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15※
メインストリートから外れた道にあるホテルの一室、俺は望眼とセックスをしていた。
言い訳をさせてほしい。
最初は本当にそこまでガッツリとするつもりはなかったし、そもそも口とか手だけでさっと抜くだけのつもりだったのだ。それは本当だ。
だから最悪どこか二人きりになれる場所に行ければ、となったときに望眼に連れて行かれたのはホテルで、「あれ?」と思ってる間に入室して抜くだけのつもりがたくさんキスされて服も脱がされていく。
望眼を気持ちよくするだけのつもりだったのに気付けば俺の方が気持ちよくなって、正常な思考が働かなくなり――そして現在に至る。
「……っぁ、あ……ッ! も、ちめさ……ッ、ん……ッ!」
スーツも下着も脱がされたベッドの上、潤滑剤でたっぷりと濡らされた肛門は昨夜の行為ですっかり柔らかくなっており、挿入行為自体に苦痛を感じることもなくなっていた。
それがなによりも悪手だったのだ。
抽挿される度に腰が震え、なにも考えられなくなる。快感に耐えられず、まだまともに触れられていなかった性器は頭を擡げ、ピストンに合わせてふるふると揺れていた。その先端からは先走りがとろりと滲み、奥を亀頭で押し上げられる度にその快感は増し分泌液も増す。
「ふ、ぅ゛……ッ!」
「良平……っ」
「も、ちめしゃ……ぁ゛……ッ、ひ、う゛……っ!」
『疲れたら言えよ。無理させたくないし、嫌なときも言ってくれたらすぐやめるから』
部屋に入って大きなベッドに押し倒され、服を脱がしながら望眼は言った。そのときは俺も望眼もまだ多分“まとも”だったのだ。
けど、今ならば分かる。あれだ、歯医者さんで「痛かったら手を上げてくださいね」と言われるやつと同じなのだと。
体内で既に一回出されたものと潤滑剤が混ざり合い、耳を塞ぎたくなるような音が結合部、体内から発せられる。手足が痺れるほどの快感に耐えられず目の前の望眼の首に頭を回せば、興奮したように息を飲んだ望眼にキスをされた。
「……っ、ん゛、ぅ゛……っ!」
「っ、は、やっぱり、俺達の相性最高だよなぁ……? なあ、良平……ッ」
「ん゛ひ、ぅ、あ゛……っ、うご、かないで、くださ……っ、ぁ゛……ッ!」
唾液を啜られ、唇を吸われる。
体内の管の形を作り変えるように腰を動かされれば、長いストロークに耐えられずに震える喉から溢れる悲鳴を止めることはできなかった。
緩急つけて体の奥の奥まで嬲られる。逃げようとすれば覆いかぶさってくる望眼にキスをされ、つい開いてしまう下半身を更に責め立てられるのだ。
「ふ……ッ、ぅ゛……ッ、んん……ッ!」
「良平、お前可愛いな……本当」
「う、……ゃ……」
「頑張って俺に応えようとしてくれんの、まじで堪んねえわ……ッ」
「も、ちめさ……ッ、ぁ゛、う、ひ……ッ!」
熱い、触れられてるところもナカも。
がっちりと腰を掴まれたまま奥までみっちりとハメられ、次第に荒くなる腰遣いに耐えきれずに望眼にしがみつくのが精一杯になる。
声を上げることもできない。
粘膜を擦り上げられる度に快感は更に増していき、痙攣する下半身に望眼は息を飲む。体内で更に太さを増す望眼のものに、我慢することすらもできなかった。
「良平」と耳元で名前を何度も囁かれながら奥を犯される。このあとのことなど考えられなくなりながらも俺は望眼のキスに応えた。
それから、さらに時間は経過する。
「お……おい、良平……? 大丈夫か?」
「……らいじょうぶ……じゃ……ない、れす」
「あー、悪かった。無理して声出させて悪かった。ほら、水飲め水」
ガラッガラに枯れた声。
望眼が用意してくれた水の入ったボトルごと唇に押し当てられ、そのまま「んぐぐ」と飲まされる。
火照った体にはまだ痺れるような名残が残っており、ベッドに座る望眼に体を抱き起こされ、そのまま肩を抱かれただけで反応してしまいそうになるのだ。これはどうしようもない。
望眼さん、と隣の先輩を見上げれば、望眼はばつが悪そうな顔をした。
「……悪い、手加減したつもりだったんだけど」
寧ろしてたのか、あれで。
「望眼さん、俺……立てないです」
「あー、悪かった。ここ、泊まってってもいいから。ほら、寝とけ」
よしよしと肩と背中を撫でられればつい暖かくなってうつらうつらしそうになってしまったが、脳裏にナハトの顔が浮かんだ。
