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62※
「お……ッ、まえ……なぁ……」
ビキ、とノクシャスの額に青筋が浮かぶのを見て息を飲む。
肺に溜まった何かを吐き出すように深く溜息を吐くノクシャスだったが、「あの」と俺が声を上げるのとほぼ同時にどかりとベッドに腰を下ろす。その重みの反動に浮き上がりそうになったのも束の間、起き上がろうとした体の上、ノクシャスは覆い被さってきた。
「の、くしゃすさん……?」
「……お前、それ、わざとだよな」
股の間に差し込まれる膝の頭によって足を割り開かれる。寝間着越し、下腹部を柔らかく押し上げられれば流石の俺も気付いた。自分の発言の意図とは別に伝わってしまっているのだと。
「っ、ノクシャスさ……っ、ぅ、んむ……っ」
慌てて撤回しようとするよりも先に、顎を捉えられ、噛み付くように唇を重ねられてしまう。
伸ばした手首を掴まれたまま、頭の上で束ねるかのようにいとも簡単にノクシャスの手によって封じこまれてしまうのだ。
「っ、は、……っ、待っ、んむ……っ、ふ……っ!」
「お前……っ、いつもそうだよな。……わざと煽ってんのか? それ」
「ぅ、ちが、ん……っ! ほ、本当に、そんなつもりは――……ッ」
なかったんです、と言いかけるよりも先に、伸びてきた太くて長い舌に舌ごと絡め取られ、言葉ごと封じこまれた。
包み込まれるように舌全体で絡め取られ、咥内から溢れそうになるほどの唾液をたっぷりと飲まされれば全身が熱くなった。
「ん゛ぅ、う゛……~~ッ」
後頭部をがっしりと掴まれたまま、喉の奥、舌の付け根までずっぽりと伸ばされた舌によって捕食され、文字通り犯される。先程までの穏やかな空気は一変し、覆いかぶさってくるノクシャスに頭をがっちりと掴まれたまま歯の裏側から喉ちんこまで舐られ、ノクシャスでいっぱいにされるのだ。
「テメェは……ッ、どんだけ人が我慢してると思ってんだ? ああ?」
「っご、めんなひゃ……っ」
「それとも、お前の『好き』と『こういうことをする相手』ってのはちげえのかよ。……なあ、良平」
「っ、ん゛……ッ! ふ、ぅ」
引き抜かれた舌に唇から頬まで舐められ、堪らず目の前のノクシャスにしがみついてしまう。
本当にそういう意図はなかったが、俺が悪いのか。止めなければならないのに、そのまま顎を掴まれ黙らせるように口の中にねじ込まれるノクシャスの指を咥えさせられる。
「っ、ふ、ぅ゛」
「……っ、それとも、なんだ? 俺がそんなに優しいやつに見えたのか? ……なぁ」
「ん゛、ん゛んぅ~~ッ!」
口の中、滲む唾液を掻き分け舌を引っ張られる。ノクシャスの指から逃れようとすれば、今度は左耳に這わされるノクシャスの舌に全身が震えた。
「っふ、……っ、ぅ……っ」
「……っ、はー……っ、くそ、人の気も知らねえで……ッ」
苛ついたように耳を噛まれ、耳朶の凹凸から穴まで這わされる舌。ぐちゅぐちゅと頭の中で響く音に、まるで脳まで犯されてるような錯覚を覚えた。
開かされた下半身。熱くなっていた下半身に重なるように押し付けられる硬い感触に、全身がびくりと跳ね上がる。恐る恐る視線を布団の中に向ければ、こちらからも見て分かるくらい大きくテントを張ったノクシャスの性器に全身が一気に熱くなった。
「の、くひゃ、ふひゃ……っ」
ひりつく喉。咄嗟にベッドから這い出ようとするのも束の間、再び腰を掴まれ、強制的にベッドの中へと引きずり込まれる。そして、大きく開かれた股の間に膝立ちになったノクシャスはそのまま浮いた下半身に衣類越し、勃起した性器を押し付けてくるのだ。服の上から肛門を撫でるみたいにいやらしく腰を擦りつけられ、堪らず体が震える。
よくない、これは、本当に――。
「ぁ、……っふ、ぅ……っ!」
ぐに、とノクシャスの硬い掌に尻全体を揉まれ、そのまま肛門を大きく広げられてしまえばあっという間に全神経が下半身、こじ開けられた肛門へと集中する。
