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①:12
気付けば、すっかり日も暮れていたらしい。学校に残っている生徒もかなり、減っていたようだ。
真宵君と一緒に、職員室へ体育倉庫の鍵を持っていく。
すると、ボクたちに掃除を命じてきた先生が驚いた様子でボクたちを見た。
「真宵、随分と制服が汚れてるぞ。……大丈夫か?」
土だらけの制服を見下ろして、真宵君が先生に答える。
「物を片付けていた際に、用具の汚れが付着したようです。見た目は派手ですが、問題はありません」
「そうか? ちなみに、佐渡は無事か?」
「重たい物が持てなくて、真宵君にいっぱい頼っちゃいましたっ」
そんな雑談を交わして、ボクたちは職員室を後にした。
教室に着くと、ボクは真宵君を振り返ってニッコリと笑う。
「今日は本当にありがとう! ボク、すっごく助かっちゃった!」
ポケットの中から飴玉をひとつ取り出し、真宵君に差し出す。
しかし、真宵君は受け取らない。
「別に」
素っ気無くそう言うと、自分の席に座ってから帰る準備を始めた。
ボクは自分で飴の包みを開く。そしてわざと、教室の床に落とした。『コツン』という、飴が床にぶつかった音。そんな音が響いてから、ボクは小さな声で呟く。
「──こうしないと受け取らないなんて、ホント、気持ち悪いな~……」
床に落ちた飴を、力一杯踏みつけ。粉々に砕いてから、歩き出す。
「真宵君、また明日~っ」
それだけ言い残し、ボクは教室に真宵君一人を残して、家に帰った。
* * *
翌日。
教室には、飴の欠片ひとつ残っていなかったし。ボクの靴底にくっついていた飴も、綺麗になくなっていた。
……なんてことは、わざわざ言うことでもないよねっ!
【天使は翼を手折るのがお好きらしい】 了
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