昨日も望眼の部屋に泊まることになってしまったし、流石に二日も部屋に帰らないのはまずい。
ナハトやモルグにも筒抜けだったし、そのまま兄のところまで報告がいく可能性を考えたら冷や汗が滲んだ。
「望眼さん、俺……やっぱり今日は帰ります」
それに、望眼の好意に甘えるわけにもいかない。
そう断れば、少しだけ望眼が傷付いたような顔をするのを見てハッとする。
「あの、望眼さんと一緒にいるのが嫌とかじゃなくて……」
「あー、分かってる分かってる。……そうだよな、お前にもお前の都合があるわけだし」
「望眼さん……」
「ま、風呂くらいは入ってもいいだろ? ……そのままじゃ気持ち悪いだろ」
確かに、流石に汗やらなんやらで汚れた体の上からスーツを着るのには抵抗があった。
頷き返せば、望眼は「だよな」と笑った。その笑顔は安心したようにも見えた。
そして、望眼が用意してくれた風呂で汗を流すことになった俺だった。
が。
――浴室。
「……っ、ぁ、ん、んうう……っ!」
男二人浴槽の湯船に浸かったまま、望眼の膝に座らせられた俺は何故だが望眼に胸を揉まれていた。
背後、項に感じる吐息の熱と、時折押し付けられる望眼の唇の感触に身体は震える。
「良平、やっぱり帰るのか?」
「っ、は、……か、帰ります……」
「本当に?」
微かに膨らんだ乳首の先端を乳輪ごと柔らかく絞られた瞬間、「んんっ」と身体が仰け反った。
さっきも答えたばっかりなのに、それも納得したような望眼はどこに行ったのか。
湯船の熱に火照った身体は水気で更にふにゃふにゃになっているようだった。
片方の胸の突起も、くるくると周辺の柔らかくなった薄い皮膚をくすぐられるだけで全身が震える。
「ぁ、も、お、俺……上がります……」
「未だ身体、全然洗ってないだろ」
「だ、って、そこばっか……ひ、ぅ……っ!」
言った側から、今度は散々引っ張ったそこを指の先でカリカリと引っかかれ、潰されては芯を持つそこを更に擽られる。
直接射精に繋がらないもどかしい微弱な快感は幾重にも重なっていくようだ、浴槽から上がろうと浮かした腰に望眼の腕が回され、再び望眼の膝の上に座らせられた。
「っ、ふ、ぅ」
矢先、小さく波立つ浴槽。
そして隠すものもなく、剥き出しになった臀部に押し付けられるその硬い感触に息が漏れる。
――勃起してる。あんなにしたのに、もう。
「……っ、望眼さん、だ、駄目です……」
「わかった、わかったから。……挿れないから、このまま触ってていいか?」
「っ、ん、そ、んなこと……したって……」
「因みに俺は全然イケる」
谷間の下、割れ目に添えるように押し付けられる望眼のモノから意識を逸らすことはできなかった。
仮にも先輩である望眼にそんなことさせてもいいのかと思う反面、ここで流されては駄目だという理性もあった。
けど、コリコリと執拗に乳首を伸ばしながら揉まれ、耳の溝の凹凸を舐められるだけであっと言う間にどこかへと消え去った。
「っ、は、ぁ……っ、お、お風呂……体洗うだけだって、望眼さん……」
「だからほら、洗うだけだな」
「ん、う……っ」
ボディーソープを追加され、そのまま白みががかったソープを胸全体に塗り込むように大きな手のひらが這わされた。
無骨な手が乳首を掠めるだけで背筋が震え、その反応を見逃さなかった望眼は再び執拗にそのまま胸を揉むように刺激してくるのだ。
最初は違和感しかなかったのに、執拗に触られている内に違和感は大きくなって、気付けばお湯の中、自分のものが頭を擡げていることに気付いて余計顔が熱くなった。
望眼にはバレないようにしなければ、と思った矢先、腰に回されていた望眼の手がそのまま下腹部に伸ばされる。
お湯の中、固くなったなったそこを指ですり、と撫でられ、思わず内股になる俺。そんな俺を見て、「どうした?」と笑うのだ。意地の悪い笑顔だ。
「っ、そこは、綺麗にしなくて大丈夫です……」
「遠慮するなよ、今更だろ?」
「だって、望眼さんの触り方……っ、ん、ぅ……ッ!」
言った側から二本の指で乳首を挟められ、そのまま胸を柔らかく揉まれれば、ピリピリとした甘い感覚が胸の奥に広がっていく。
ソープ特有のぬめりが余計いやらしくて、照明に照らされる胸や望眼が手を動かす度にぬちぬちと恥ずかしい音が浴室内に響いて余計逆上せてしまいそうだった。
「ぁ、や……っ、」
「俺の触り方がなんだって?」
「っ、う、も、望眼さん……っ、ん、……っ」
