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①:3
体育倉庫は、体育の授業を外でやるときに使う建物だ。
中には色々な用具が入っていて、面積は広いけれど、結構狭く感じる。
そんな体育倉庫は授業が無い放課後。まず、人が来ない。
オマケに鍵はボクが借りているこのひとつと、スペアキーがひとつだけ。しかも、スペアキーを持っているのは夜に学校の点検をする警備のオジサンだけだ。
つまり、今ここでボクが内側から鍵を閉めたら? そう、答えは簡単だよねっ?
──夜まで誰もここに来ないだろうし、誰も入ってこられない。
「真宵君。……やっと、二人きりになれたね……っ?」
体育倉庫に真宵君と入り、ボクは内側の鍵を閉める。振り返ると、端正な顔立ちをした真宵君が、眉をひそめていた。
ボクは倉庫内にある椅子に座り、立っている真宵君を見上げる。
──そして、自慢の愛らしい笑顔を浮かべてみせた。
「──なんでボクを見下ろしてるの?」
その言葉に。
──真宵君は瞬時に、跪いてみせた。
「申し訳ありません!」
「って言うか、教室での態度もなに? 照れ隠しにしても、失礼すぎじゃない?」
「申し訳ございませんでした!」
頭を垂れて。土足で使われているから土で汚れている床に、真宵君は制服のズボンが汚れるのも気にせず、膝を付けた。
ボクは靴の先で、真宵君の顎を持ち上げる。
「……あれ? なに、その顔」
真宵君の顔をボクの方に向かせてみた。
ボクを見上げる真宵君の表情を見て、ボクは──。
「──ぷっ、くくっ! あっははっ!」
──思わず、笑ってしまった。
真宵君は、目尻をだらしなく下げ。唇を、だらしなく半開きにしながら。
……恍惚とした表情で、ボクを見ているのだ。
「だらしな~い。キモ~イ」
そう言い、ボクは真宵君の綺麗な首を蹴り飛ばした。
「ゲホッ!」
突然の痛みに、真宵君が苦しそうに咳込む。
……そう。これこそが、ボクの本当の姿だ。
天使? 姫? 男の理想? なにそれ。なんて、なんてくだらない評価だろう。
そもそも『こころちゃん』という呼称も、反吐が出る。
体育倉庫の片付け? そんなもの、テメェでやれ、ドカス。
そもそも、あんなブ男たちがボクに馴れ馴れしく近付いてくること自体が、不愉快なんだよ。お門違いとは、まさにこのことだ。お里が知れる。親の顔が見てみたいものだ。
ボクはボクが認めた人にしか、関わりたくないし触れたくない。
……例えば、そうだな。
──今ボクの目の前にいる、高貴で高潔な、真宵君みたいな人とか。
キレイで美しくて、触れたら壊れてしまいそうなほど脆そうで、足跡ひとつない新雪のようなこの人になら、触れたいって思える。
……壊れてしまいそうなのに、触れたいのかって? むしろ、そんな印象だから触れたいんだよ。
──このキレイな人を、グチャグチャにぶっ壊すのが楽しいんだからっ。
「痛かった? ごめんね、大丈夫?」
椅子に座ったまま、むせている真宵君を見下ろす。
真宵君はすぐに姿勢を正して、ボクを見上げた。
「いえ、大丈夫です!」
「本当に? 喉とか、ケガしてない?」
「大丈夫です!」
「でも、心配だよ……っ」
ボクは悲しげに眉をひそめて、立ち上がる。
跪く真宵君の目の前に立つと、ボクはズボンのベルトを外した。
「──ボク自身で確認してあげる」
チャックを下ろし、萎えているブツを取り出して。
──真宵君の口元に、押しつけた。
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