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第6話

 必要以上にきつい口調になってしまったのは、徹の言葉に日下自身思い当たる節があるからだ。日下は自分がどうなっても構わない。はっきりと言えば、他人を信じていないのだ。永続的な関係があるとは信じていないし、仮にあったとしても自分には関係がないものだと思っている。人は簡単に他人を裏切る。そのことを、日下は身を持って知っている。 「衛さんが誰とつき合おうと俺には何も言う資格はない。でも、頼むからもっと自分のことを大事にしてほしい」  躊躇いもなくまっすぐに差し出される言葉に、日下は居たたまれないような気持ちになった。  徹は人に迎合しない。自分の意見をしっかりと持っている。そのくせ、自分とは違う意見を持つ人間を拒絶もしない。自分は自分、他人は他人だという考え方を持っている。日下の場合、それはただ他人に興味がないだけだが、徹は違う。こいつは、根っこの部分がやさしいんだと思う。 「……約束はできないけど、なるべく努力はする」 「ありがとう」  その場を取り繕うだけの言葉に、徹はようやく納得したような笑顔を浮かべた。日下は顔を背ける。 「そうだ、午後から雨が降るみたいだよ。傘を持っていったほうがいい」 「嘘だろ、こんなに晴れているのに」  グラスの中で氷が溶けるカランという音が響いた。窓の向こうは、真夏のような青空がのぞいている。甘みのある冷たい緑茶を飲みながら、日下は眩しそうに目を細めた。

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