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第1話 《4》

「今日は何か食べられそうか?」 「…………」 あれから3日。 反応もしない僕にずっと優しく声をかけてくれるライオンさん。 ライオンさんがいない時は狼さんがいて、一日一回は羊のおじいちゃん先生が傷の具合を見てくれる。 「何か食べたい物はないか? 果物は食べやすいか?」 「…………」 首を横に振って断るとライオンさんのしっぽがだらんと垂れ下がる。 それに少しの罪悪感を覚える。 「じゃあ俺は隣の部屋にいる。何かあれば声をかけてくれ」 ライオンさんが部屋を出ていく。 鍵をかける音はしないから部屋からは出られる、のかもしれないけど外に逃げたとしても帰れる場所がない。 それに逃げようとしているのが見つかったら、今は優しいライオンさんや狼さんが変わってしまったらと思うと怖い。 そっとベッドから起きて窓から外をみる。 二階のこの部屋から中庭に四阿と花壇が見えるけれど人の姿は見えない。 「……いた、い……」 ハイエナのお客様に付けられた傷がまだ痛む。 窓辺からソファーに移動して自分の脚を抱えて丸くなって横になる。 これから、どうなるんだろう。 ライオンさんはどうして僕を助けてくれたのかな? 信じて、いいのかな? でも…… また少し眠くなってきた。 ここに来てから眠気が強くて夜だけじゃなくお昼寝までしてしまう。 お店にいた時には考えられない事だ。 「ライオンさんの……近くにいると……ふわふわしてて……眠くなる……」 少しだけ……と思いながら睡魔には勝てずそのまま眠ってしまった。 途中小さな物音が聴こえて一瞬目を覚ましかけたけれどふわりと身体に何かがかかる。 更に心地よくなって再び眠り直してしまった。 安心できて、怖い夢からも守ってくれそうな……そんな香りがする。 「ん……」 どこからか冷たい風が流れ込んできた。 目を覚ますと窓が開いている。 寝ているうちにライオンさんか狼さんが換気の為に開けたのかな。 窓を閉める為に立ち上がろうとすると寝る前にはなかった上着が僕の身体にかけられていた。 大きな上着だから僕のじゃない。 ライオンさんの上着だ。 ギュッと抱き締めると安心する香りがする。 この香り、知ってる…… ライオンさんの香りだけど……何か、思い出しそう。 「……雨?」 考え込んでいるとポツリポツリと降り出した雨が地面を濡らす。 寝てしまってからそんなに時間が経っていないはずだけどあんなに空が晴れていたのに今は真っ暗な雲が太陽を隠してしまっていた。 段々と雨脚が強くなりバケツをひっくり返したような横殴りの雨が開いていた窓から入ってきて床を濡らした。 閉めないと……と思っているとピカッと光ったと同時にドカーンと大きな音がした。 「ぴゃっ!!」 雷が怖くて無意識に獣体に変わってしまった。 獣体に変わって身体が小さくなって脱げてしまった服の間から偶然立つ時に一緒に持っていたライオンさんの上着の下に隠れる。 その間にも何度もゴロゴロと響いている。 早く、雷どこかに行って……

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