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第37話

「――……さん。……衛さん」  せっかく気持ちよくなっていたのにと、日下は重たい瞼を開けた。 「こんなところで寝ないで、寝るならちゃんとベッドで寝な」  揺り起こそうとした徹に小さく腹を立て、避けようとしたつもりが反対にそのまま徹にもたれかかる格好になった。 「衛さん、大丈夫?」  徹の内面を映し出したようだと、いつも好ましく感じていた彼の男らしい顔が目の前にあって、日下はにこっとした。 「え、衛さん……っ? どうしたの……っ?」  なぜか焦ったように徹がおたおたする。普段はあまり見ることのない徹の動揺した姿さえ、日下の目にはかわいく映った。 「やだ。お前が連れていって」  驚いたように目を瞠る徹の首に腕を回し、引き寄せるようにキスをした。徹の舌に触れたとたん、じわりと熱い幸福な何かがあふれた。そうだ、ずっとこうしたかったのだと、パズルの最後のピースがはまるようにぴったりとくる。  顔を背けた徹の目元が朱く染まっている。その頬を挟み込むように引き寄せ、キスをした。 「あ……っ、衛さん……っ」  戸惑うように、濡れた瞳で自分を見る徹にぞくぞくするほど興奮した。 「……嫌?」  次の瞬間、波に浚われるほどに強く、徹に抱きしめられていた。体勢がくるりと変わり、日下が徹を見下ろす格好になる。 「衛さん……」 「暑い……」  アルコールを飲んでいたせいで、身体が燃えるように暑かった。日下は徹の腹に手をつくと、身体を離し、着ていたTシャツを脱ぎ捨てた。頭がふわふわして気持ちがいい。目を閉じて鼻歌を口ずさみながら、ダンスをするみたいにゆらゆらと腰を揺らす。 「衛さん、好きだ」

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