まずい、と思うのに、声をあげようとすればするほど口の中から分泌された唾液が唇の端からとろとろと溢れるばかりで、それどころか更に唇を重ねてきたノクシャスにそのまま噛み付くように舌を吸われれば、もうなにも考えることはできなかった。
「……っふ、ぅ、」
「は……っ、くそ、イライラする……なんで、あいつなんだよ……ッ」
「ん、っ、ふー……っ! ぅ、んむ……っ!」
「は、……っ、良平……ッ」
シミが滲む下着ごと履いていた寝間着を引き剥がされ、丸出しになった下半身。先程の洗浄ですでに柔らかくなっていた肛門に気付いたらしいノクシャスは更に苛ついたように舌打ちをし、そのまま肛門に太い指をねじ込んでくるのだ。
「んう゛ぅ……っ! っ、ふ、ぅ……っ!」
「こんな体で、あいつ一人で満足できんのかよ。……なあ、良平」
普通の人よりも節々が太い指数本で肛門を拡げられ、中の奥の奥まで粘膜を刺激される。前立腺をこりこりと指の腹で刺激されるだけで内腿は痺れ、全身の神経が更に尖っていくのがわかった。
朦朧としてくる意識の中、腹の中を出入りするノクシャスの指に犯され、俺はノクシャスの腕にしがみつくのが精一杯だった。
我慢、できるはずだ。はずなのに。
ねちねちと前立腺を揉まれる度に思考が塗り潰され、全身の熱が増す。ノクシャスの言葉に応える隙きも余裕も、俺にはなかった。
まずい、これはまずい。だって、こんなの。
「……っ、ぁ、や、の、くしゃすさ……っ、ひ、ぅ゛……っ!」
がっしりと抱き締められた腕の中、容赦なくノクシャスの指に責め立てられる。ぐっぽりと開いた肛門を押し広げられ、追加される指に乱雑に中をかき回されれば頭の中は真っ白になり、目の前のノクシャスにしがみつくのが精一杯だった。
「……っ、は……っ、名前で呼ぶんじゃねえ」
「ひ……――っ! ぅ……あ、ぁ……ッ!」
「クソ……っ、良平……」
「ん、む……っ」
噛み付くように唇を塞がれ、舌を擦り合わされる。長くて肉厚なノクシャスの舌に舌まで食べられそうになりながらも、「ん、ん」とノクシャスの胸を押し返そうと試みた。
そんな俺に顔をしかめたノクシャスは、そのまま苛ついたように前立腺を指で引っ掛くのだ。
瞬間、頭の中が真っ白になる。
「っは、ぁ、……っ、んむ、……ッ! ふ、――」
指責めに耐えきれず、あっという間に限界まで問い詰められてしまえば逃げることなどできなかった。
「っ、ぅ、く、んんぅ……っ!!」
上手く快感を逃すこともできず、ノクシャスの指を締め付けたままその腕の中で呆気なく絶頂を迎える。
頭を擡げた性器からは透明の先走りだけがとろとろと流れ、絶頂の余韻でかくかくと痙攣する下半身を一瞥したノクシャスは笑った。ヴィランらしい、凶悪な笑みだ。
「は……っ、こんなに簡単に俺の指咥えれるようになったとはな」
「っ、ん、の、くしゃすさ……っ、ぅ」
「すっかり性器じゃねえか、お前のここ」
『ここ』と指でぐるりと内壁を円を描くように撫でられ、びくんと大きく下腹部が震えた。
「あ、ぁ」と呼吸が漏れ、絶頂を迎えたばかりの体が予感に震える。待って下さい、と続けるよりも先に更に奥へと伸びるノクシャスの指に背筋が大きく震えた。
「っ、ん、ぅ、う……っ!」
「中、テメェから絡みついてんの分かってんのか?」
「ち、が、そんなこと……っ、ひ、ぅ……っ!」
「違わねえよ。好きでもねえやつに襲われて、なに反応してんだよ」
「っ、あ、ぁ、ひ……っんむ……っ!」
それは誤解だ。俺は、ノクシャスのことも好きだ。確かに、ナハトのそれとはまた違うかもしれないけど。
そう言いたいのに、言葉を遮るかのように唇を塞がれ、後頭部を押さえつけられてしまえばその先の言葉を口にすることはできなかった。
