76 / 79

第76話

 ふにゅり、と唇にやわらかな感触。  あたたかなそれが気持ち良い。はむはむと唇をかまれるのがくすぐったくていやいやをする。  くるりとまるまると、うしろからぎゅ、と抱き込まれた。体格は俺の方がいいはずなのに、長い手足に絡み付かれると、自分がちいさくなったような気がする。  身体を添わせて、額を肩口にぴたりとくっ付けて。  守られているみたいに抱かれていると気持ち良くて、離れた唇の寂しさも忘れてしまう。とくとくと背中越しに伝わる心臓のおと。  少しだけ落ち着かないそれが、俺の鼓動とリンクして、その鼓動を数えているうちにまたふわりと眠りに落ちていく。  あたたかいものに包まれていた。ふわふわと全身をなでられて、あいされている、みたいな感覚に頭の中もふわふわと浮いているみたいな気がする。  なんだか全身をゆるゆると愛撫されているようなそれは、自分が小さな子どもになったようだ。ぴりと頭のてっぺんからつま先まで、しびれが走る場所をしつこく撫でられて、身体をねじらせて逃げる。  けれどそうすると、またつぎのぞわぞわとする場所をあたたかいものが這って、ぴくぴくと身体をふるわせた。そうして気をとられているうちに、別の場所を愛撫されて、身体の中からとろけさせられていく。  あっちもこっちも気持ち良くなってふるえていると、唇に何かが触れた。  あ。と開いたくちに、細く手長いものが忍び込み、舌をつまんでこねる。ふだんされることのない刺激に、びりびりと電気がはしった。  あ。とまどって上げた声は、さしこまれたそれに阻まれて、くぐもった呻きになる。  好き勝手にくちの中を触るそれに舌を絡めると、ぞわぞわとからだの芯までしびれるようで、舌をこすりつけて愛撫をねだる。ぐい、とおくまで突っ込まれて、くちのなかをばらばらに撫でられると、そのままならない動きに喉がつかえた。  たらりと口端によだれが流れるその感触さえ、ぞわぞわと頭の芯までひびいてくる。  くちの中を犯していたそれがぬるりと抜け出すと、意識がそこから離れて、腰からのとろけるような快感に気が付いた。  長い指が性器に絡んでゆっくりとやわらかくこすり上げている。あたまの中をとろけさせるぴりぴりとした快感は止まらなくて、はぁ、と熱い息を吐く。  息つく間もなく、ぬるりと胸の突起に唾液をぬりつけられて、腰がふるえた。くるくるとまわりをなぞりながら、ときおりその先端にふれる。  小ぶりだったそれは、そうして愛撫されるようになった半年ほどの間に少し成長して摘まみやすくなった。いまも先端をこごらせて、次の愛撫を待っている。じりじりと焦らす動きは耐えがたくて、腰をふるわせて触って欲しいとねだった。  くねくねと動きながら腰を引くと、後ろのあたたかい壁にぴたりと身体がくっつく。尻のうしろ、布越しに感じる熱いかたまりに、からだの真ん中がきゅうっとして、じん……と身体が熱くなる。  どうにかして欲しくて身をよじると、刺激を待っていた胸の突起をぎゅ、と摘ままれて、びくりと身体がはねた。摘まんだ指はすぐに離れて、またぬるぬると唾液をぬりつけて先端をはじいて遊ぶ。 「んぅ…、や……」  やめてと頼むけれども、当然指はそこで遊ぶのを止めてくれなくて、びくびくと身体をふるえさせながら、逃げようとした。逃げるその動きで、尻のうしろの熱いかたまりを育てて、その感触にまたびくびくと身体がふるえる。そのうちに強すぎる刺激に慣れて、胸からの快感をすなおに受け取って、ぁ、と小さな吐息を落とした。  ぼんやりと気持いいぬくもりに身を任せる。抱きすくめられて与えられる快感はぬるくて、ぬくぬくとそれに浸って心地よさに沈んでゆく。  きもちいい……。  うっとりと眠りと覚醒の間をただよう。ぼんやりとした意識は起きることを拒否していて、いつの間にか下着を下ろされていたことにも、ぴたりと後ろに当てられたそれが素肌になっていたことにも気付かなかった。  あたたかいそれが、横向きに寝ている股の間にぬるりと入り込む。その瞬間もくすぐったいと身をよじっただけで。だから、ぬくぬくと何度か往復させて育てたそれを、そこに押し当てられたときも、その意図に思い至ることはなかった。  ぐ、とその場所をやわらかく熱いもので押されて、いつものように反射で下腹に力をいれてその場所をゆるめる。今にも押し入ろうとしているそれが、その動きを見逃すことなんてもちろんなくて。ぐ、ぐ、とその肉塊が身体の中に押し込まれてゆく。  身体の力は抜けて慣れてもいるのに、それでもまだきつい肉輪をこじ開けられる段になって初めて、いま、自分がされていることに気付く。 「んぅ……、な…、ど、して……ぁっ」  後ろから抱いて、その身を中に沈めようとしている宮下は何も言わず、ただ腰を掴まれた手に力が入る。  夢と現実の間をたゆたっていたうちに施された愛撫は、的確に身体の中をむしばんでいて、腰を掴まれた、それだけなのに身体はびくびくとふるえて、思わず声がもれる。 「ぁっ……」 「……はぁっ」  うわずったような俺の声に宮下の吐息がかぶさって、その満足そうな響きに脳が快感をうったえた。気持ち良さそうな宮下の声の響きが、堪えきれない性感を引き出していく。  肉輪を抜けた先端をぐいぐいと奥まで押し込まれ、耳元で荒く息を吐かれて、抗いがたい感覚が一気にからだを侵食する。  びくん、  身体が大きく跳ねて、背中を大きく反れた。  声にならない快感は一度で終わらずに、何度も俺の身体をふるわせる。自分でも全く制御できなくて、手に触れていた布団をぎゅっと掴んだ。  大きな波が去ってもびくびくとふるえる俺に、宮下が耳元でささやいた。 「きょうへいさん、きもちいい?」 「んんぅっ……。おま……、なん、で……」 「だって、触ったら気持ち良いって寄ってくるから……」 「だからって」 「だって、ほらっ……」  ぐ、と腰を使われて、あ、と、またうわずった声がでる。 「きもちいいでしょ?」 「ぁっ……、それと、これとは…っ、ぁ……」 「こっちも、とろとろ……」  腰を掴んでいた右手が離れて、前に回される。ぐ、と宮下が腰を突き入れると、ベッドのスプリングが軋んで、その反動でゆらゆらと身体がゆれる。  その揺れに合わせて、立ち上がって反り返っている俺の性器も揺れて、宮下の手は的確にそれをとらえた。ひらいた手のひらで掴み、さわさわと竿をなでて親指の腹で先端にある敏感なくぼみを押さえる。  つぷりとあふれている透明な体液をそのままそこに塗りこめられてびくびくと身体がふるえ、あぁっとうわずった声が出た。そのはずみできゅと中が締まって、はぁ、と満足そうな宮下の吐息が首にかかる。 「きょうへいさん、きもちい……」  心底気持ち良さそうな宮下のこえが、どろりと俺の中をとかしていった。

ともだちにシェアしよう!