人間の人体には許容範囲というものがあり、俺の肉体ははその許容をとっくに通り越しているのではないだろうか。 　まだ自分が生きていることが不思議なほどだった。 「っん゛ッ！　ふ、ぅ゛……ッ！　う゛、ん゛うう……ッ！！」 「ッ、良平、……ッ、は、お前のナカ……っ熱すぎんだろ、……ックソ、締め付け過ぎだ……っ！」 「っじ、ぬ゛……ッ、も゛、抜い゛ッ、おがじ……っ、ぐ、なる……ぅ゛……ッ！」 「っ、なっちまえよ、オラ！」 「お゛……ッ」 　ノクシャスが満足するまでに何度イッたのかすらもわからなかった。疲弊し、指先一本すら動かせない俺の体を捕まえたままノクシャスは筋張った太い性器で何度も何度も粘膜を摩擦されれば中の感覚も馬鹿になってくる。 　空気が、吹き掛かる吐息にすら反応してしまいそうなほど全身の神経は鋭利になっていた。そんな状態で執拗に直腸まで届くその太く長い性器で穿かれ続ける。 「良平ァ……っ、テメェ、雑魚一般人のくせにケツの穴だけは悪くねえじゃねえな。そのまましっかり咥えとけよ、もっと良くしてやる……ッ！」 「ぉ゛……ッ、あ゛……ッ！」 「……っ、また呼吸忘れてんじゃねえか、おい死ぬぞ」 「っ、ふ……ッう、ぅ゛……ッ」 　腹の中で音が、空気が混ざるような音とともにストロークの感覚は短くなっていく。 　唇を重ねられながらも、肉が潰れるような音ともに執拗に奥を抉られる。射精するものもなくなった睾丸と頭を擡げたそこが震え、滴る己の体液が辺りに飛び散る。 　振り落とされないようにノクシャスにしがみつくことが俺にできることだった。絶え間なく内側から与え続けられる刺激に常に快感値は溜まっていく。そんな状態で更に奥を圧し開かれた瞬間、幾度とない絶頂で緩くなっていた尿道が開くのを感じた。 　漏れる、と思ったときにはなにもかも手遅れだった。全身から力が抜けるような感覚とともに、尿道から水のような体液が勢いよく吹き出した。勢いを制御することなどできなかった。勢いよく飛んだそれはノクシャスの胴体、そして顔を汚すのだ。 　少しだけ驚いたような顔をしたノクシャスだったが、頬を汚すそれを指で拭い、牙を剥き出しにして笑った。 「っ、は、お前……っ、まじかよ」 　こんな粗相、殺されるのではないかと思ったが、ノクシャスの反応は寧ろ楽しそうだった。 「あ゛、あ゛……ッ！　ひ、ご、めんなひゃ、ぃ゛……ッ！　ぉ、おれ、ッ、おれ」 「……ッ俺は嫌いじゃねえぞ、もっと見せろよ、テメェの恥ずかしいとこ」 「っうご、かな……ッ、ぃ゛、ぐ……ッ！　イグ、も゛……ッ！」 　興奮したように先程よりも更にピストンは大胆になる。脳味噌を直接性器で掻き回されるような前後不覚の状態の中、与え続けられる快感に最早全身は小刻みな痙攣が止まらなかった。 「っ、ぉ゛、ぐ、ぉぐ、も、や゛……ッ！　おがじぐなる゛ぅ゛……ッ！」 「なれよ……ッ、ぶっ壊れろよ、そしたら俺が可愛がってやる……ッ！」 「ぅ゛、ぎひ゛ぃい……ッ！」 　耳朶を噛まれ、耳の凹凸に這わされる舌。耳の穴まで舐められ、流れる唾液とその生々しい音から逃れることもできなかった。 「っひ、ぅ、ぐ……ッ、うう゛……ッ！！」 　犬のように呼吸を繰り返すことが精一杯だった。 　ぐるぐると回る視界の中、結合部からノクシャスの性器を覆う血管が脈打つのを感じた。熱が、硬度が、射精が近いのを報せる。 　だからと言ってがっちりと腰に回された腕に抱き竦められたこの状況で逃げることなどできるはずもなく、ただそれを受け入れることしかできなかった。 「ッ、あ゛」 「……っ、しっかり、受け止めろよ良平」 「は、ひ……ィ゛……ッ！！」 　両腿を掴まれたまま、ノクシャスの重量がのしかかる。体重とともに更に深く挿入されるそれに目の前が眩んだのと“それ”はほぼ同時だった。 　ドクンと一層大きく鼓動が響いた次の瞬間、腹の奥に勢いよく注がれる大量の熱に背筋がぶるりと震えた。 「っ、ふ、う゛、うぅ……ッ！！」 　あまりの量に許容できず、膨れ上がった腹に頭が、体までもどうにかなりそうだった。口から精液が出てくるのではないかと思うほどのその質量に慣れる前に、深く息を吐いたノクシャスは長い射精を終える前に再び腰を動かし始めるのだ。 「っ、待っ、う゛ッ、ひッ、ぃ゛……ッ！！」 　たぷたぷの腹の中を性器でかき回される度に粘着性のある水音が体内いっぱいに響いた。勿論、限界まで精液で満たされた状態でピストンされれば無事であるはずもない。ごぷ、どぷ、と恥ずかしい音を立てながら己の下腹部から溢れるノクシャスの精液が下腹部を汚す。 「ぉ゛……ッ！　ま゛ッ、あ……！」 「……っ、は……ッ」 「あ゛っ、ま゛っ、うごなひ、どまっで、止ま゛ッ、ッぁ、あ゛う……ッ！」 「止まれるわけねえだろ……ッ、誘ったテメェが悪いんだろうが、責任とって俺の玉空っぽになるまで付き合えよッ！」 「ぉ゛、う゛ひ」 　腰を打ち付けられると同時に精液が飛び散り、先程よりも更に滑りやすくなった体内、精液を塗り込むように腰を動かすノクシャスに俺はただ目の前が真っ暗になっていく。 「……ッ、逃げられると思うなよ」 　がっちりと抱き締められた下腹部。乱れた前髪の下、ノクシャスに見つめられるだけで下腹部がぎゅっと締まる。 　酒を飲んでも呑まれるな、とは昔から言われてきていたことなのに。 　自業自得だとイマジナリーナハトは呆れ果てる。 　俺も、そう思う。