「俺は可愛い後輩の身体を労ってるだけだって」
「な?」と耳を吸われ、首筋を舐められる。先程よりも明らかに大きくなる尻の下のもの。
この流れはまずい、と思いながらも、俺自身抵抗する気力も理性もまだ取り戻せていなかった。
「も、ちめさん……っ、ん、ぅ……っ」
もやがかったような思考の中、胸に這わされた望眼の手を掴んで離そうとするが、乳頭を柔らかく潰すように弄られれば力が抜け落ちそうになった。
ぬるぬると滑る指先が余計生々しさを増し、これ以上はまずいと浴槽から上がろうと縁を掴んだところに更に無防備になった乳首を執拗に引っ掻かれたと思えば、今度は優しく揉まれる。
散々胸を弄られ、全身の神経が胸の先端に集まっていく中、緩急つけて執拗に敏感になった凝りを刺激され続ければ正常な判断などできるわけがなかった。
「っ、は、……っ、ぁ……っ、ん……ッ!」
「は……良平、お前本当えっろいわ……胸弄られてこんな風にならねえよ、普通」
「そ、んな……っ、んッ、望眼さんが、変な触り方するから……っ!」
「それだけじゃないだろ、絶対」
ようやく乳首から指が離れたと思った瞬間、今度は反対側の乳首を撫でられる。片胸だけを弄られただけにも関わらず、同様宙へ向かってぴんと尖ったそこは乳頭の薄皮を擦れるだけで恐ろしいほど感じてしまう。
「望眼さん」と震える声で背後の男を見上げれば、何を勘違いしたのか望眼は俺に唇を寄せた。
「っ、ふ、……ッ、ぅ……んん……っ」
ちゃぷ、と音を立てながら波が立つ浴槽。唇を重ねるように吸われ、恋人か何かのように今度は触れるようなキスをされる。
そのまま下腹部、足の付け根を撫でていたもう片方の手がゆっくりと俺の下半身を開こうとするのだ。
股間を隠すことも忘れて、されるがまま割られた股の奥、先程まで望眼に犯されていた穴を柔らかく撫でられ呼吸が浅くなる。
執拗な抽挿にすっかり盛り上がった肛門周辺の肉を広げようとしてくる望眼の指。慌てて膝を擦り合わせ、足を閉じようとするが敵わなかった。
「は、……っ、ぅ……ッ、んん……っ!」
「ちゃんと、ここもキレイにしなきゃな」
「っその言い方、なんか……えっちで嫌です」
そう、じとりと望眼を見た時。
「エロい事して何言ってんだよ」と望眼は興奮したように笑い、そしてそのまま湯船の中、俺の身体を抱き込むように腕に力を入れてくるのだ。
瞬間、先程よりも更に近くなった望眼の性器の感触。望眼の上に跨がらされたお陰で下を向けば自分の足の間、ぴょんと跳ねるように勃起したその下から生えてくる望眼の太い性器が見え、ぎょっとした。
「ん、う……っ! ぁ、や、お、押し付けないでください……っ! は、はいっちゃうので……っ!」
「……っ、ハ、大丈夫だって。それより、ほら、動くなよ。ナカ、キレイにしてやるからな」
「ぅ、ひ……っ!」
広がった肛門にお湯とともに入ってくる望眼の指。その感触のあまりの生々しさに驚いて飛び上がりそうになったが、更に腰を掴まれ、望眼の膝の上でM字開脚をするみたいな恥ずかしい格好で抱きこまれてしまう。
「っ、や、も、もちめさ……っ、ん、こ、この格好……ッ」
「恥ずかしいのか? おかしいな、さっきまでもっと恥ずかしいことしてたのに」
「ぉ、お風呂とは……また違います、から……っ、ん、ちょ……っ、ゆ、指……入って……ッ!」
「そりゃ、キレイにするって言ったろ?」
「奥までちゃんと擦ってやるからな」なんて、笑う望眼を見て確信した。
この人、絶対スイッチ入ってる。
重力もない水中の中では抵抗すらも無意味に等しい。抱えられた股の奥で望眼の指が入ってくるのを感じながら、俺はたまらず逃げようとしては背後の望眼にもたれ掛かる。
「も、ちめさん……っ、ん、……っ!」
「……っ、は、」
「ん、ぅ……っ」
息をするようにキスをしてくる望眼に気を取られている間にも二本目の指を挿入される。痛みも苦しさもなく、挿入されている異物感だけな確かにあった。
一応はちゃんと本当にキレイにしてくれているらしい、粘膜を優しく刺激されるが、これではお風呂に入った意味がないのではないか。そんなことを思いながらも結局流され、俺は望眼の腕の中、身を委ねることにしたのだ。
それから更に数分後。
再び一からシャワーを浴び直すことになる羽目になったのは言うまでもない。
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