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22※
「……っ、ん、う……っ」
手を抑えられたまま、ナハトにキスをされる。
恥ずかしくてどうにかなりそうだった。それでも、ナハトは逃げることも顔を反らすことも許してくれない。
次第に深くなる口付けに呼吸が浅くなり、心臓はドクドクと脈打つ。
そして長いキスのあと、ナハトは俺から唇を離した。それなのにまだ唇にナハトの熱が残っているようで、無意識にナハトの唇を目で追ってしまう。
そして、ナハトと視線がぶつかった。眉間に深い皺を寄せたまま、ナハトは俺を見ていた。
「……っ、な、ナハトさん……っ」
「――……ムカつく」
「や、……っ」
「他のやつはいいくせに、俺はやなの。……なにそれ」
ナハトの手がネクタイを緩め、引き抜く。そのまま着ていたスーツを脱がされそうになり、慌てて俺はナハトの手を掴んだ。
「……っ、ぁ、あの……っ! ナハトさ、ぃ、今は……っ」
今は、まずいです。
そう、先程までの望眼との行為の形跡が色濃く残った身体を思い出す。それをナハトに見られたくなくて、慌ててナハトを止めようとするが俺がナハトに敵うわけがなく、呆気なく服を脱がされるハメになる。
ボタンを外され、開くシャツの下。ナハトの視線が突き刺さるほど痛かった。
「み、見ないで……ください……っ」
「……なに、一応は恥はあるんだ?」
「こんなところにびっしりキスマークつけられてるけど」とコメカミをひくつかせるナハトにそのままぺろりとシャツの裾を持ち上げられれば、胸元を中心に残った鬱血痕にナハトの指が這わされる。
「……っ、ん、ぅ……っ!」
そしてそのまま上塗りするようにナハトの唇が寄せられ、ちう、と音を立てて強く吸われれば堪らず声が震えた。ちくりと刺すような痛みに震え、「ナハトさん」とその薄い肩を掴んで押し返そうとするが、びくともしない。
それどころか、そのまま胸元から腹部まで辿るように落ちる唇の感触に身体が震えた。
「ぃ、まっ、待ってくださ、ナハトさん……っ!」
「やだ」
「な、……ッん、ぅ……っ!」
俺のこと好きだって言ったのに、と恥ずかしさといたたまれなさで泣きそうになる俺を見上げ、そのままナハトは俺のベルトを緩めるのだ。
「だめですっ」と慌ててベルト掴もうとする手も片手で掴まれ、そのまま盛り上がっていたフロント部分を指で撫でられ、「ひう」と声が漏れた。
「っ、な、ナハトさん……っだ、だめ……」
「そういう割にはちゃんと反応してるの、なに?」
「まだ何もしてないのに」と笑うナハトに首の周りが熱くなるのを感じた。ファスナーを降ろされ、そのまま寛げられるパンツの下、染みを滲ませたそこをナハトに摘まれる。そのまま下着を引っ張るようにずり下げられそうになり、慌てて俺は下着のウエストを手で抑えた。
そのときだ。代わりに腿を掴まれ、軽く持ち上げられる。片足を広げられ、自然と捲れそうになる裾の隙間、ナハトの華奢な指が滑り込んでくるのを見て息を飲む。
「っ、ぅ、あ……っ、ぁ、や……っ」
散々望眼に犯され、柔らかく鳴っていたそこは難なくナハトの指を飲み込むのだ。それを見て、苛ついたようにナハトは舌打ちをする。
荒っぽい動作で二本目の指がねじ込まれ、柔らかくなった内壁を刺激するように掻き回され堪らず声が漏れた。
「ここ、こんなところにも跡ついてんの、何?」
持ち上げられた片足、その内腿を指先で押されるだけで呼吸は浅くなる。閉じることも許されない体勢のまま中を愛撫され続けられれば一人でに立ったままでいることなど不可能に等しい。
「ゃ、ん、ぅ……っ! な、ナハトさん……っ、待って……ッ! ぁ……っ!」
