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第2話

 二回目の訪問時は、新しいエアコンを設置した。  古いエアコンを取り外し、200V対応の新型のものを取り付ける。当然だがエアコンが使えるようになるまで部屋は暑い。  花隈は汗をかきながら黙々と仕事した。  この日は芦屋は仕事で留守で、奥さんだけが在宅だった。  奥さんはタンクトップにジーンズという格好で、そんな何気ない格好でも色気があった。  奥さんは作業する花隈のために凍ったペットボトルを用意してくれて、花隈は冷たいそれを首筋に当てたり途中で飲んだりとありがたくいただいた。  取り付け作業が終わると、先日のように麦茶が出される。  新しいエアコンを稼働させた室内は、徐々に涼しさを増していった。 「問題なく動いてますね」  花隈が言うと、奥さんが頷いて花隈をソファへ座るよう促してきた。  前回もそこで麦茶をいただいたので、花隈はお言葉に甘えて座らせてもらい、麦茶をごくごくと飲んだ。  床に(じか)に正座した奥さんが、 「暑い中ありがとうございました」  と頭を下げた。  その拍子にタンクトップの襟ぐりから、胸がチラリと見えた。  女ではないから谷間などはない。  ないけれど、どことなくわずかにふっくらとした胸と、男にしては大きな乳首が目に入って、花隈はドギマギとそこから目を逸らした。 「もしもまたなにかあったら連絡してください」 「はい。頼りにしてます。花隈さん」  奥さんがにっこりと微笑んで、また頭を下げる。  乳首が見えた。  摘まみ甲斐のありそうな乳首に、ごくりと喉が鳴ってしまった。 「花隈さん」 「へっ、は、はいっ」  奥さんに名を呼ばれて、(よこし)まな妄想がバレたのか慌てた花隈だったが、奥さんは伏し目がちに恥ずかしそうな表情で、 「もう一回、筋肉を触らせてもらってもいいですか?」  と問うてきた。 「もっ、もちろんですよっ。はい、どうぞっ」  花隈はおかしなテンションで力こぶを作ると、奥さんを促した。  奥さんの指が、まるで愛撫をするように筋肉を撫でてくる。  やばい。勃起する。  花隈はその後、必死の思いで理性を保ち、別れがたい思いで芦屋家を後にした。  所詮自分はしがない業者。  エアコンの設置が終わってしまった以上、もうこの家に来ることはないだろう。  もう一回、奥さんに触ってもらえばよかったかな。  それか、事故を装ってあのぷっくりとした乳首にタッチすればよかった……。  花隈は再び会うことはないだろう奥さんの面影を噛み締めるようにして、その日は奥さんをおかずに自慰をした。  しかし、三度目の邂逅が待っていた。  奥さんから、エアコンが壊れた、と連絡が入ったのだ。  そんな馬鹿な。買ったばかりのものが壊れるはずがない。  しかし家電は当たり外れがある。  それに、またあの奥さんに会えるチャンスだ。  花隈はスケジュールを調整し、嬉々として真夏の日差しの中、一路団地へと向かったのだった。  

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