「な、はとさ……ッ、ん゛ッ」 　なんで、という疑問も浅はかだと分かっていた。 　分かっていたはずだ、やらないという選択肢もあったにも関わらずに俺はこんな真似をしていたのだ。 　ナハトからどう思われてもなにも言い返せない。 　顔が熱くなり、ナハトの顔を見ることができなかった。そんな俺を前に、ナハトに顔を隠そうとしていた腕ごと捻りあげられるのだ。 「待っ、あ゛ッ」 「……俺の匂い、そんなに良かった？　本当、なに、堪え性なさすぎでしょ」 「ご、ごめんなさ……ッ、」 「うるさい。しっかりまた勃たせて何言っても説得力ないから」 　ナハトの指先で性器を弾かれれば腰がびくりと震える。ナハトに言い返す言葉もなかった。その上、こんな風に冷たい目で見られても萎えるどころか大きくなる自分自身にただ顔が熱くなる。 「ッ、あ、ちが……」 「違わないでしょ。……なにこれ、俺がいない間一人でこんなに盛り上がってたの」 　ぺちんと尻を叩かれる。軽く、それでも下腹部全体に広がる甘い振動に堪らずびくりと背筋が仰け反った。 「ごめんなさい」と声を上げるが、ナハトは「聞こえない」とそのまま肛門に触れるのだ。 　自分の指で柔らかく解したばかりのそこをナハトに触られる。恥ずかしくて、それ以上にあのナハトさんに、と思うと余計頭がどうにかなりそうになった。 「ッ、ぁ、ナハトさ……」 「……前から思ってたけど、アンタだらしなさすぎるよ」 「っ、ふ、へ……ッ」 「それとも……それ、わざとなの？」 「まあ、どっちでもいいけど」そう耳元で吐き捨てるナハト。その言葉の意味を聞き返すよりも先に、華奢な指先に肛門を左右に割り開かれ息を飲む。 「っは、ぁ、な、ナハトさん……ッ、待って……」 「待っていいの？」 「っ、ひ、う……ッ！」 　中をぐるりと円を描くように体内を掻き回される。柔らかくなった筋肉を内側からねっとりと撫で上げられれば堪らず背筋が震えた。 「っ、あ、ぁ……ッ、ナハトさん、指……ッ」 「……ビクビクしてる。なんで？」 「っ、そ、んなこと……ッぉ、ひう……ッ！」 「もしかして、これだけで感じてんの？」 　そう加虐的な笑みを浮かべるナハト。 　細い指に前立腺を探り当てられた瞬間、体の芯がびくりと震えた。熱に呑まれる。じんじんと内側から焼き尽くされるような熱は甘く、俺はナハトの腕にしがみつく。 「っ、ぐ、ひ……ッ」 　緩むどころか的確に責め立ててくるナハトの指から逃れるどころか追い詰められる。 　ベッドの上、身を捩って逃れようとする俺の腰を掴んで更に複数の指でナハトは愛撫するのだ。 　自分でするのとはまるで比べ物にならない。 　容赦も、ない。 「ぁ゛、ふ、う゛……ッんんんぅ……ッ」 「あっつ……ッ、柔いし……アナル一人で弄りすぎでしょ」 「っ、ぃ、わ、ないれ……ッ」 「事実だろ」 「っ、ぁ、う……ッ！」 　腹這いになる俺の背後、ナハトは俺の腰を持ち上げる。 　前立腺を柔らかく揉まれ、一方的に与えられ続ける持続的な快感に息をつく暇すらもなかった。 　ガクガクと小刻みに痙攣する下腹部、頭が真っ白になると同時に精液とも呼び難い体液がぴゅっと少量飛び散る。 　一人でに起きてることすらもできなかった。ベッドの上、沈む俺の下腹部を捕まえたまま、ナハトは「良平」と俺の尻の割れ目から背筋をつうっと撫で上げた。 「……な、はとさ……ッ」 「酷い顔。……涙と鼻水でぐしゃぐしゃだし、そんなに良かった？」 　胸を上下し、必死に呼吸を整えようとする俺の前髪をかき上げるナハト。絶頂を迎えた直後、まだぼんやりと靄がかったように痺れる思考の中俺はなにも考えずにただこくりと頷き返す。 　そんな俺を見て、ナハトは笑った。 　そして「素直」と笑い、指を引き抜いた。ぐぽ、と音を立てぽっかりと開く肛門。 　異物感を失い、ほんの一瞬名残惜しさを感じたときだった。 　ナハトの手に腿を掴まれ、そのまま大きく開かされる。 「っ、な、はとさ……」 「なに」 「こ、の……体勢は……ッ」 　流石に恥ずかしいです。なんて、犬のようにベッドに四つん這いにされたまま背後を振り返るよりも先に、ナハトの手が臀部を鷲掴んだ。 　尻たぶを揉むように肛門を広げられ、ひくりと息を飲む。 「ぁ、……ッ」 「この体勢が、なに？　まさか、恥ずかしいなんて言わないよね。散々アイツらに触らせてたんだから」 「……ッ」 　このタイミングでモルグやノクシャスとの行為について指摘され、堪らず言葉を飲む。 　確かに、そうだけど。そうだけども。 「……それとも、俺に触られんのは嫌？」 「い、やじゃ……ないです……ッ」 　思わず即答してしまい、ハッとする。条件反射、というやつなのだろうか。言ってから後悔したところで遅い。 　ほんの一瞬、背後でナハトが笑う気配を感じた。 「ああ、そう」と、顔は見えないがそれでもナハトのニヒルな笑みが脳裏に浮かぶ。そして次の瞬間、尻の割れ目にべちんと押し当てられる太く、熱い感触に思わず息を飲んだ。 「っ、な、はとさん……ッ、まって、これ……ッ」 「……なに？」 「これ……ッ」 「俺のチンポだけど」 「……ッ！！」 　あのナハトの口からそんな端ない言葉が出てくるとは思っていなかった。それ以上に、感触からして指とは比にならないほどの重量、太さに心臓がバクバクと騒ぎ出す。 　尻たぶごと大きく左右に割り開かれ、伸びた肛門に亀頭を押し当てられる。先走りが触れ、濡れた音が響いた。 　というか、待て、もしかしてこれって。 「俺のこれ、今からアンタのケツに突っ込むから」 　背後、覆いかぶさってくるナハト。 　そして耳元で囁かれるその言葉に固まった。