「どこもかしこも触らせまくってんじゃないよ、ねえ」
「ぁ、く、うんん……ッ!」
「腹立つ、本当に」
耳元、囁かれる声に背筋が震える。
壁とナハトの体に挟まれたまま、長く細い指から繰り出される執拗な愛撫から逃げることも許されないままあっという間にイカされる。片足のみで立ってられない身体をナハトに抱き込まれたまま浅いところを重点的に責め立てられた身体。快感の余韻に浸る暇もなく、ナカに挿入された二本の指は柔らかくなっていた肛門を大きく左右に割り広げる。
「は、ぁ……っ、ナハトさん……っ」
「……この前は初めてだって言ってたっけ。で? 今は何回目?」
「ぁ、ん、う゛……っ! そ、んなこと――……お゛っ」
言えないです、と言いかぇた矢先、更に残りの指が中に挿入され息を飲む。関節に引っ掛かりそうになるのも無視して指の付け根まで一気にねじ込まれるナハトの指に全身が凍り付く。
「ま、……な、なはと、さ……待って、ま……ぁ゛……ッ!」
「やだ」とナハトが唇を動かしたのと、更に体の奥へとナハトが手をねじ込んできたのはほぼ同時だった。指の付け根を通り過ぎ、いくら細身とは言えど男の手が入ってくる感覚に打ち震えた。
限界まで広がった状態でナハトの掌を半分まで挿入された状態でもっと奥、普段指で触れられることのないような場所を複数の指で内側から撫でられる。悲鳴のような声が漏れそうになるのをナハトにキスをされ、塞がれた。
「ん、ふ……っ、う゛……ッ」
まだ乾ききっていなかった内部をナハトの手によってぐちゃぐちゃに掻き回され、前立腺ごと内壁全体を摩擦される。下半身を集中して責め立てられ、過敏になっているそこへの容赦ない愛撫に床の上へと崩れ落ちそうになりながらもナハトによって無理矢理支えられたまま凝り固まったシコリを潰され、拍子に押し上げられた膀胱からは溜まっていた体液が勢いよく噴き出す。己の体液で濡れ、痙攣起こす俺の下腹部を一瞥したナハトは咥内で小さく笑う。
――いつの日か見た、嗜虐的なあの笑みを浮かべて。
「ん゛、ぅ゛! ふーっ、う゛……っ!!」
休む暇もなく何度も指でイカされる。
それでいて、一度もまともに性器に触れることは許してもらえなかった。
ナハトに両手首を拘束され、びくっびくっと魚かなにかのように跳ねる下半身を捉えられたまま更に深く飲み込んだ指で前立腺を潰される。
その都度亀頭と胸の先、限界まで勃起した乳首が痺れ、痛くなった。
「にゃ、な、ナハトさん、ご、めんなひゃ……」
「……なにが?」
「うっ、ぁ、あ……も、やだ……っ、い、イキたくない……っ、い゛ぐ……ッ!!」
「なにがゴメンナサイなわけ?」
「ぁ、あ゛ッ、ぐひ……ッ!」
自分が射精しているのか、それとも漏らしているのかも分からないほど意識は朦朧としていた。
中をぐっぽりと広げられたまま、あれほど圧迫感を感じていたナハトの手にも慣れ始めた頃。
音を立てながら中を出し入れする拳に中を擦られ、目の前が霞む。
「っ、ぁ゛、ひ、う゛うぅ……っ!」
「俺だけって言いなよ」
「ぁ゛っ、は、や゛……、ぁ……ッ」
「他の男に簡単に触らせるな」
「く、ひ……ッ!!」
ぐぷぐぽと空気が漏れるような品のない音を立てながら出し入れされるナハトの手に、形を変えられるほど柔らかくなったそこは執拗な摩擦のあまり腫れ上がり、より一層過敏な状態になっていた。
ぷっくりと腫れた前立腺を掠めるだけで下半身がビクビクと震え、尿意に似た感覚が途絶えることなくこみ上げてくる。
「は、ぁ、あ゛……ッ!」
性器を触りたい。擦って気持ちよくなりたい。
そうむずむずする下半身だが、ナハトは自分で触れることを許してくれなかった。
