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05※
「っ、モルグさ……ッ、待って……」
「ん? どーしたの?」
「こ、の格好……ッ」
そう咄嗟に脚を閉じようとすれば、やんわりと膝の頭を掴まれ再び開かれる。
それどころか、「この格好が?」と不思議そうに小首傾げるモルグに顔が熱くなった。
「は、ずかしい……です……」
「……君は恥ずかしがり屋さんなんだねえ。大丈夫、僕は恥ずかしくないよ」
そういう問題じゃない。それに、モルグが恥ずかしくないのは当たり前じゃないか。
下着越し、くっきりと浮かび上がる性器の膨らみを中心に染みが濃くなっているのが分かり更に恥ずかしくなる。
見ないでください、とモルグを押し返そうとするが、モルグは気にせずそのまま膝の裏側を掴み、脚を折り曲げてくるのだ。
「っ、ぅ、あ……ッ!」
「君、結構股関節硬いね。元々体が柔らかくない方みたいだし、こまめにストレッチしていかないと大変だよ〜」
「っ、は、はい……っ」
「ほら、こことか。一人で出来そうにないなら誰かに頼むのもありだよねえ、一人じゃどうやっても限界あるだろうし」
「……っ、ぅ、ん……っ」
「こうやってゆっくり息を吐きながら体重掛けていくとやりやすいよ」
言いながら、手とり足取りレクチャーしてくれるモルグだがその説明は全く頭に入ってこない。
腿を掴まれ、膨らんだそこを見られてるということだけでなにも考えられない。
上半身に向かって膝を押し付けられると圧迫感で息苦しくなるが、それ以上に下着の下で広がる肛門の感覚が気になって集中することができなかった。
性器が溢れないように下着を手で隠しながらも、耐える。
本当にモルグは純粋なマッサージのつもりのようだ。
一人だけ興奮してるようで恥ずかしくなり、身に力が入らない。そんな俺を見て、一息ついたモルグは「ちょっと休憩しようか」と提案してくれた。
もしかしたら俺がただ疲れてるのだと思ったのかもしれない。それでもその申し出はありがたい。
「……っは、ぅ……ッ」
モルグの言葉に甘え、ようやく開放された俺はそのままくたりとベッドへと寝転んだ。
一度ベッドから降り、ドリンクを手に再び戻ってきたモルグは「痛かった?」なんて俺の顔を覗き込んでくる。
「い、いえ……大分……モルグさんのお陰で痛みが和らいで、なんだか体が軽くなりました」
「そう、ならよかった〜」
……嘘ではない。確かに恥ずかしいけれど、モルグに触れられた箇所は動かしやすくなっている。それに、ぽかぽかするし……。
ありがとうございました、と頭を下げれば「いいよ、そんなの」とモルグは笑う。
そして何かを思い出したように「そうだ」とこちらを見た。
「そういえば善家君さあ、もっとその疲れを癒やすマッサージあるんだけど試さない?」
「え? 今のよりもですか……?」
「そーそー。……僕が思うに君の恥ずかしがり屋なところとか、その自信のなさが関係してると思うんだよねえ」
――だから、そんな余計なこと考えなくて済むようにしてあげる。
そうモルグは俺に笑いかけてくる。
そんなマッサージがあるのか、とか。色々疑問はあったがモルグの言葉には説得力があった。
確かに、教師たちにも何度もこの性格のことは指摘された。ヒーローになりたいのならもっと堂々としてなさいと。
けれど、やはりなにをやっても上手くいかない。
それがマッサージで少しでもよくなるのなら、とそんな思考が過ぎった。
「お願いします」と頭を下げれば、モルグはニッコリと笑った。
そして。
「じゃ、もっかいそこに横になろうねえ」
……。
…………。
………………。
「あ、あの……本当にこの体勢じゃないと駄目なんですか?」
「ん〜。じゃなくてもいいけどぉ、一番僕がやりやすいようにさせてもらおうかなって思って。……恥ずかしい?」
「は、はい……」
「そっかそっか。けど、これに慣れていかないとねえ」
一緒に慣れていこうね、とモルグが笑う気配がした。
二人分の体重に沈むベッドの上。俺はモルグの指示のもと、そのベッドの上に犬のように四つん這いになり、そのまま目の前のクッションにしがみつくように腰を持ち上げる。そして、その背後にはモルグが乗り上げてこちらを見下ろしてる。こちらからはその表情までもは分からない。
それにしても、寝てた方がいいんじゃないか。
