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 高校一年の頃。俺は突然、佐渡様に呼ばれた。  体育倉庫に連れ込まれて、当時は話したこともなかったのに、いったいなんの用事だろうと。失礼ながら、佐渡様を訝しんだ。  クラスでも姫のように扱われている佐渡様が、勉強ができるだけの俺を呼んだのだから、戸惑って当然だろう。  ──そして、その日。佐渡様は俺を、徹底的に壊し始めたのだ。  無理矢理、佐渡様の逸物を咥えさせられた。  性経験の無かった俺の童貞を、佐渡様に奪われもしたし。友達付き合いも、制限された。  だというのに、俺は。……それらの行為を全て、悦んで受け入れたのだ。  自分がまさか、世間一般で言う【マゾ】という人種だったとは、知らなかった。  だが、自覚させてくれた佐渡様には感謝している。  普段は天使のような佐渡様が、鬼畜で人を人とも思わない残酷な人で、加虐趣味をお持ちで。外見だけでも俺の好みド直球だというのに、そんな性質をお持ちだなんて……。好意を寄せない理由がない。  佐渡様は不機嫌そうな眼差しのまま俺を見上げて、吐き捨てるように呟いた。 「……相談されたんだよね。真宵君のこと」  俺のお馬さんタイムを邪魔するだけに飽き足らず、佐渡様の貴重な時間をも割いただと? 意味が分からない。……いや。ウジ虫の考えなど、分かるはずもないか。  佐渡様は俺を見上げたまま、またもや呟く。 「今日、家に一人なの?」  俺は勢いよく頷く。 「はい、一人です」 「じゃあ、家に行ってもいいよね?」 「はいっ! ……えっ?」  それは、初めてのパターンだ。  佐渡様が、俺の家に? 家畜小屋に行きたい、と。つまり、ういう意味だぞ?  聞き間違い──いや、佐渡様のお言葉を聞き間違えるわけがない。そんなの、家畜失格だ。 「返事は?」 「な、なにも面白い物はありませんよ……?」 「へ~っ? 二回言わないと分からないんだ~っ? ボクは今『返事は?』って言ったんだけどな~っ?」 「──勿論構いませんッ!」  佐渡様が不機嫌な理由は、うっすらとしか分からない。だがこれは、名誉挽回のチャンス。  ──俺の家で、佐渡様の馬になればよろしいのですね!  俺の返事を聞いて、佐渡様は忌々しそうに舌打ちをする。 「チッ。最初からそう答えたらいいんだよ。……家畜の分際で、ナマイキ」  宝石のような瞳が、俺に憎悪の念を向けていらっしゃる。僥倖です! 「申し訳ありません、すぐにご案内いたします!」 「なんで張り切ってるのか分かんないけど、純粋に気持ち悪~い」 「ありがとうございますッ!」  失態は、許されない。俺は決意を新たに、佐渡様を家畜小屋──もとい、我が家までご案内した。

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