体を抱き締められたままイッたばかりのそこに追い打ちをかけるように更に執拗に前立腺を愛撫され、膀胱を圧迫され続けて耐えられるほど強靭な理性などなかった。
「っ、ふ、ぅ」
くぐもった声とともに頭を擡げかけていたところから勢いよく放出される体液。ノクシャスの腹部を汚すそれを見て、ノクシャスは笑う。
そして小刻みに痙攣する下半身から指を引き抜かれた瞬間、体から力が抜けるようだった。足を閉じることもできず、呼吸を整えるので精一杯な俺を見下ろしたままノクシャスはぐっぽりと口を開いたままの肛門を撫でた。
「は―っ、ぁ……っ、んん、ぅ……っ!」
「人の気も知らねえで、随分と挑発してくれたじゃねえか」
「っ、ご、めんなしゃ……」
「…………許さねえよ」
「……っ、ぁ、んんぅ……っ」
こうしてキスされるのも何度目だろうか。怒ってるというよりも、なんだかノクシャスが悲しそうに見えてしまうのだ。
俺だって知ってる、ノクシャスは面倒見のいい優しい人だって。そんなノクシャスにこんな真似をさせたのだと思うと申し訳なくなる反面、そこまで思ってくれているのかと場違いな喜びを覚えてしまう。
……これ、多分良くないよな。
「っん、の、くしゃすさん……」
俺よりも一回りはサイズの違うノクシャスの太腿に触れる。硬い筋肉で覆われ、筋張ったそこに伸ばした指をそのままするりとノクシャスの下半身へと伸ばせば、ノクシャスの目が開いた。
良平、と薄く開いた唇から牙が覗くのが見える。
そのまま俺は良平のベルトを緩め、そのままテント張ったパンツの下からノクシャスのものを取り出した。
……相変わらず凶悪だ。
今にもはちきれんばかりに隆起したノクシャスのものに恐る恐る指を伸ばせば、びっしりとまとわりつくように浮かび上がる筋からドクドクと血液が流れるのが伝わってくる。そのままカリの部分にするりと手を伸ばせば、苛ついたようにノクシャスは俺の手首を掴んだ。
「おい……っ」
「……っ、ノクシャスは、勘違いしてます……」
「ああ? ……勘違いだと?」
「は、い……っ、勘違いです」
インナーの下、びくりと腹筋が跳ねる。俺はノクシャスに自ら体を寄せ、そしてそのまま手の中でびきびきと更にのた打つように勃起してるノクシャスの性器を撫でた。
初見時は凡そ俺の付いてるものと同じ部位なのかと見間違えるほどのグロテスクさと恐怖を覚えたが、今となっては一番ノクシャスの感情が顕著に出る部分だ。
ふーっふーっと息を荒くするノクシャスを見上げたまま、顔を寄せる。
「……っ、ノクシャスさんは、俺にとって『好きでもないやつ』ではないので」
「……ッ、良平……」
「確かに、種類は違うかも、しれませんけど……っ、ん、ぅ、……っ俺は、ノクシャスさんのこと――」
その先を言葉にすることはできなかった。額に青筋を浮かべたノクシャスに腕を掴まれたまま抱き締められる。あ、と声を上げる暇もなかった。股の間、口を開いたままひくついていた肛門に宛行われる熱の感触に息を飲んだ。
そして、次の瞬間――。
「っ、ぉ゛、く、ぅう゛……――~~ッ!!」
ずるりと、体内の粘膜を引きずる勢いで脳天まで串刺しにされたような衝撃が走る。
深く、根本まで一気にねじ込まれるノクシャスの性器に頭の中、脳味噌がひっくり返ったみたいになにも考えられなくなった。
ただ、結合部から伝わってくるノクシャスの熱、鼓動だけが生々しくて。
深く息を吐くノクシャスに体を強く抱き締められたまま、更に唇を塞がれる。
「ッ、ん゛、む……っ! う゛、んんん~~ッ!!」
やばい、やばい、これ。
喉まで届いてるのではないかと錯覚してしまいそうなほどの衝撃に一瞬意識が飛びそうになったのも束の間のことだった。ドクドクと脈打つ性器は、そのままずるりと引き抜かれそうになったと思えば再び奥の天井を亀頭で突き上げられる。
「っふッ、ぅ゛、ん゛ッ、ぅんん゛……ッ!」
「良平……っ、良平」
「っ、ぉ゛ッ、ごッ」
