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第54話
「失礼します」
ひとこと断り、携帯を取り出す。相手は徹からだった。そこに書かれていた短いメッセージに、ざっと血の気が引いた。
『衛さん、仕事中にごめん。事故に遭って、念のため一日入院が必要なようです。西方病院でこれから検査ですが、大したことはないから心配しないで。詳しいことがわかったらまた連絡します』
慌てて徹に電話をかけるが、留守電になっているというメッセージが流れるだけだ。足下から崩れ落ちるような恐怖に襲われた。いまが仕事中で、日高や門倉たちの前だということも忘れていた。頭の中が真っ白になり、その場に立っていることさえ困難になる。
「日下? どうかしたのか?」
日下のようすがおかしいことに気づいた日高が眉を顰める。
「……徹が事故に遭ったようです。大したことはないらしいんですが、入院が必要なようで……」
「徹ってお前の甥か。入院が必要って、大丈夫なのか?」
冷静にならなければと思うのに、頭が混乱して日高の言葉が耳に入らない。全身が氷のように冷たくなり、暗闇に落ちてゆく気がする。
徹が、徹が事故に遭った――。
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