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【番外編】おやすみとおはようと~200日目のプロポーズ(第二夜)

 唇で先端と茎の段差の部分を、手で根元をそれぞれ扱かれ、(ふくろ)を優しく揉まれると、言葉にできないほど気持ち良い。じわじわ、足の裏と腰がこそばゆいような感覚が湧いてくる。俺は、大きく溜め息をつき、暫し至福の時を味わった。  ここまで来たら、彼のことも気持ち良くしてあげて、身体を繋げたい。俺はむくりと上体を起こし、彼の肩を優しく掴んで引き起こす。 「……ありがと。めっちゃ気持ち良い。今度は俺にもさせてよ」  (まなじり)と頬を染めた彼は、少し拗ねたような表情だ。何でだろ? いつになく積極的だったから、照れてるのかな? 彼のパジャマを脱がせて仰向けにさせる。あまり時間をかけすぎても怒られるかなと、まずは肝心の下半身に触れてみると、なんと、後ろが既にスタンバイ状態ではないか! 驚きながら彼の顔を窺うと、バツ悪そうに赤面している。 「……今日、付き合って二百日目じゃん? だから、早く帰ってきたらお祝いしようかと思って」  とんでもなく可愛いことを、少し怒ったような表情で文句みたいに言っている彼に、俺も嬉しさ半分・困った半分で言い募る。 「ええーっ! そうだったの? 半年とか一年は俺も意識してるけど、ごめん。二百日は意識してなかった。……言ってくれたら良かったのに。もし知ってたら、全力で早く帰って来た」  記念日エッチしようと意気込んで準備して、俺の帰りを待ちくたびれてTシャツ握り締めて寝ちゃうなんて。どんだけ可愛いんですか俺の彼氏は。  プイと目を逸らした彼の頬に口づけ、甘く囁きかけた。 「めちゃくちゃ嬉しい。ごめんね、俺、覚えてなくて。その分、きもちくなってもらえるように、頑張るから」 「……そんなに頑張らなくて良いよ。あんまりすると、疲れちゃうから」  結局いつものツンツンモードか。まぁ良いや。それくらいで今夜の俺は(くじ)けない。彼をうつ伏せに転がし、ご機嫌を取るようにつむじに素早くキスを落とし、肩を揉んだ。 「射精すると疲れるんだっけ? あんまり前を刺激しなければ大丈夫?」  まずは仕事でお疲れの彼を労わるべく、肩から背骨に沿って、彼の背中のツボを揉みほぐしていく。 「ゔぁーっ! 翔琉、そこ。そこ気持ちい」  まるで色気のないリアクションに苦笑しつつ、俺は手で温めたローションを彼の背中に伸ばす。 「……これ、もしかして」 「そそ。目的外使用だけど、気持ち良いでしょ?」  エステかマッサージのように、丁寧に凝ったところを解していくと、彼は時折呻き声をあげる。肉体労働だからなぁ。怪我してる患者に触るから、気も遣うだろうし。腰まで揉んで、そのまま尾てい骨を滑る指先で撫でる。 「あっ、はぁっ……」  声が色めき、腰が浮いた。そのまま彼の小さく引き締まったお尻を揉み、左右へと押し広げる。 「やだ……。そんなとこ、まじまじ見るな……」 「恥ずかしいところ、俺にだけ見せてくれるんだって思うと、嬉しいし興奮する」  わざと水音を立てるようにそこに口づけ、円を描くように舐める。 「や、ああ……っ」  言葉だけは抵抗するようだが、顔はベッドに伏せても、腰は上に突き出され、もっとしてと言わんばかりだ。身体のほうがよほど素直だ。舐めながら手を前に回すと、そこは既に固くなり始めている。あんまり刺激しないって約束したから、そこはするっと軽く撫でるだけ。舌を強く押し付けると、ひくひく蠢いている。なんとも卑猥だ。 「エッロ……。樹生、最高だよ」  自分の声が、欲情を含んで湿り、重く低くなったのを感じる。下半身が怒張して、前を寛げただけのズボンが邪魔だ。俺はもどかしげに下着も纏めて一気に脱ぎ捨てた。  改めて樹生の身体に向き合う。舌舐めずりをしながら、ひくつく蕾に指を差し入れた。ゆるっと指を抜き差しして、彼の良いところを優しくさすってやると、彼は甘い溜め息を漏らしている。 「……翔琉。そこ」 「そう、ここだね。もっとする?」 「ん」  彼は俺の言葉にコクリと頷き、ようやく素直に自分から愛撫をねだった。事前に準備していただけあって、柔らかく解れているから、挿入した時に絶頂を極められるように快感を高めることに専念する。男の恋人は樹生が初めてだが、「同じ人間だし、俺自身が男だから、たぶんそんなに違わないだろう」なんて、たかを括っていたことを今は認める。男同士で抱き合うのは、けっこう大変だ。アナルセックスで気持ち良くなるには、時間や経験が必要だと樹生から教わった。  だから、前戯は優しく丁寧にする。美味しい料理を作るときの下(ごしら)えみたいだなと思う。今日は樹生の事前の仕込みがあるから早い。そろそろ大丈夫そうだとは思うけど、なるべく俺からは「もう良い?」と催促しないようにしている。『気にしぃ』の彼が、本当はまだ足りないのに遠慮して頷いたら嫌だから。樹生からは、「何で毎回僕に言わせるんだ」と不満をぶつけられたことがあるが、俺なりの理由を説明したら、頬を赤らめながら納得してくれた。  とは言え、時々は我慢できなくてフライングしちゃうんだが。

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