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第68話
「んん～？」
甘えた子どもが寝ぐずりするみたいにむずかってイヤイヤをする。平日とか用事のある時なら困るそれも、ゆっくりできる時なら可愛く見えた。
「奎吾」
もう一度呼んだら、にゅと伸ばされた腕に頭を引き寄せられて、もう一度軽く頬にキス。
もぞもぞと動く宮下に、おはようと声をかける。
「…よ……ござ…ます……」
全然起きられていないあいさつ。まあでも、それも悪くない。引き寄せられるまま抱きしめられて「朝だぞ」って呼び掛ける。少し動いては止まり、止まってはまた動いて……。
「起きた？」
「……なんじ？」
「九時過ぎ。起きる？」
「ん……、起きます」
寝起き独特の掠れ声でそう返事をする。
パチパチと目を瞬いたり、頭をふったり、起きようとする仕草を眺めて、時おり鼻先や頬にキスをしてやる。その度に宮下は「ん」てキスを受け止めて、それからぎゅっと俺の頭を抱いて唇にキス。
ちゅ、ちゅと何度もキスをしたあと唇に噛り付く。俺が嫌がって逃げたら、ぺろりと唇を舐められて、それから舌先が忍び込んだ。
はぁ、と唇をはなして大きくため息を吐く。連日あれだけしていても、宮下に舌を吸われると背中がぞわぞわする。
平たく言えば気持ちがいい。
もともとキスは好きなんだけど、宮下のキスはその時々で表情が変わって何度でも俺を夢中にさせる。
寝起きの今みたいに齧り付かれた後は激しいのかと思えばひたすら柔らかくて優しくて。気が付いたらふわふわしてすがり付きたくなっている。かと思えばセックスの前とか最中は、乱暴っていうか強引に口内を探られて喰われるみたいに思うこともある。
今もぼんやりとしてきて、ちゅ、と吸い付く音を残して唇をはなす。最初は俺が優勢で仕掛けたはずなのに、気が付いたらベッドの上に引き上げられ、形勢逆転されて抑え込まれたまま口の中を好き勝手に探られていた。
その名残惜しさに、んぁと小さくのどが鳴って知らずに掴んでいた宮下のシャツの袖をぎゅっとにぎる。
「ん、」
キスの間に目が覚めたのか、宮下がもう一度唇に音を立てる。こっちはいきなりトロトロにされているっていうのに、ケロリとした表情が悔しい。
「目、覚めました。……けど、加藤さんの方がトロンとしてますね」
「……だれのせいだと」
「俺、ですね？」
はは、と笑ってもう一度ちゅと唇にキス。それからもう一度おおい被さるみたいに。にわかに性的な感触のするキスに、勃った？と聞いてみる。
「朝なんで」
「えっちなキスするしな？」
「加藤さんがね」
そう言ってもう一度、ちゅ、と音を立てる。
「えっちなのは奎吾がだろ」
そう言ってやると、目をぱちくりとさせて小さくそうだったと呟く。それから、
「梗平さんが、えっちな声だすからですよ」
「それは奎吾のせいだろ？」
「……そうでした」
言いながらもう一度キスして、ぎゅっと抱き締められる。
「あー…、名前呼び、やばい……」
「やめる？」
「やめない」
宮下はそう言って首筋に顔をうずめ、ぐりぐりと額を押し付ける。それからもう一度つぶやいた。
「……やばい。すげぇ好き」
その言葉にぐっときて、俺も好きがあふれちゃうよって心の中で言う。声にしたら泣き声になりそうで、代わりに押し付けられた髪にキスをする。
それから宮下の腕から抜け出した。
「じゃあそんな可愛い奎吾にサービス、な」
そのまま身体を下げて、布団の中の宮下の性器に手を伸ばす。それは朝らしくピンと元気に勃っていて、その愛らしさに思わず小さな子を撫でるみたいに、いいこいいこする。
「あ」
頭上でこぼれた宮下の声に、頭の中がぞわりとする。なんていうか声だけで愛撫みたいなそんな感じ。頭ごと布団の中にもぐり込んで、下着の中に突っ込んだ手をゆっくりと動かしながら取り出してその先端にキスをする。
ピクリと動くのが可愛くて、何度もちゅ、ちゅとキスして、それからぱくりと咥え込む。ほのかに苦くて甘いその味に背筋がぞわぞわとする。
「梗平さんも……」
布団の外に残した足から尻を撫でられて「俺はいいって」と尻を揺らした。寝起きは生理現象だし勃つけれど、さすがに連日朝晩追い上げられるのは体力がもたない。
「梗平さんが気持ち良くなってるの、みたい……」
それでも触れてくる手を拒否していると、宮下が心なししゅんとしてそう言った。まあ、その気持ちはわからなくない。というか、俺もそれが見たくて今こうしているわけだし……。
それで、その姿を見るのが何よりも気持ち良かったりする。
「……きもちーよ、こうひてるだけで」
「でも……」
もごもごと口に含んだまま言っても納得しない宮下に、じゃあさ、と提案する。
「髪、触って。それで動かして。……そしたら、もっときもちいーから……」
そう口にするだけで、高揚感にからだがふるえる気がする。俺の言葉にぐっと大きさを増した宮下に、また興奮してずくんと身体の中が疼く。
掛け布団がはぎ取られて、熱かった空気がすっと冷めた。けれど暖房の入った部屋で熱くなった身体にはその方が気持ちいい。
「起き上がってもいい？ ……ちゃんと、見たいです」
さわ、と耳元を撫でられて、ん、と性器を含んだままでうなづいた。片腕をついて起き上がる動きに合わせて体をベッドの下におろし、宮下をベッドのふちに座らせる。
動いた拍子にぐっとのどの奥に性器が当たって、くぐもった声がこぼれた。そんな声にさえ宮下は素直に反応して、それに嬉しくなる。宮下の反応全部に恍惚として、苦しささえも気持ち良く感じた。
支えた手がそっと俺の頭を前後させる。優しく触れるのもいいけれど、物足りなくて自分から奥まで入るように吸い付く。ぐん、と天を衝くそれが上顎をなでてのどを突いた。
宮下の息が荒くなって前後させる手に力が入り、動きが激しくなる。のどに当たるたびにうっと喉がつまって、宮下の先端を締め付けた。
そうされるのが気持ちいいことを知っていて、宮下がその気持ち良さを味わっているのかと思うと、それだけで身体がふるえる。自分のからだが宮下に快感を与えているという快感。
ん、とのどが鳴ると口の中の性器が一段と大きくなる。口の中にめいっぱい詰め込まれて自由の効かない舌を性器に添わせて刺激する。飲み込むことを諦めた唾液が口の端を伝った。
じゅ、と動きに合わせて鳴る音が徐々に早くなるのを、どこか遠くに聞いた。苦しさと気持ち良さで頭の中がぼんやりとしてきたころ、ぐ、と奥まで押し込まれた。
あと宮下が声をもらし、きょうへいさんと名前を呼ぶ。
「っ……、イキそっ」
荒々しくなる動きに従順に従ってえづきそうになりながら、ほぼんやりと考える。
もうすこし、あと少しでイク……。
「ぁ、イク」
素直にそう申請して抜き出そうとするのを追いかけて、腔内で吐き出される体液を受け止めた。びくびくとふるえながら絞り出すそれを、すぼめた口で全て受け止める。口の中に溜まった体液のあたたかさにうっとりした。
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