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第3話 (ややR18)
初めて玄さんの家に行った時、僕は驚愕した。
だって、可愛い子どもが、ちょこんとリビングに座っていたからだ。
「パーパ?」
「おう。有玄」
僕の一縷 の望みは打ち砕かれた。この子は知り合いの子か、もしかして先日のお姉さまの子かなー、なーんて最後の希望を託していたのだが、どうやら真実に玄さんの子どものようだった。
名前も玄さんと一文字揃っている……。
僕が立ったままで強張っていると、玄さんが苦笑して言った。
「ごめんね。何と説明したらいいか解らなくて、君を連れて来るのが一番だと思った」
玄さんは結婚指輪などしていない。それは嘘ではなく、家に奥さんの陰はどこにもない。
しいて言えば、棚のところに一枚だけ、三人で撮った家族写真のようなものがあった。あれが奥さんだろうか。
「俺の奥さんだった人は、この子を産んだ後にすぐに病気で亡くなってしまったんだ。だから俺は独身なんだけど、子どもがいるっていうのは中々言いにくくて」
ちなみにこの時、僕はまだ玄さんと恋人同士にはなっていない。体の関係もない。
僕はうきうきして玄さんの家に行ったんだけど、それどころではなかったという話だ。
「ちなみに俺は昔からバイで……男の人も好きだ。君のことはすごく可愛いと思ってる」
ソファに座り、子どもを膝で遊ばせながら何てことを言うのだろう。だが玄さんは平然と、はっきり言ってのけた。有玄くんは膝の上で機嫌よく遊んでいる。
「ところで『ゆうき』ってどういう字、書くの?」
唐突にそう聞かれて、僕は何も考えずに「えっと、有限の有に……季節の季……」と答えた。頭の中はまだ混乱していてそれどころではなかったのだ。
すると、玄さんはニコッと笑って言った。
「そっかあ。じゃあ、有玄の有とおんなじだな」
そう嬉しそうに言いながら、有玄くんを見下ろしてあやしているものだから、僕はまたときめいてしまった。大人の男なのに、無邪気。僕はそのギャップに完全に堕ちてしまった。
「……はぁ、……げ、玄さんっ」
「しっ、有季くん……。……気持ちいい?」
「あっ、あっ……、気持ちいいですっ……うっ!」
僕たちはその日にリビングで、有玄くんが寝ている間に互いを触り合った。
時間がかかるから本番こそしなかったけど、玄さんのを触ったり、僕のを触られたり。
上の服を開けて、胸や腹を触ったり。唇でへそをなぞってみたり。甘噛みしてみたり。
ひととおり終わって、互いの身体を重ねていると玄さんが言った。
「落ち着かなくてごめんね。今度は、ホテルにでも行こう。姉さんが有玄を見てくれる時もあるから」
「はい……」
僕は玄さんの裸の腹の上でこっくりと頷いた。
ろくな経験もない僕が、まさか子持ちの人と恋愛することになるとは思わなかった。
でも、玄さんは僕に有玄くんを会わせてくれた。玄さんが僕のことを誠実に扱おうとしてくれているのを感じて、僕は玄さんとの恋愛を始めることにしたのだった。
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