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第21話

 クっと指に力が入り押し込まれるその瞬間、柔らかなキスが背中に落ちて、ビクリ震えた。柔らかな唇の感触に驚いた隙に、ツプリと指は窄まりに突き刺さり、身体の内側で宮下指の固さを感じる。 「っん……」  構えたより抵抗なく宮下の指を、身体が飲み込んでゆく。にゅるっと奥まで刺し込まれ、確認するみたいに身体の中を辿る。 「……すごい、キツい……。これ、大丈夫、なんですか……?」 「ん、だいじょーぶ……。それ、入り口、拡げて……。指、三本くらい入ったら、入る、から……」  何とも言えない、違和感をやり過ごして伝えると、恐る恐ると言った風に入口の襞を内側から指が辿る。 「……ふっぅん……」  自分のタイミングではない、その動きに息が漏れた。 「加藤さん、苦しい?」 「苦しくない、大丈夫……。ちょっと、変な感じするけど……だいじょーぶ……」  指はどうしたらいいか分からないみたいに、ゆるゆると出入りする。その気持ち悪い感覚も、気持ち悪いだけで痛くも何ともなくて、これなら大丈夫なのかなんて気もした。  そろりと抜かれた指が二本に増え当てがわれる。一本目はさした抵抗なくするりと飲み込まれたのに、二本となると急にキツくなった。 「んっ」 「キツい……。ほんとに、入るの?」 「……大丈夫、だって……、ちょい待って……」  息を吐いて自然と強張る身体の力を抜き、下腹に力を入れる。 「……動いてる……」  宮下が呟いた。  ……知ってる。艶めかしいその動きに「うわっ」てなるんだ。 「うん……。タイミング、合わせて、な」  下腹に力を入れると入れやすくなる。知ってはいるけど、……知識と経験の乖離がすごい。  普段なら出すための動きで弛めると、むにゅと指が滑り込んだ。 「いっ……」 「痛い、ですか?」 「んっ、だいじょ……ぶ、ゆっくり……」  俺の呻き声を聞きながら、ゆるゆると指が奥まで差し込まれる。入口はキツく入る時だけ辛いけれど、入ってしまえば入れる時程苦しくはない。それでも、吐息はもれる。 「ぅ……」  吐息が漏れれば、自然と腹に力が入って指を締め付けたりする。一本目と違う、違和感。穴が拡げられている感じが排泄感に似ている。 「くっ……ぅ」  ぎゅっとシーツを握って我慢した。根本まで差し込まれた指が中でうごめいて、ゾワゾワとしたものが登ってくる。  ……気持ち、悪い……。  ふ、と背中の気配が近付いて、握り締めた手に長い指が重ねられる。 「辛いです?」  背中が重なり、耳元で囁かれる。 「……少し」 「痛い?」 「痛くは、ないけど……、ちょっと、怖い……」 「手、握ってたら少しは平気ですか?」  上から重ねた手にきゅっと握られて、ほっと息をつく。……こんなことで、本当に平気になってくるから不思議だ。 「……ん、握ってて」  行為に怯えて凍えたままだった心臓が、トクリと動き出したような気がする。  宮下の指はゆっくりと出し入れしながら、俺を内側から押し広げていく。気持ち悪いだけだったその感触に妙な高揚感が加わった。 「ふっぅ……ん……」  宮下はその違いを見逃さずにうなじにキスを落とした。 「っぁ……」  そこに、ゾクゾクとした快感の欠片をみつける。ぺろりとうなじを舐め、甘噛みしてはまたキスをする。それに合わせて「ぁ、ぁ……」と小さな声がもれた。  股間にゾワゾワ熱が集まり始める。それを逃したくなくて自分の性器に手を伸ばし、まだ柔らかなままのそれに触れた時、ピクリと反応してきゅっと後ろを締めた。  変わらずに指は気持ち悪いのだけど……、首筋から背中へと辿る宮下のキスと自分で握った性器と、その感覚に意識が集中する。力を失っていたそれは、あっという間にゆるりと立ち上がり始める。 「ふ……ぅんっ」  自分の声だと信じたくないような甘えたような声が聞こえた。  ……うっわ……、これ、俺の声?  頭のどこかで信じられない、と驚いている。けれどその声に興奮した自分もいる。 「かとーさん……、もう怖くない?」  優しい声が耳元で響いた。何だか、音が遠い……。 「へーき……ぃ……」  コクコクと頷いて返事をした。いつの間にか性器は力を増して快感を訴え始めている。 「……中、気持ちいいところ、ありますか……?」 「ん……、まだ、わ、かんな……、ぁ……」 「このへん?」 「……ま、えのほう……だけ、ど、……わかん、な……ぅ」  中から胎を押されてじりじりと焼け付くみたいな、そんな感じがする。もう気持ち悪くはないけど…… 「ゃっ……、それ、もう……、いっぱいだから……」  やめてと言いたいのに、宮下の手は気持ち良くなる場所を探して動き回る。 「かとーさん、声、可愛くなってます」 「んっ」  耳元に囁かれるとピクリと背筋が反応する。宮下の声は、遠くに見えている甘い快感を呼んでいるみたいだ。 「っぁ……」  なんだ、今の感じ……?  思わず声がもれ、ピクリと身体が跳ねて背中がゾワリとした。思わず手にも力が入り、重ねた宮下の手がぎゅっと強く握る。 「今の、ところ……気持ち良かったですか?」 「わ……かんない……」  宮下の指が、一瞬何かを掠ったその場所を執拗に撫でて探った。  ……何かがそこにある。  だけどそれが何か分からなくて快感なのかどうかも分からなくて、ただそこに意識が集中する。  抜き挿ししながら中を探られて、息が荒くなる。  ハッ、ハッ、と無意識に短い息を吐きながら、近くにある『何か』を追いかける。 「かとうさん」  名前を呼ばれて、何かが跳ねた。 「あっ! ぁ、ぁ……ぅうぅっ」  口からそれまでと違う声が飛び出る。 「……かとうさん?」  いきなりの反応に、驚いた宮下が再び名前を呼ぶ。けれど、もうそれどころじゃなかった。  何かがそこにある。気持ちいいのかどうかは分からないけど、夢中になる、何か。 「この辺、ですかね……?」  宮下の指が、今反応した辺りをぐにぐにと捏ねて探る。 「ぅっ、ちょっ、それ、ダメ、ダメだって……、ダメって……、あっ」  俺の反応に宮下が増長して、ここぞとばかりにその場所を責めてくる。 「かとうさん、自分の手、止まってる。手も動かして下さい」  耳元に囁かれてダメダメと頭を振るのに「一緒にしたら、気持ちいいですよ」って言われて理性が飛んだ。  明らかにさっきより硬度を増しているそれを、握って刺激する。  ……けど、ダメだ、これ……。止まれない……。 「ぁっ、ぁっ、ぁ」  中から外から気持ちいいところばかり刺激されて、昇りつめたくなる。 「みやした、これ、ダメっ、ぁっ、みやしたっ」  名前を呼ぶと、あやされるみたいに強く手を握られて……。 「あぁっー……」  自分のものだと思いたくないような声を上げて達した。

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