そんなことを思いながらも尻をモルグに見せるような体勢に緊張していると、いきなり伸びてきた手に尻を撫でられる。
相変わらず下着一枚のそこに、輪郭線をなぞるように触れられると堪らず反応しそうになる。
「っ、あ、あの……」
「君のお尻、引き締まってて形いいんだしさ、僕はもっと堂々としててもいいと思うんだよねえ」
「あ、ありがとうございます……?」
モルグに他意はないのだ、落ち着け。と自分に言い聞かせていた矢先だった。
そのまま尻を撫でていた手が下着のウエストゴムに触れる。そのまま摘むようにずるりと下着を脱がされ、ぎょっとした。
「っ、え、も、モルグさ……ッ」
「おー、綺麗に閉じてるね。ここになにも挿れたことないの?」
「っへ、あ、あの……ッ?!」
なにを、と突っ込む暇すらもなかった。
下着を脱がされたと思えば、そのまま尻の谷間を左右に割り開かれる。閉じたままの肛門を指の腹でぷにぷにと撫でられ、言葉を失う。
「っモルグさん、な、にして……っ」
「ん〜? だからマッサージ〜?」
「っ、マッサージって……」
「じゃ、失礼しますねえ」
そう、人の言葉を無視してモルグは背後で動く。と、同時に閉じていたそこに細い突起状のなにかがはいってくる。何事かと振り返ろうとした次の瞬間、閉じた肛門の奥へとブリュッ!と勢いよく常温の液体が注がれるのだ。
「ふ、ぅ゛……ッ?!」
「ん〜君初めてだよねえ、ならちょっと多めでもいいかなあ」
「ッ、も、るぐ、さ……ッ、これ、な、に……ッ」
「潤滑油だよ。今から君のお尻の穴に僕の指を入れるから痛くないようにってねえ」
「ん゛、う゛……っ!」
だから、なんで。という言葉は声にならなかった。
感じたことのない感覚に、引き抜かれたボトルをサイドボードに置いたモルグ。栓を失い、とろりと垂れる潤滑油を指に絡めながらモルグは異物を押し出そうと硬く口を閉じたそこに再び触れる。
先程までとは違い、ぬめりを伴った指先は少し力を加えられるだけで滑るように埋まるのだ。
異物感。それを拒もうと四肢に力が入るが、モルグは構わず無視して指を更に奥へと埋め込むのだ。
「っ、ん、ぅ……っ、ゆ、びが……っ」
「そうだよぉ。今からこれで君にマッサージしてあげる。前立腺マッサージ、知ってる?」
「っ、し、りま、せ……ッ!」
「男でもマッサージされるとわけわかんなくなるところだよ。君はまだ処女らしいから無茶なことはしないから安心して。……ただ君は気持ちよくなるだけだから」
「っは、へ」
なにを言ってるんだ、この人は。
何一つ理解できず、やめてくださいと言う暇もなかった。
痛みはないが腹の中に入ってくる指に内壁を撫で上げられ、違和感が更に強くなる。ひくりと喉が震え、必死に指先から逃れようと腰を動かせば、モルグは「こーら」と俺の腰を掴んで引き戻すのだ。そして先程よりも大胆な動きで腹の中を探られる。腹の中で潤滑油とモルグの指が絡み合い、濡れた音が響き渡った。
「大丈夫、怖いことはしないからねえ」
「っ、も、るぐさ……ぁ……っ」
体内を探るように動き回る指に汗が滲む。恥ずかしさだけではない。くの字に曲がる指に、内壁へと潤滑油を塗り込むように嬲られれば頭の奥がじんじんと熱く痺れていく。
「っふーッ、ぅ、ん゛……ッ!!」
目の前のクッションに顔を埋め、声を堪えようとしたときだった。モルグの指先が体内のとある部分を掠めた瞬間、びくりと腰が震えた。
最初はほんの小さな違和感だった。それでもモルグはそれを逃さなかった。
「……ああ、見つけた。ここかあ」
そう、背後から覆い被さってくるように俺の腰を捕らえていたモルグが笑った――……気がした。
前立腺、とモルグは言っていた。ふわっとした単語しか聞いたことなかったし、自分の体のどこにあるのかも分からない。
けれど、モルグはそれを見つけたのだと言う。
「ぉ゛ッ、ぐ……っ! ん゛ッ、ふ、ぅ゛……ッ!!」
指の腹で摩擦するように柔らかく揉まれる度に腹の中で潤滑油の音は大きくなる。
ぼたぼたと潤滑油か溢れようが滴ろうがモルグは全部無視して一点集中して前立腺を愛撫するのだ。あくまでも優しく、柔らかく、それでもしっかりと逃さないように俺の太腿を掴み、指を抜き差しする。
「どんどん垂れてきた。……感度もいいし、苦労しないだろうね君とのセックスは」
「っん゛……ッ、ぅ゛……ッ、ふ……ッ!!」
