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第22話

 いつも家事をしてくれる徹にたまには飯でもおごってやろうと、仕事帰り、日下は徹と待ち合わせをしていた。  思ったよりも仕事が早く終わり、新しくできた大型書店をのぞいてみる。時間を潰すだけのつもりが、ついあれこれと気になった本を積んでしまう。レジで会計をすませ、自宅までの配送を頼むと、いつの間にか約束の時間はとっくに過ぎていた。急いで待ち合わせ場所に向かうと、駅前の人混みに紛れて、徹が本を読んでいるのが見えた。一瞬足を止め、その姿に見とれてしまう。日下は我に返ると、徹に声をかけた。 「悪い、遅れた」 「衛さん」  徹が日下に気がつき、顔を輝かせる。その瞬間、日下の心臓は小さく跳ねた。 「大丈夫、俺も少し前にきたところ。お仕事おつかれさま」 「あ、ああ……」  徹が手にしていた本をリュックにしまう。日下は気を取り直すと、「何か食べたものはあるか?」と徹に訊ねた。 「そうだなあ、何でもいいけど、肉よりは魚の気分かな」 「魚か。前にいった江ノ島の店はどうだ? まかない丼が旨いって言っていたやつ。夜にはいったことがないだろう」 「ああ、いいね」  それなら電車だと、改札口へ足を向けたときだった。 「衛」  思いがけない相手から突然声をかけられて、日下は目を見開いた。緒方はこちらへやってくると、日下の隣にいる徹を見て、初めてその存在に気づいたという顔をした。 「彼は?」 「こんにちは。佐野です」  日下が制止する間もなく、徹が緒方に挨拶してしまう。こうなっては仕方がない。日下は内心の動揺を抑えると、「緒方先生、甥の徹です。徹、仕事でお世話になっている緒方先生だ」とふたりを紹介した。 「ああ、彼が例の……。どうも初めまして。日下くんにはいつもお世話になっています。緒方です。きみには一度会ってみたかった」 「俺に?」

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