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第39話

 次に目覚めたとき、日下は自分がどこにいて、何をしているのかわからなかった。何気なく身体を起こそうとして、殴られたほどの痛みが頭部に走った。その場に固まり、痛みが和らぐのを待つ。ひどい二日酔いだった。もう二度と酒は飲みたくないと思うほどの。頭に手を当て、おそるおそる身体を起こす。  朝の光が、部屋の中を包み込んでいる。  ――衛さん……。  夕べの記憶が甦り、ざあっと血の気が引いた。自分が酔っぱらって徹に絡んだのを覚えている。とろけるほどに熱く、濃密な口づけを交わしたことも。 「嘘だろ……」  そのとき、部屋に近づく足音が聞こえた。日下はとっさに毛布をかぶった。扉がノックされる。 「衛さん、おはよう。夕べは――」 「入るな!」  自分が発した言葉に、日下は自分でびっくりした。 「あ、いやその……、もう起きているから大丈夫だ。すぐに下りる」  心臓がどきどきしていた。冷や汗をかきながら、何とかいつも通りの受け答えをしようとする日下に、「……わかった」という徹の声が聞こえた。 「朝ご飯の準備はできているから。下で待っているね」  しばらくして、階段を下りる足音が聞こえてきた。完全にその場にひとりになると、日下はようやく身体を起こした。  いったいどんな顔をして徹に会えばいいのかわからない。徹は何も悪くない。悪いのは全部自分だ。  徹に謝るべきなのはわかっていた。でも何て……? ただ酔っていたのだと、だから何もなかったことにしろと言うのか? お前を弄んで悪かったと……?  ――衛さん、好きだ。  熱く切ない瞳で自分を見ていた徹を思い出し、日下は頭を抱える。答えなど見つかるはずはなかった。

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