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第4話 日常※

 外にある水場で足を洗って裏口から部屋に入り、ルーカスはホッと安堵する。  陽が落ちる前に戻ることが出来た。もし部屋を抜け出しているのがバレたら酷く怒られてしまうところだった。  採取してきた花を棚の中に隠し、部屋の隅の椅子に座った。  一呼吸おいて、目を閉じる。  いつだれが来てもいいように、心を消す。  これが、ルーカスの「当り前」。  暫く待って、部屋のドアが開いた。  入ってきたのは気品のある初老の男性。手に持っているのは、その柔らかい笑みには似合わない鎖。 「ルーカス。今日もいい子でいたね?」 「はい。ご主人様」 「発情期《ヒート》は来週だったね。体調は変わりないね?」 「はい」  そう言って男性はルーカスの首輪に鎖を取り付けた。  その鎖の先をベッドのパイプに繋げ、彼の行動に制限を付ける。 「何か変化があったらすぐ言うんだよ。君は、特別なんだから」 「はい。ご主人様」 「それじゃあ、いつも通りに」 「はい」  ルーカスは頷き、着ている服を全て脱いでベッドに横になった。  一糸まとわぬ姿になったルーカスに、男性は興奮したように息を荒げて彼の上に跨って柔らかな腹に頬を摺り寄せる。 「ああ……綺麗だよ。君には何も見せない。余計なものを与えない。これはその美しさを保つためにやっているんだ。これは、君のためなんだよ。ルーカス」 「……はい、ご主人様」 「可愛いよ、ルーカス。君の力が早く目覚めるといいね」  男性はルーカスの肌を舐め回し、小さな少年の屹立を咥えた。  この屋敷に来てからずっと、こうやって主人であるこの男にルーカスは毎日のように愛撫されていた。  美味しそうに少年のモノを丹念に舐め、溢れ出す蜜を飲み込んでいく。  ルーカスは無心だった。  刺激を与えれば、勝手にそれは硬くなって白濁を吐き出す。余計なことを考えたら勃たなくなってしまう。だからルーカスはその身を男性に任せ、愛撫を受け入れる。  これが日常。ルーカスにとっての当たり前。  ルーカスには主人の言う力が何か分かっていない。  ただ主人が言うには、ルーカスは他のオメガとは違うということ。  自分に何かがあって、それを求めて主人はこうして毎日ルーカスの体中を舐め回している。  ルーカスにとって主人は絶対的な存在だ。衣食住を与えてくれている。彼のおかげで生かされている。  だからルーカスは何も言わない。これが異常なことだと知らないから。 「ああ……気持ちいいかい、ルーカス」 「は、はい……ご、ご主人、様」  陰部を強めに握られ、ルーカスは少しだけ表情を歪ませた。  時折主人は乱暴になる。  様々な刺激を与えることで力を引き出そうとしているらしい。  発情期《ヒート》のときは複数人の男たちが部屋に連れてこられ、少年のことを犯す。  そのとき主人はその様子を見ているだけ。  主人が言うに、連れてきているのは優秀なアルファの男たち。その男たちの精を少年に与えるのが目的だそうだ。だからその日はお腹が壊れるんじゃないかと恐怖を覚える程度に、少年の中に男たちの精液が吐き出される。  この人は何がしたいんだろう。最初のうちはそんなことを思っていたが、次第に考えるのをやめた。  考えるだけ無駄だと知ったからだ。少しでもこの行為に嫌悪を抱いたら勃たなくなってしまう。  そうなったらきっと少年は主人に捨てられてしまう。  ルーカスが考えるのは、次に何の絵を描こうかってことだけ。  主人に見つからないように、この楽しみだけは守らなきゃいけない。  そのために少年は今日も心を殺す。

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