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第16話
寄り添う体温が温かい。
室内は適度にクーラーを効かせているけど涼しい程ではなくて、外に出た時に温度差にダメージを受けない程度にしている。じわりと暑い室温で、本当なら他人の体温なんて暑くて不快なはずなのに、宮下の体温が暑いのに心地よい。
……もっと、くっつきたい。
好きって、こういうことだよな。どんな不快なことよりも、一緒にいることが心地よい。言葉も、心も、身体も、全部が寄り添いたい。
宮下と身を寄せ合って、興味のないワイドショーを見ている。その、しあわせ。
──しまったな。なんか、いい雰囲気になってしまった。まだ朝だっていうのに……。
だけど身体を離すのは惜しい。
「あの……、加藤さん……」
「ん?」
「嫌だったら、言って下さい」
ぐい、と肩が引き寄せられて、顔が近付いた。「え」と声が出る前にくちづけられる。
引き寄せられたことに驚いて、反射的に身体を逸らして逃げる。
「いや、ですか……?」
気弱な宮下の声。
「嫌じゃなくて……」
驚いただけ、の言葉はもう一度引き寄せられて一度目より深くくちづけられた口腔に消える。
何度か交わしたキスみたいな奪うような激しさはなくて、少し控えめに舌が口内を探った。手探りで何かを探すような、慎重さと気弱さ。
あっけなく唇が離れて、もの寂しさに宮下のシャツの胸元を掴むと、ピクリと宮下が反応した。
「朝だし、そんなつもりは無かったんですけど、……隣にいたらそんな感じになっちゃったというか……、たっ……」
焦点が合わないほど近くの宮下の顔が火照っているのがわかる。
「……?」
「勃っちゃった、んです、けど……」
「あー……」
若いもんなぁ、という言葉は飲み込んだ。年を取って、今ではじわりと血の集まる感覚はするものの、完全に勃ってしまう程興奮することは少なくなった。
けど、目の前で宮下に『興奮した』と告げられて、胸から股間から、ぎゅっと血が巡る感じがする。
「もう一回、キスだけしてもいいですか? そしたら一人で抜いてくるので……」
恥ずかし気に告げられて「何でだよ!」と心の中で突っ込んだ。目の前に恋人がいて、そんな恥ずかしい告白までしといて、一人で抜いてくるって!
「……キス、だけなの?」
「だって……、まだ朝だし……」
そう告げられて、心の中で大袈裟に仰け反る。
──なんだそれ! 可愛いかよ!!
「今日は、そういうつもりだったんじゃないの?」
「……!! そうなればいいなぁと思ってはいましたけど、なんか、朝からとか……、悪いっていうか、明るいし……」
──つまりは、怖気づいて恥ずかしくなったってことだな!?
宮下が止まれても、俺は止まれないっての!
掴んだシャツを引き寄せて唇を合わせる。ビクリと硬直した宮下に「キス、するんじゃねぇの?」と聞いてから、今度は宮下の唇をペロリと舐めてやる。
「あ」と開いたところにもう一度口付けて舌を差し込んだ。
おず……と応える舌を舌先で舐めて絡めとる。「んっ」ともれた声に気分が良くなり吸い上げた。
夢中になる。
もっと、もっと貪りたくて、後ろにあるベッドに宮下の頭を押し付けて思う様、口腔内を蹂躙した。いつの間にか宮下に伸し掛かり見上げ慣れた顔を見下ろして、上位に立つ。
宮下の手が縋るように肘にかかる。
絡めた舌を解いて優しく舌を甘噛みすると宮下から「ふぁ」と声がもれ、カッと頭に血が登った。空いている手で宮下の太ももを辿る。
「ん……」
飛び上がり息を詰めた宮下の、中心を服の上から軽くなぞって確認した。
確かに、熱い熱がそこにある。
そのことに興奮してむしゃぶりつきたくなる衝動を、すんでのところで押さえつけた。
──嬉しい。
宮下が興奮してくれている、そのことが嬉しくて身体の中をゾクゾクとした感覚が走り抜ける。
乱暴に奪い取りたいのと、何でもしてあげて奉仕したいのと、相反する衝動の間でクラリとする。
好き勝手に蹂躙されて、はしたなく唾液をたらした宮下の唇を何度もついばむ。そうしているうちに、背中を支えてくれていた腕に引き寄せられて、もう一度深いキスをねだられた。
求め合い、与え合うキスに溺れていく。頭の芯が遠くかすんで、手の中の快感だけでいっぱいになる感覚。
溺れているのが、俺だけじゃなければいい。宮下も一緒に溺れていて欲しい──。
確認したくてキスを止めて宮下の顔を見ると、熱に浮かされたような潤んだ瞳が見ていた。いつもの格好良さからは想像できないその表情に心臓を掴まれる。
どうにかしてやりたくて、どうにかなりそうでフラリと身体を動かした。
張り詰めた宮下の中心を撫でて確認する。
……でっかいな?
細身のチノパンの上からでもわかる張り出した形を、布の上から握るとピクリと動いて硬さがました。期待していたつもりはないけれど、期待以上のものに下半身直結で興奮している。
引かれるか? と少しだけ不安が過ぎったが、それよりも興奮の方が勝つ。
「か…とうさん……!?」
驚く宮下を無視して宮下の股間にかがみ込んだ。
片手で怒張をさわさわと触りながら、もう片方の手でベルトを外し前をくつろげる。張り詰めた性器が圧迫している布はピンと張っていてチャックが下ろしづらい。両手を使ってチャックを下ろし終えると、ボクサーパンツが開放された性器によってフルリと押し上げられた。
……うっわ…! 近くで見るとよりすごい!!
その迫力に圧倒される。すぐにでも直接見たくて、触りたくて、だけどあえて我慢して布の上から握った。なめらかな布越しにドクドクと脈打つのを感じる。凶暴なそれが、たまらなく可愛らしくてゆるく撫でながら、そっと宮下を見上げた。
バチリ、と視線が合う。
期待と興奮の入り混じった表情に、ドクリと心臓が鳴る。期待に応えたくて、期待されてる事が嬉しくて興奮する。
「キス、……こっちにしても?」
「……いいんですか?」
驚いたように言われて、こっちが驚く。いや、完全に期待してるじゃん? むしろ、俺がしたいんだけど……、って、その感じは男が好きでなければわかんないか。
「直接、触っても大丈夫?」
「はい……、お……願い、します……」
「ん……」
許可を貰って、下着の上から先端にキスをした。唇に布越しの温かさを感じる。
たったそれだけのことに、宮下が息を詰めるのがわかって嬉しくなる。
そのままはむはむと布越しに竿を辿り、手で玉袋の柔らかさを確認する。
……固い! それでこっちは柔らかい!!
自分にも付いている物だけど、初めてするのでもないけれど、久々の感触と相手が宮下だというので興奮して頭がクラクラする。そして、手のひらの中のそれがたまらなく愛しい。
ちゅっちゅとキスをしながら、手を使って布越しに竿を扱く。俺の愛撫に反応するそれがたまらなくて夢中で可愛がる。
「か……と、うさん、ちょっ、……直接、触ってください」
夢中になりすぎて催促された。
「パンツ越し、気持ち良くない?」
これはだめなの? と、ぐっと力を入れて撫でて言う。
「い、いですけどっ……」
「うん、いいでしょ」
「意地悪、しないで下さいよ……、もどかしい……。さわって、下さい……、直接……」
「こう?」
ピッタリとしたボクサーパンツの腰ゴムを引っ張ると、期待に震える性器がプルンと飛び出した。
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