熱の籠もった声で名前を呼ばれる度に腹の奥の性器の存在感は増していくようだった。ノクシャスの腕に抱き締められたまま、体の奥の奥まで貪る勢いで肉壁ごとこじ開けられていく。
指の比にならないほどの太い性器で臍の裏側、膀胱、そして前立腺ごと押し潰すように何度も出入りしてくる。
「待っで、ぐだ、ざ……っぁ゛ッ! ひ、ぐッ! ッ、で……るっ、出る、ぅ、でちゃ……――ッ!」
目の前のノクシャスにしがみつく。ノクシャスは俺を見下ろしたまま、逃げようとする俺の腰を逆に押さえつけてそのまま腰を打ち付けるのだ。
拳ほどあるのではないかと思うほどの亀頭は肉壁を掻き分け、そして体の奥深く、閉じていた口をこじ開ける。そのまま最奥を押し上げられた瞬間、頭を擡げていた性器から勢いよく体液が吹き出した。
「ぉ゛ッ、お……ッ!」
「……っ、は、……テメェはいちいち……っ」
射精、とも違う。じんじんと熱の溜まった性器をただ見つめることしかできなかった俺を見て、興奮したようにノクシャスは呻くのだ。そして、腹の中のものが先程よりもまた一回り大きくなり汗が滲む。
待って下さい、と声をあげる暇もなく、苛ついたように舌打ちをしたノクシャスは再びピストンを再開させるのだ。ガクガクと震える腿を指のあとがしっかりと食い込むほどの力で掴まれ、根本まで深く腰を打ち付けるノクシャスに俺はただしがみつくことが精一杯だった。
「ん゛っ、ぅ、ふ……っ、ぅ゛ッ! んんぅ!」
これはまずい、自分がイッているのかどうかもわからなくなる。
ベッドの上、体を抱き締められたまま腰を打ち付けられる度に開かれたままの内腿は痙攣しっぱなしだった。
「っは、ぁ゛、のくしゃすさ、ぁ゛ッ! んぐ!」
「……っ、はー……ッ、クソ、なんでよりによって……っ」
「んぅ゛ッ! ふ、ぅ、ぁ゛、また……ッ! ぁ゛、くる、なんか、ァ゛……っ!!」
どろりとした熱が溢れる。空に等しい睾丸は勃起する度に痛みを覚えたが、その熱すら脳を焼き付く興奮になるのだ。息苦しさも圧迫感も本来ならば苦痛と呼ばれるその感覚すらも全てが充足感に変換されていくのだから脳内麻薬というものは恐ろしい。
あれほどノクシャスとのセックスが怖かったのに、今は。
感情ごとぶつけられるようなノクシャスの激しい抽挿にただ呑まれそうになり、それ以上に俺の中で気持ちよくなってくれているノクシャスを見ていると幸福感すら覚えてしまう。
大きな手のひらに汗で額に張り付いていた前髪を掻き上げられ、キスをするように舐められる。こそばゆさに目を細めたのも束の間、目の前の男が俺よりも苦しそうな顔をしてることに気付いた。
「……ッ、さっさと、やめろよ、俺のこと好きになれよ」
「っ、ん、ぅ゛」
「――っ、良平」
吐き出される言葉は縋るような響きすらあった。
結合部から伝わってくる鼓動に全身の血液が熱を増す。そして、唇を舐めたノクシャスはそのまま俺にキスした。
「――ッ、ふ、ぅ゛……っ」
瞬間、みっちりと奥の奥まで収まった状態で動きを止めたノクシャス。粘膜伝い、どくんと脈打ったノクシャスの性器が勢いよく射精するのを生で感じた。
「ぅ゛……っ、んんう゛……ッ!」
どくどくと流れ込んでくる。逆流する勢いでどろりとした熱に満たされていく腹部に意識が蕩けそうになった。ノクシャスにくっついたまま、そのまま脱力する俺を抱き締めたノクシャスは深く息を吐いた。
「……っ、は……良平」
射精後の余韻に浸るように、収まったままのノクシャスが俺を抱き締めたまま名前を呼ぶのだ。
体の中、萎える暇もなくノクシャスのものがあっという間に硬くなっているのを感じながら俺はそれに応えようとするが、肉体と精神は連動しているとも限らない。
思いの外俺の肉体には限界がきていたようだ。
その背中に手を伸ばすこともできないまま、俺はノクシャスの腕の中で気絶した。
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