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第2話《3》

「午前はこのくらいにするか」 「お疲れ様でした」 「おつかれ、さまでした」 ライアンさんの腕の中は気持ちよくて少しうとうとしてしまった。 ライアンさんもエリオットさんも「眠ければ寝ていいんだ」と言ってくれたけれど2人がお仕事してるのに僕だけ寝ているのは申し訳なくて目を擦りながら頑張って起きていた。 「ルーが側にいてくれたから仕事の進みも早かったな」 「ほんと?」 「ああ。仕事を早く終わらせてルーとの時間をとりたかったからな」 ライアンさんが凝りを解すように腕を伸ばす。 「今日は天気もいいしランチは中庭で食べようと思うけどどうだ?」 「中庭? ライアンさんと、一緒?」 「もちろんだ」 僕が太陽の下に行ってみたいって話したこと、覚えていてくれたんだ。 1階に降りるとテラスから中庭に出られる部屋があった。 部屋の中で僕を降ろしてくれたライアンさんが一歩外にでて部屋の中にいる僕に片手を差し出してくれた。 「最初の一歩は自分の足で出てみろ。俺はここにいるからルーのタイミングでいい」 きっと周りの人にしてみるとなんでもない一歩。 でも僕にとっては大事な一歩。 ライアンさんもそれを分かってくれているから自分の足でって言ってくれたんだと思う。 太陽の下に、ライアンさんと一緒に…… 「…………ふー」 ゆっくりと深呼吸をしてからライアンさんの手を握って一歩外に出た。 「そと……」 そのままライアンと手を繋いだままゆっくり10歩くらい歩いて後ろを振り向く。 誰も僕のことを部屋に引き戻そうとする人は居ない。 「たいよう……」 空を見上げると綺麗な青空と眩しい太陽。 眩しくて太陽がよく見えない。 「直接太陽を見ると目に悪いぞ」 「ライアンさん、太陽、眩しいね」 目がチカチカしてふらふらしていたらライアンさんが支えてくれた。 「あったかい……」 「日光浴するのは健康にもいいらしい。中庭なら安全だからな」 「はい」 「できれば心配になるから出る時は俺かエリオットに声をかけてくれ」 「はい」 ゆっくり歩いて四阿に行くと先にエリオットさんがいて昼食の用意をしてくれていた。 「先生の許可も頂いたのでお昼はサンドイッチにしてみました。レタスやハムだけでなくジャムやフルーツなどを挟んだ甘いものもあります。ルークには食べやすく色々試せるように小さめに切ってあります」 ライアンさんに抱っこしてもらって席に着くとエリオットさんが取り分けてくれる。 しかも量を食べれない僕の為にライアンさんとは別にわざわざ一口サイズの物を作ってくれたみたいだ。 「いただきます」 「いた、だきます」 ライアンさんの真似をして手を合わせる。 たくさん種類があるからどれから食べようかな。 少し悩んでからハムとレタスとチーズが挟まった物を口に運ぶ。 シャキシャキと新鮮なレタスにハムとチーズの組み合わせが、とても…… 「おい、しい……美味しい、です……」 今まで僕を死なせない為に店では食事をある程度食べなくては許してもらえなかった。 だから味なんてよく分からない。 それどころか美味しいと思った事はなかったと思う。 もし同じものをお店で食べていても美味しいとは思わなかった。 ライアンさんとエリオットさんがいてくれて僕の事を思って作ってくれた物だから。 だから、こんなに美味しいって思うんだ。 ポロポロと止まらない僕の涙をライアンさんが指で優しく拭ってくれた。 「ルー……」 「ルーク……」 ライアンさんとエリオットさんが僕の顔を見て目を見開いた。 「笑った……」 「ふぇ?」 笑った? 僕が? 「元々が愛らしいから笑顔もきっとかわいらしいとは思っていたが、想像以上だ」 ライアンさんがギューっと抱きしめてくれてエリオットさんも優しく笑っていた。 「これからたくさんルークのその笑顔がみれるように一緒に色々な経験をしていこうな」 「はい」 「ホットミルクです。熱いので気をつけて下さいね」 「はい」 美味しいサンドイッチやフルーツを食べてからライアンさんとお庭を散歩して綺麗なお花を眺めたり噴水の水を触ってみたり。 あんなに遠いと思っていた太陽の下にいる。 昼食と夕食の間にはおやつの時間というのがあるみたいで初めてケーキというものを食べた。 いちごが乗った白い甘い物。 ショートケーキというのだと教えてもらった。 一口たべてみたケーキはとても甘くて優しい味がした。 これもエリオットさんが作ったのかなと聞いてみたら食事はエリオットが作ってくれているけれどお菓子だけは別の人が作ってくれてるんだって。 いつかその人にも「ありがとう」って言えるようになりたいなぁ。

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