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開いたままの扉から、サディークはよろよろと出ていった。そのまま自然と閉まる扉。すぐに外からは鍵をかけられる音が聞こえた。
せめて服を着せてほしかったが、贅沢は言ってられない。
サディークの協力が必要なのに、どうしても上手くいかない。
それにしてもサディークが言っていた能力が効かないってやつ、どういうことだろうか。念の為に細工を施されていたということか?
なんとか兄のことまでバレずには済んだが、サディークには色んな人たちとの関係が知られてしまった。
「……はあ」
思わずため息を吐き、いけないと慌てて頭を横に振る。
こんなところで落ち込んでる場合ではない。サディークの協力が得られなかったとしても、俺にやれることはあるはずだ。
せめてトリッド――紅音と、会えればそれだけで任務は達成したようなものだ。
肝心の紅音の気配が微塵も感じられないのが恐ろしかったが、一まずは他の部屋の様子も知りたいところだ。
どうしようか、と考えていたときだった。
いきなり下半身の辺りでもぞりと何かが動く気配がした。
そして次の瞬間。
「ひ、う……っ!」
にゅる、といきなり足元から生えてきた真っ黒い触手に股を擦り上げられ息が止まりそうになる。
これは、確か……。
「“ステイ”だよ、……君たち」
静かに開いた扉の向こうから現れた、黒尽くめの男の声にハッとした。
この人は確か羽虫と呼ばれてた人だ。ぬめぬめと皮膚の上を滑るように絡みついていた触手たちは、羽虫の言葉に反応するみたいに俺の下半身にまとわりついた状態で動きを止めるのだった。
「羽虫、さん」
「ああ、僕の名前……覚えててくれたんだ」
「嬉しいよ、良平君」と羽虫は僅かに真っ黒な目を細めてみせる。どうやらそれが彼なりの笑顔だったらしい。
デッドエンドとはまた違う、寧ろ対極的な位置にいる羽虫がやってきたことにより先程とはまた別の緊張がやってくる。
「あ、あの……」
「……やっぱり、サディークの言ったとおりだ」
「え?」
「この子達、君によく懐いてるみたいだね」
「……っ、ぁ……」
羽虫の言葉に反応するように、足首から太腿まで絡みついてくる無数の触手に身動ぐ。
濡れた触手が動くたび、ぬち、と部屋の中に恥ずかしい音が響くのだ。
「遊んでくれるから嬉しい、ということらしい。……気持ちいいところを撫でて、くるくるされるとこの子達は喜ぶ」
「ん、ぅ……っ」
「……それにしても、怪我が増えているようだね。もしかして、デッドになにかされた?」
目の前までやってきた羽虫はそのまま俺の前にゆっくりと座り込む。
下半身を覆う触手の群れはそのまま腰から胴体までゆっくりと伸びていき、シャツの下、胸を柔らかく撫でられれば声が漏れそうになってしまった。
「この触手から分泌される液には治癒効果がある。この子達は君の身体を癒やそうとしてるだけだ、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」
「ぁ、あの……大した怪我ではないので、その……だいじょ、うぶ……です……っ」
「僕がしたくてしているだけ。……君は大事な預かり物だからね」
「ぁ、あ、……っ、ありがとう……ござ、います……っ」
言ってるそばから、ゆっくりと左右に開かれた股の奥、口を開いたままになっていた肛門にキスする触手に息を飲む。思わず口を手で押さえた次の瞬間、つぷりと音を立てて触手が細い頭を中へと挿れてきた。
「っ、んぅ……っ!」
羽虫の目の前で、いや、これただの治療行為であり俺のためを思っての行動なのだ。
現に、羽虫からはデッドエンドから感じたような敵意は感じない。それどころか、「大丈夫?」と心配そうに覗き込んでくる羽虫に俺はこくこくと頷くことが精一杯だった。
「は、ぅ……っ、んん……っ!」
「息を吐いて、下半身から力を抜くといいよ」
「は、は……っ、はい……っふ、」
「……うん、そう。上手だね」
瞬間、入り口のところで留まっていた触手が一気にずりゅ、と奥まで入ってくる。堪らずのけぞれば、バランス崩して倒れそうになったところを羽虫に抱きかかえられた。
「ぁ、……っ、ぅ、ご、めんなさ……っ」
「問題ないよ。……それよりも、体温が高いようだ。……脈も早い」
「ん、ぅ」
胸に伸びた触手は口を開き、そのままツンと尖っていた突起全体を咥える。感じたことのない感覚に驚く暇もなく、そのままちゅうちゅうと乳首を吸い上げられる。
瞬間、頭の奥からどろりと熱が広がった。
「……っ、ぅ、ん」
「そのまま力を抜いて。……大丈夫、楽にして、息をするんだ」
「声を我慢する必要もない」と、ぽそぽそと耳元で囁かれる低い声は心地よく、そのまま羽虫に背中を撫でられると触れられた箇所が暖かくなっていくようだ。
体内と乳首、同時に触手に嬲られ、あっという間に芯を持ち始めた性器。滴る先走りを舐めとるように亀頭まであっという間に絡み付いてくる触手に「ぁっ」と声が漏れる。
「ぅ、あ……っ、は、はむしさん……っ」
「いい子だね、良平君は……そのまま。力を入れるとこの子達もびっくりしちゃうから」
「は、はい……っ、ん、ぅ……っ!」
羽虫の声を聞いていると、不思議と心が落ち着いていく。先程まで恥ずかしかったのに、今では羽虫に勃起した性器を見られても羞恥心は感じなかった。
それは羽虫が俺を受け入れてくれているからだ、とすぐに理解する。
「は、ぁ……っ、ん、う……っ!!」
そして、触手たちによってあっという間に絶頂まで追い詰められ、持ち上がった先端からは出涸らしのような精液が溢れ出した。
力なく垂れる薄い精液、それに群がるように触手たちが下半身に集まっていく。
「う、わ、あ……っ、あ、……っ!」
そのまま触手たちに呑まれそうになったとき、羽虫は指をぱちんと鳴らした。瞬間、ぴたりと動きを止めた触手たちはすごすごと地面の中へと潜っていくのだ。
身体を支えていた触手たちも消え失せ、羽虫の腕に支えられるような形になったまま俺は射精の余韻に浸っていた。
いつの間にかに、触手のぬめりも消えていた。
至るところに散らかされていた俺の衣類を一匹の触手に拾わせた羽虫は、そのまま俺に下着を着せていく。
「す、すみません……ありがとうございます」
「身体を冷やすのはよくないから。……それに、そろそろ来る」
「来る?」と首を傾げたときだ、扉の外からパタパタと複数の足音が聞こえてきた。
デッドエンドやサディークとはまた違う、軽い足音だ。そして、扉が開いた。
「羽虫さん、もってきたよ!」
現れたのは先程広間で見かけた学生くらいの少年と少女の二人組のヴィランだ。その手には紙袋が握られていて、香ばしい匂いが漂ってくる。
それに気を取られるのも束の間、すぐに自分の格好を思い出した。
「あ……」
「わ……」
「うお」
「………………?」
上から俺、少女、少年、羽虫。
異様な空気が辺りが凍り付いた――ただ一人、羽虫の周囲を除いて。
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