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第2話《2》
「ライアン様、ルーク。おはようございます」
着替えに手間取っていた僕を自分の身支度が終えたライアンさんが手伝ってくれて、隣の部屋に行くとしっかり身だしなみが整っているエリオットさんがいた。
「おはよう」
「おはよ、ございます……」
エリオットさんがひいた椅子に僕を抱っこしたままライアンさんが腰掛ける。
「食事の準備を致します。ルークは今日の診察が終わるまでは消化にいい物にしておきましょうね」
「はい」
僕には昨日と同じように野菜が柔らかくなるまで煮込まれた卵粥にスープ。
ライアンさんは夕食よりは少ないけれどそれでも僕が食べれる量の5倍はありそうな朝食をペロリと食べた。
朝食もライアンさんが口に運んでくれたのが嬉しくて気づくといつもよりも少し多めに食べていた。
「先生がいらしているのでお通ししますね」
食事を食べ終えたタイミングでエリオットさんが声をかけてくれるといつもの羊のお医者さんが部屋に入ってきた。
ライアンさんが僕を抱っこしたままソファーに移動してくれる。
「昨日よりだいぶ顔色がいいようじゃな。エリオットに聞いた所食事も少し取れたそうだが何処か苦しい所はないかな?」
「……だい、じょぶ……です……」
緊張してしまって耳に手を伸ばしてしまうけれどライアンさんが優しく背中を撫でてくれたので噛まずに手を離す。
「そうか。それはよかった。少しでも体調が悪い様ならライアン様たちに言うのじゃぞ。わしも直ぐに駆けつけるつもりだが、エリオットにはわしの知識を全て叩き込んでおるから対処できるはずじゃ」
コクリと頷くとシワシワのお顔に更にシワを作って笑ってくれた。
「心の問題は今すぐどうにかなる問題ではないので焦らず癒していくしかないですな」
「ああ」
「あとは包帯を替えておしまいじゃ」
「薬を塗り直して新しい包帯に替えた。これからも俺がする」
「おやおや、こんな老いぼれにまで競わなくてもいいじゃろうに」
ライアンさんとお医者さんのお話しがわからなくて首を傾げているとお医者さんがポケットから小さな紙にくるまった物を出して僕に渡してくれた。
「いい子で診察受けれたご褒美じゃ」
「ごほう、び?」
お店でお客様たちにご褒美と言われてされた嫌なことを思い出した。
この紙の中に入っているものが身体が熱くなって正気をなくしながら奥にだしてと泣き叫ぶだけにさせられる、あの薬だったら……
「ルー……ルーク。ゆっくり息を吸え」
震えて呼吸も上手く吸えなくなった僕の手をライアンさんがしっかり握って包みを広げてみせてくれる。
「これは飴玉だ。俺も子供の頃診察の後にもらって食べていた」
包みに入っていた赤く丸い形のものを指で摘んでライアンさんの口に入る。
「ほら、なんともない。甘いイチゴ味の飴だ」
「あ、め?」
「すまんかった……配慮が足りなかったな」
「……ごめん、なさい……」
僕が取り乱したせいで善意でくれようとしたお医者さんに嫌な気持ちにさせてしまった。
涙をライアンさんが指で拭いながら「怖くなくなったら一緒に食べよう」と言ってくれた。
「では先生の見送りに行ってきます」
「ルーク、また来てもよいか?」
手を振ってくれるお医者さんに手を振りながら頷いた。
「……さて、少し仕事を片付ける。退屈かもしれないがここで楽にしていていいからな」
ライアンさんの膝からソファーにゆったりと座らせてもらって頭を撫でてくれた。
お仕事……お城に行くのかな?
僕は、これ以上邪魔にならないように大人しくここに座っていよう。
「……そんなに寂しそうな顔を見ると離れ難いな……」
「はぅ……」
そんなにわかりやすい顔をしていたのかな。
恥ずかしくて腕で顔を隠す。
「しばらくはここでできる仕事だけだからそこにいる。心配するな」
そう言ってライアンさんが指さしたのは数メートル離れた大きな机。
勘違いが恥ずかしくて身体を小さくしてソファーに蹲る。
クスクスと笑いながらライアンさんがブランケットをかけてくれた。
「何かあったら声をかけてくれていいからな」
「……はい」
邪魔はしたくなかったからソファーから少しだけ顔を出してライアンさんが居るのを何度も確認した。
王様、がどういう仕事をするのか分からないけれど机の上にはたくさんの書類が山積みになっていてライアンさんが一枚いちまい確認しながら何か書いたりと忙しそうに手を動かしていた。
「…………」
そっと音をたてないようにソファーから立ち上がり机の側に寄る。
「ルー、何かあったか?」
「なんでも、ない……です」
音は立てていないはずなのにライアンさんに気づかれて手を止めさせてしまった。
首を横に振ってなんでもないと繰り返してもライアンさんは待ってくれた。
このままだと僕が話すまでライアンさん仕事を再開出来なくて更に邪魔をしてしまう。
「あの……邪魔にならないようにするので、ここに座って少しだけ、服掴んでいてもいいですか?」
ライアンの椅子の隣の床に座って動きの邪魔にならないように上着の裾を少し触って顔を見上げる。
するとライアンさんの腕が伸びてきて膝の上に座らせた。
「そこだと身体が冷える。ここでもいいか?」
「お仕事の邪魔、なりたくない……です」
大人しくソファーに戻ろうと膝から降りようとするけれどしっかりと腕が回って降りれない。
困ってライアンさんを見つめると優しく笑って髪を撫でてくれた。
「実を言うとルーを抱っこしていると癒されるし落ち着く。退屈かもしれないがここにいてくれるか?」
「……でも……」
「首が疲れたり身体が痛くなったら教えてくれるか?」
「……ごめんなさい……」
「違うだろ? こういう時は何て言うんだった?」
「…………ありがとう、ございます?」
「正解だ」
ライアンさんの唇が僕のおでこに触れた。
ふわふわした気持ちになってできるだけ邪魔にならないように小さくなってライアンさんの胸に顔を埋めた。
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