生殺しのような状態で、それでもしっかりと与えられる快感に心身は疲弊しきっていた。
――ナハトが何を言ってるのか半分以上分からなかったが、怒ってるナハトは怖い。
好きだって言ってくれたのに、俺がちゃんと上手く答えられなかったからこんな目に遭わされてるのだろうか。
震えながら、ナハトの胸に擦りより「ごめんなさい」と繰り返せば、ナハトは小さく息を飲んだ。
「あんたって、本当さあ……っ」
「っ、ぅ、あ……っ!」
瞬間、ずるりと引き抜かれる指に腰が抜けそうになるのをナハトに支えられる。
余韻に浸る暇もなかった。
ぽっかりと口を開けたままの肛門に押し当てられる熱を感じ、思わず視線を下ろした俺はそのまま息を飲む。
開かれた股の間、宛がわれるのはナハトのもので。はち切れんばかりに大きくなったナハトの性器が口に押し付けられる。
ぬぷ、と濡れた亀頭を埋め込まれるだけで喉の奥から声が漏れそうになり、堪らず俺はナハトにしがみつく代わりにくっついた。
「まっ、ぁ、い、今は……っ、だ、だめです……っ」
「奇遇だね。……俺も、今は無理かも」
「っ、ぁ、あ……ッ!」
逃げようとしても腰が抜けてしまい、自重により寄り深く入り込んでくる性器に全身が打ち震える。
腫れ上がった粘膜をエラ張った亀頭でゆっくりと拡げられ、逃げようと腰を浮かそうとすればナハトに腕を手綱のように掴まれ、更に深く腰を押し進められるのだ。
「は、ぁ……っ、う……ッ! ひ、」
「……っ、は」
「ぁ、な、はとさ……っ、んん……っ!」
散々解された中は挿入される異物を容易に飲み込んでいく。
それでもやはり、指とは比べ物にならない太さと熱量を孕んだもので粘膜を摩擦されるのとでは違う。
性器を出し入れされる度に内臓がひっくり返るような感覚に襲われながら、次第に激しさを増すピストンに耐えられず腰が震えた。
「っ、ぁ、ん、っ、ふ、……っぅ゛……ッ!!」
「良平」と耳元で名前を呼ばれるだけで心臓が震える。恥ずかしさも快感に上塗りされ、亀頭の凹凸部分で中を掻き回されるだけでなにも考えられなくなる。
ただナハトの声が、触れる箇所から流れ込んでくる熱が酷く熱くて、朦朧とする頭の中、声を我慢することもできずにひたすらナハトに縋ることしかできなかった。
「なっ、ナハトさ、ぁ゛……っ! ぁ、あ……っ!」
最奥を亀頭でこすられるだけで呆気なく全身は震え、最早何度目かもわからないほどの快感に溺れる。空っぽになった睾丸は引っ張られ、頭を擡げた性器からはなにももう出ない。それでも健気に快感を拾い上げては、揺さぶられる下腹部に合わせて性器が震えた。
「っ、ぁ、ッ、ひ……ッ!」
「……っ、きもちい? 良平……っ」
「ぁ、わか、んな……ぁ゛ッ、ひ、な、はとさ……っ、ぁ゛、だ、だめ……ッ! ぅう……ッ!!」
もうなにがなんだか分からない顔面あらゆる汁でどろどろになっている状態でナハトにキスされる。こんな恥ずかしい顔見られたくないのに、顔を逸そうとしてもナハトは許してくれなかった。
唇を重ねられ、噛み付くように何度もしがみつかれ、そのまま犯される。「良平」と耳元で名前を呼ばれるたびに頭の中が更にぐちゃぐちゃになっていく。
「ふ、ぅ゛……――ッ!」
ずるりと中に残ったものを掻き出すかのようにカリまで性器を抜いたナハトは、そのまま一気に奥まで貫いた。瞬間、頭の中が真っ白になる。舌を噛んでしまいそうになるが、それほどの力も残っていなかった。
ビクビクと痙攣する下腹部、ナハトのものが更に腹の中で大きくなるのを感じ、目の前が白く眩んだ。
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