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第12話

激しい雨が降っている。遠雷が鳴っていた。突然降り出した雨に、日下は全身濡れ鼠になりながらも、自宅のポーチへと駆け込む。 「ああ、くそ……っ」  身体に張り付く衣服が気持ち悪かった。玄関の鍵を開け、誰もいないはずの家に入る。室内には暗い影が落ち、ざあざあと雨音が聞こえた。濡れた上衣に手をかけ、頭から引き抜いた。べしゃりと床に服が落ちる。  濡れた足でぺたぺたと廊下を歩きながら、バスルームに向かう。きょうは久々に仕事が完全にオフで、朝から天気がよかった。徹も友人に会うため出かけている。近くのカフェでゆっくりとランチでも食べようと出かけたところ、突然の雨に見舞われた。  バスルームの戸に手をかけ、引いたときだった。髪から滴を垂らし、驚いたような表情を浮かべる徹と目が合い、日下はうろたえた。 「あ……っ」  シャワーの湯が滝のように徹の身体を伝い落ちる。引き締まった肉体に吸い寄せられるように、目が離せない。  お前、なぜ家にいるんだとか、出かけたんじゃなかったのかという思いは口には出せなかった。日下は徹から視線をそらすこともできずに、凍り付いたようにその場に立ち尽くした。

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