ……」
嫌なわけではないけど、普通、自分のだと思えば抵抗ないか?
「加藤さんと、キスできる方が大事なんです」
言い切って唇を寄せた宮下に「口開けて」とねだられて降参する。なんだか大事な所では主導権を握られて、この年下彼氏には勝てる気がしない。
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