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第4話《2》
「少し熱は下がりましたね。ただ、夜にまた上がってくる可能性もあるので油断はできませんが……何か食べられそうですか?」
一日をベッドで過ごして、その間何度もエリオットさんが様子を見にきてくれてタオルを濡らしたり着替えを手伝ったりしてくれたおかげで夕食の頃には朝よりも頭がはっきりしてきた。
「……ごめんなさい」
「謝らなくてもいいんですよ? 朝や昼もあまり食べられませんでしたね……お腹が空いたら教えてくださいね?」
「……はい」
水分は取るようにと言われているからこまめに取るようにしていたけれどお腹がすかなくて、なかなか食べられない。
せっかく用意してもらったのに。
「……もし気分が悪くなければ眠くなるまで絵本を読みましょうか?」
「……えほん?」
そう言ってエリオットさんが優しい色合いの絵が描かれている本を見せてくれた。
中を見てみるとイラストと文字が書いてある。
「子供を眠る前に親が絵本を読んで寝かしつけることがあるようです」
「エリオットさんも、してもらってたの?」
「いえ、私の両親はそういうことをするタイプではなかったので……でもライアン様が幼い頃よく御両親に絵本を読んでもらっていたようですよ」
詳しいことはわからないけれどエリオットさん、実家とは小さい頃に縁が切れていてその頃からずっとライアンさんに仕えていたらしい。
「僕でも、わかるかな……本読んだことないし……僕バカだし……」
「読書は好き嫌いがありますし、好きな人は何時間でも読める人もいるし、嫌いな人は本を開いただけで眠くなるという人もいます……ライアン様はルークが学びたいと思ったなら学べる機会をと仰っていました。人に教えたことはないので力不足かもしれませんが私でよければ日中教えることができます……本当ならライアン様が教えて差し上げたいようですが……」
ライアンさんもエリオットさんも本当に優しい。
僕のこと、僕以上に凄く考えてくれている。
試しに本を開いてみた。
「絵と文字が書いてあるの? 本ってもっと字がびっしり書いてあると思った」
「はい、これは絵本というものでまだ文字が読めない子供が読み聞かせしてもらう時に絵があると想像しやすい……ということもあってこういう形なんです」
ページを開いていくとかわいい女の子がお掃除をしている絵、女の人たちに意地悪されて泣いている絵、魔法使いのおばあさん、かぼちゃの馬車、ガラスの靴……最後のページは女の子が王子様と幸せそうに笑っている。
「これは『シンデレラ』というタイトルです。具合が悪くなったら言ってくださいね……むかしむかし、あるところに……」
そうしてエリオットさんの優しい声で読み聞かせが始まる。
意地悪されるシンデレラが悲しくて、12時の鐘がなって魔法が解けるまでの時間にハラハラして、最後はガラスの靴がピッタリ入ったシンデレラを王子様が迎えにきてくれてほっとして……
「こうしてシンデレラは王子様と末永く幸せに暮らしました……おしまいです」
「シンデレラ、幸せになれてよかった……」
「退屈ではなかったですか?」
「ううん……読んでくれてありがとうございます」
お礼を言うとエリオットさんが笑ってタオルを新しく濡らしておでこに乗せてくれた。
時計を見るといつもの寝る時間になっていた。
今日はずっとベッドにいたから眠くないけれど……
「エリオットさん、僕大丈夫だから……エリオットさんも休んで」
「……眠れそうですか?」
「……だいじょーぶ」
「……仕事、キリのいい所までやりたいのでもう少し隣にいるので何かあれば声掛けてくださいね」
エリオットさんがおやすみなさいと頭を撫でてくれてからそっと部屋を出ていった。
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