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チ〇ポの6 ビッチの自滅

    チ〇ポの6 ビッチの自滅  十一月も下旬になると、忘年会ラッシュを迎える。居酒屋・一丸も夜な夜な満席つづきで、特にその週末は大口の宴会の予約が二件、入っていた。  羽月は当日、店長に拝み倒されて早出をした。涼太郎にも招集をかけている? ならば須田と映画を観にいく約束なんかドタキャンかまして出勤しましょう、しますとも、といった感じで。  さて、店舗の二階は貸し切り歓迎の座敷で、田の字に配置した座卓かけることの六に、取り皿と箸を並べていく。この席に案内するグループが予約しているのは、ちゃんこ鍋のコースだ。  涼太郎は各シマにカセットコンロを置くと、一台ずつ着火して不具合がないか確かめる。  炎が揺らめくたびに、羽月は頭がぼうっとするようだった。おれの心……じゃなくて躰にも火を点けてほしい。〝穴〟に蜘蛛の巣が張るような日々を送っているせいで、フェロモンおよび精液が濃縮されて、今なら静電気で火だるまと化す勢いだぞ(ハメっぱなしでひと晩中じゃなきゃ鎮火しないこと請け合いの)。  涼太郎が二の腕をさすった。 「なぜだか殺気を感じて悪寒がした」 「悪寒? 暖房、強めとこうか」  羽月は、そ知らぬ顔でエアコンの温度設定をあげた。煩悩まみれの視線をそそぐのは厳禁、と自戒するはしから、ユニフォームの背中に美しい稜線を描く僧帽筋に惹きつけられて仕方がない。  あの魅惑的な凹凸を生で見たい、そうだ、温泉気分を味わいに行こう、とスーパー銭湯に誘ってみよう。駄目だ、ペニス日照りの現在(いま)、鼻血で失血死に至る自信がある。  咳払いひとつ、ただの雑談という体で訊いた。 「白石くんも地方出身者だよね。冬休みは帰省するの? 休み中、丸々とか」  イベントが目白押しの時期に一ヶ月以上も会えないのは、放置プレーに他ならない。また、かつてのクラスメイトと地元で再会して恋に落ちちゃうのは、よくあるパターンだ。涼太郎が同じ(てつ)を踏んだ日には泣く、マジで泣く。 「実は大学院志望だ。以降の生活費と学費はなるべく自力でと考えているため、冬休みはバイトを掛け持ちして貯蓄に励むつもりだ。羽月……さんは田舎に帰るのか」  四ノ宮先輩にはじまり、羽月先輩を経て羽月さん。〝さん〟は余計だが、恐るべき破壊力を有する。羽月は座布団を蹴散らしながら横座りにくずおれると、喘ぎあえぎ答えた。 「諸般の事情で、おれも居残り」  嘘だ、年末年始は実家ですごす予定で新幹線の切符も買ってある。だが、おせち料理で一家団欒より、こちらのほうが大事だ。なるべく軽い口調を心がけて言葉を継いだ。 「残留組同士、たまに遊ぼっか。大みそかのカウントダウンから初詣とか」 「初詣か。日本人たるもの外せない行事だな」

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