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再インストール(5)

 神里の唇はミントの味がした。  昴の鼻と舌はハミガキの味だと判別する。しかし、自分もおなじハミガキを使っているのにバージョンがちがうような気がする。  これは神里バージョンの味だ。  神里バージョンの舌が昴の上唇を舐めていた。昴は誘われるように唇をひらく。ミントの匂いがする舌が中に入ってくる。一瞬前の昴の頭の中は見られてはいけないところを見られてしまったという思いで凍っていたのだが、舌が触れたとたんに溶けてしまった。  唇をあわせたまま神里の腕がうしろにまわり、昴は応じるように背中をのばした。そのとたん尻に入れたものがぐっと奥を突いた。  あっ……のけぞりそうになった体を神里がつかんだ。  前立腺というものがあるのだと最近の昴は学んでいる。そこを刺激されると―― 「は……んっ」  神里の腕に捕まえられたまま、昴は自分の尻に手を伸ばす。アナルビーズの端の丸い輪に触れると、神里の目が大きくひらくのがわかった。 「……みるなよ」  昴は息を吐きながらなんとか口に出す。神里が居眠りするのが悪いのだとぼんやり思う。同時に、無防備に眠る同居人をみてオナニーしたくなってしまったことを後悔する。 「それ、何」 「……大人のオモチャ」 「気持ちいい?」  昴はどう返したらいいかわからない。なんなのだこいつは。そう思った時には背中を押され、ベッドの上で壁に肩を押しつけたまま、足を広げてしまっている。全部さらされていると思うまもなく、神里が上にのっかるようにしてキスしてきた。  今度はミントの味はしなかった。神里の匂いだけが鼻を抜け、舌がからまって、くちゅくちゅ鳴る。唇をあわせたままペニスを握られて、あっと思って腰をゆすったとたん、まだ尻に入ったままのものが中を強く刺激し、電撃のような快感が走った。 「はあっ、はっ……かみさと……」  呼ぶのと同時に、ズボンをはいたままの神里の股間が昴の腹に押しつけられた。勃起しているのがわかった。昴は神里の顎をつかむ。 「脱げよ」  神里は黙って昴を見下ろすとトレーナーを脱ぎはじめた。神里は一時期、腹が出るのを気にしていたはずだ。そんな心配がどこにあるのかまったくわからないと思いつつ、昴は尻に手を伸ばす。アナルビーズを抜きたかった。ところが神里の手がまた邪魔をする。 「抜く?」 「さわ――あああっ」  神里の手が動いたとたん思いがけず大きな声が出て、昴は目をつぶり、口を覆った。他人にされたほうが感じてしまうのだろうか。目をあけると神里の顔がみえた。喉仏が上下している。昴に触れる裸の胸はさらりと乾いていた。腰をすこし持ち上げられ、何もなくなったはずの尻の中に別のものが入るのを感じた。神里の指だと思った時、胸がぐっと密着する。おたがいの濡れたペニスが触れて、また声が出そうになる、というか出てしまう。 「あっ……んっ……」  腹のあたりを擦る感覚がたまらない。どうしてこんなことになっているのか、なるべくしてなっているのか。もうどうでもいいような気がしてきた。 「神里、そのへんに……あるから」  やぶれかぶれな気分で昴はいう。 「何?」 「ゴムと濡らすやつ」 「濡らす?」 「おまえが嫌じゃなければいれて」 「昴」 「指で弄られると半殺しにされてる気持ちになる」  半殺し? というつぶやきにかまわず、神里の手が離れると昴はシーツをむいてうつぶせになる。首のうしろに息がかかり、神里は昴の耳を舐めはじめた。そんなことをされたのは初めてで、ぞわぞわと背筋を走る感覚に耐えていると、体のあいだで濡れた音が響いた。指ではないものが尻に押し当てられる。あっ……と思ったとき、神里が中に入ってきた。  衝撃で短く声が出て、シーツの上に唾液がこぼれた。痛みは感じなかったが、串刺しにされているような気がする。  神里の手が背中を撫でてくる。胸の方まで手が回って、乳首を弄られるうちに尻の中が楽になってきた。ぴったりと――すごくぴったりとくっついている。  ほっとして息を吐いたとき、密着した腰を揺さぶられた。そのとたんまたもや電撃のような快感が走った。 「あっ、待って、あっ――」  さっきとちがって快感は一度でおわらなかった。神里が動くたびにびくびくと何度も襲ってくる。いつのまにか昴は神里にあわせるようにゆっくり腰をゆらしていた。 「昴、やば……いい……」 「あっ、あうっ、んっ、ああっ」  卑猥な声がきこえていた。パソコンから流れていると思っていたが、薄目をあけてみた画面は暗くなっている。

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