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第65話
手を引かれ、一階にある彼の寝室へと向かう。心臓がどきどきしていた。日下は自分が緊張していることに気がつき、わずかに驚いた。まさか自分にこんな気持ちが残っているとは考えてもみなかった。
朝、出勤前に整えたばかりのベッドに腰を下ろす。元々徹の部屋は日下の部屋とは違って、持ち主の性格を表すようにきれいに整っている。実際、日下がすることはほとんどなかった。
口づけを交わしながら、徹が身体を日下のほうに傾けた。ふたり分の体重がベッドにかかり、スプリングがギシッと鳴った。
頭に巻いた白い包帯が痛々しかった。本当に無事でよかった。いまあらためて徹が無事でいることが、奇跡のようだと思う。
「衛さん?」
徹の頭に両手を当て、傷口に障らないようそっと口づけを落とした日下に、徹が切なげに目を細めた。
「お前のことがたまらないくらい好きだ……」
キスを交わしながら、徹の手が滑るように日下の胸から平らな腹に触れる。シャツの前を開かれ、脱がされた。ひやりとしたクーラーの冷気を感じた。徹が上体を起こし、着ていたTシャツを引き抜く。引き締まった男らしい肉体にどきどきした。こんなの変だ。自分の身体が自分のものでなくなったみたいに言うことを聞かない。こんなのどうしていいかわからない。
「衛さん、きれいだ……」
生まれたままの姿になった日下に、熱を帯びた徹の視線を感じた。徹の腕の中に、すっぽりと包み込まれる。
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