「我慢しなくてもいいよ、誰だってここ揉まれたら気持ちよくなるんだ。……ほら、声も我慢しないで?」
体内で響く淫猥な水音とモルグの甘く優しい声が混ざり合い、頭がどうにかなりそうだった。
気持ちいい。気持ちいいあまり自分の意図せず情けない声が漏れてしまい、恥ずかしかった。それでもモルグはそんな俺すらも受け止め、更に責め立ててくるのだ。
二本の指にこりこりと中を解され続け、腰の痙攣は止まらない。甘く勃起した性器からはとめどなく白濁混じりの先走りが垂れ、シーツに水たまりをつくった。
「っはーっ、ぁ゛……ッ! も、るぐ、しゃ」
「んーどうしたの? 怖くないよ?」
「っ、い、やだ、ぬいっ、ひ……ッ、そこ、ぃ、やだ……ッ!」
「嫌だ、じゃなくていいでしょ?」
「ん゛ひ……ッ!!」
ぐちゅぐちゅと音を立て出入りするモルグの指から逃れることはできない。
クッションにしがみつくが、腹の中でぐるぐると溜まり、暴れ狂う熱はまるで発散場を探すように膨れ上がるのだ。それがずっと続いてるようだった。イキそう、という感覚が次第に強くなるにつれ目の前が白く霞んでいく。
腰が揺れる度に揺れる哀れな性器を見て、モルグはくすりと微笑んだ。
「取り敢えず一回溜まってるの出そうか」
「へ、」
「ほら、びゅっびゅっ」とまるで幼い子に言い聞かせるような優しい口調でモルグは俺の性器を柔らかく扱き始める。潤滑油などなくとも既に己の体液でどろどろに濡れていたそこは、モルグに少し触れられただけでも恐ろしく反応してしまうほどだった。
「ああ、ほら、見て見て〜善家君。君のおちんちんもうイキそうだね」
「っ、ぅ゛あ゛ッ!! いやだ、見ないで……っ、モルグさ……ッ、ひ、ぅ……ッ!!」
「いいよお、いっぱい出して。どうせここ君の部屋だしねえ」
「ぅ、あ゛……っ!」
……少し擦られただけだった。モルグの指先に挟まれ、何回か上下に擦られそのまま皮を弄ぶように弄られただけだ。それだけであまりにも呆気なく射精してしまう俺を見てモルグは馬鹿にするわけでもなく「偉いねえ」と褒めてくれるのだ。なんだかもう恥ずかしさと情けなさと気持ちよさとでパニックになりそうになる俺に、モルグは微笑んだ。
「よかった。ほらこれでアナルに集中できるよね」
「はあ……つ、はー……っ、……ぁ……ッ?」
一瞬、モルグがなに言ってるのか分からなかった。瞬間。
「んひっ!」
再びアナルを責められ、堪らず悲鳴を上げてしまう。どさくさに紛れ、二本だったのが三本に追加されている。
「っ、はー、ぁ、ッ、も、……ッ、いい、ッ、いいです、ぉれ……っ、きもち、いい……からぁ……っ!!」
「いいんだ? じゃあもっと良くしてあげるねえ」
「はー……ッ、う゛、ふ、ッ、ぐ……っぅ、……ッ!!」
ぐちゅぐちゅと音を立て前立腺を責め立てられる。痙攣する腰を抱き締められ、さらに執拗に愛撫されれば、たった今射精したばかりの性器からびゅっと半濁の液体が溢れる。
それを見てモルグは笑った。
「お〜、出るね〜。ほら、溜まってるの全部吐き出しちゃおうねえ」
「ぅ゛う゛〜〜ッ!!」
今度は性器に指一本触られていない。それでも射精感は収まらない。内側から犯され、理性すらも溶かされているようだった。
何度目かの絶頂を迎えたが、精液はでなかった。それでも勃起は収まらず、熱は増すばかり。
自然と開いた股はガクガクと痙攣を起こしたまま力を入れることもできず、みっともなく開いたままモルグの指を飲み込んだ肛門は執拗な愛撫に堪えられずに溢れ出した潤滑油でどろどろにぬ濡れていた。
「も゛……む゛り……ッ」
「無理じゃないよ」
「ぉ゛ごッ!」
「まだいける、ほら、僕が手伝ってあげるからいっぱい出そうね」
ごりゅ、と臍の裏側から押し上げられた瞬間瞼裏が白く点滅する。瞬間。
「〜〜ッ!!」
自分の体を支えることもできなかった。シーツの上、開いた尿道口からは精液ではなく、黄色く水っぽい液体がちょろちょろと溢れ出した。
「おっと、やりすぎたかな」というモルグの声が落ちてくる。肛門から指を引き抜かれた瞬間、支えを失った体はそのままぺしゃりとベッドの上へと落ちた。腹部に広がる熱。力も入れることもできず、ガクガクと痙攣の収まらない下腹部。
暫く俺はベッドの上から動くことができなかった。
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